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メディアの動き 2024年04月16日 (火)

【メディアの動き】米テレビも促進したスポーツ賭博の影

 アメリカのプロ野球大リーグ,ロサンゼルス・ドジャーズの大谷翔平選手の専属通訳が違法なスポーツ賭博を行っていた疑惑から3月20日に球団を解雇され,同月22日にはMLBが正式に問題の調査を始めたと発表した。これをきっかけに,テレビ業界がスポーツリーグや賭博事業者とともに普及を促進してきたスポーツ賭博の負の側面に改めて目が向けられている。

 アメリカでは2018年に連邦最高裁がスポーツ賭博の可否を決める権限は州にあるとの判断を示してから,ドジャーズの本拠地カリフォルニアやテキサスを除く40近い州がスポーツ賭博を合法化し,多くが大学競技も対象に含め,携帯アプリなどによるオンライン賭博も認めた。テレビ各社はスポーツ中継に賭博の広告を入れ,番組制作やオンラインサービスでも賭博事業者と提携し,販売にも関わり,ケーブルテレビのスポーツチャンネルでは司会者や解説者が日常的に賭博を勧めるようになった。

 スポーツ賭博の売り上げは2023年,1,198億ドル(約18兆円)に達し,スポーツ・テレビ業界の収益や視聴者を増やす一方,返済不能な多額の借金を背負い,助けを求める人が増加した。特に依存症に陥りやすい若い世代への影響が懸念されている。賭博熱は選手や監督への攻撃や圧力にもつながり,選手が不正に関わった疑惑も出ている。スポーツ経済を専門とするマサチューセッツ州・スミス・カレッジのアンドリュー・ジンバリスト名誉教授はテレビが賭博を“普通”の娯楽にしてきたと指摘。賭博の過熱はスポーツそのものへの関心を薄め,多様な人々を結ぶスポーツの魅力を損なうおそれがあり,規制強化が必要だとしている。