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メディアの動き 2024年04月16日 (火)

【メディアの動き】香港「国家安全条例」可決・施行で 報道の自由への懸念の声相次ぐ

 香港で国家の安全を脅かす行為を取り締まる「国家安全条例」が可決・施行されたことを受け,報道の自由が損なわれると国際機関や各国から懸念の声が相次ぎ,アメリカ政府系放送局は香港の事務所を閉鎖した。

 香港の「国家安全条例」は,4年前に施行された「香港国家安全維持法」を補完するもので,2024年1月に要旨が発表されたあと,3月に条例案が議会に提出された。わずか2週間足らずで可決され,同月23日に施行された。

 「国家機密」を盗むことやスパイ行為,反乱の扇動,外国勢力による干渉などを犯罪として規定し,最高で終身刑が科せられる。中国や香港政府に対する憎悪や不満をあおる「扇動的行為」も禁止され,SNSへの投稿や出版物なども取り締まりの対象となる。

 香港の憲法にあたる基本法で制定が義務づけられているものの,住民の反発で長年先送りされてきた。急速な制定の背景には,中国の習近平指導部の意向が働いたとみられる。

 条例について,国連人権高等弁務官事務所は同月19日,条例の規定があいまいで政府に批判的な声をあげる人や報道機関などが恣意しい的に標的にされる可能性があると指摘。イギリス外務省も同日,「言論や報道の自由をむしばむことになる」と懸念を示した。

 香港記者協会が2月,「メディアが報道を萎縮させる可能性がある」と香港政府に意見書を提出するなど,政府による統制強化が懸念される中,アメリカ政府系の放送局Radio Free Asiaは3月29日,香港の事務所を閉鎖したと明らかにした。