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メディアの動き 2023年09月15日 (金)

【メディアの動き】韓国KBS 理事会,社長の解任案提出

 韓国の公共放送KBSの理事会は8月30日,定例理事会においてキム・ウィチョル(金儀喆)社長の解任案を緊急案件として提出し,非公開での議論の結果,9月の臨時理事会で採決することを決めた。キム社長はムン・ジェイン(文在寅)政権下の2021年12月に社長に就任し,任期は3年。理事会は解任の理由として,経営の悪化や偏向報道などを挙げている。

 KBSの理事会は理事長と理事の合計11人。メンバーは韓国放送通信委員会(KCC)の推薦を受けて大統領によって任命され,これまでも時の政権の影響を色濃く反映してきた。ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領の就任後,政権寄りの理事への入れ替えが進み,8月時点では与党系6人,野党系5人で,キム社長の解任案は賛成多数で採択されるものとみられる。

 ユン政権は,これに先立つ同月25日に放送通信委員会の新しい委員長に,イ・ドングァン(李東官)氏を任命した。イ委員長は,保守系大手紙,東亜日報の記者出身で,イ・ミョンバク(李明博)政権では大統領府報道官などを務めた。イ委員長は28日に行われた就任式の挨拶で,公共放送の運営と内容が労働組合の意思によって左右されていると指摘するとともに,経営陣を含め,公共放送の構造改革に強い意欲を示していた。

 解任案についてキム社長は声明を出して,「KBSは政権が変わるたびに外圧に悩まされてきた。そのたびにKBSの構成員たちは国民とともに公共放送の独立を守るために闘ってきた。与党理事らの今回の社長解任案提出は,こうした努力に真っ向から背くことだ」として批判した。