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調査あれこれ 2023年04月06日 (木)

調査からみたコネクテッドテレビの利用実態 ~テレビ画面で何を、どのように見ている?~【研究員の視点】#470

世論調査部(視聴者調査)平田明裕


地上波や衛星放送などの番組が楽しめるこれまでのテレビに、インターネットを接続することでより多くの動画コンテンツを視聴することが可能となりました。今後、インターネットに接続されたテレビ(コネクテッドテレビ)が普及し、テレビ画面でネット動画を視聴する人が広がると、テレビ画面の利用は変わるのでしょうか?今回は、「メディア利用の生活時間調査」の結果からテレビ画面で動画を視聴する人(以下「テレビ動画視聴者」。全体の6%)に焦点をあて、テレビ画面の利用実態や視聴状況を分析しました。

 テレビ動画視聴者 時刻別のテレビ画面利用(30分ごとの平均行為者率の積み上げ・月曜)
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 このグラフは、テレビ動画視聴者が1日の中でテレビ画面をどのように利用しているかを表したものです。0時から24時までの時刻別の行為者率(利用している人の割合)を積み上げたグラフになります。朝の時間帯にテレビ画面で見ているのは「リアルタイム」が圧倒的に多く、7時台は16%に達している一方で、「動画」は1%とほとんど見ていません。その後、午後の時間から夜間にかけて「動画」が増加して21時~22時には23%に達し、「リアルタイム」と同じくらいネット動画を見ていることがわかります。このように、朝の時間帯は「リアルタイム」が中心で、夕方から夜間にかけても「リアルタイム」が増加する一方で、夜間の遅い時間帯は「動画」の視聴が増えていくなど、テレビ動画視聴者は、時間帯によってテレビ画面で何を視聴するか、選択している様子がうかがえます。

 では、テレビ動画視聴者は具体的にどのような状況で、テレビ画面で動画を見ているのでしょうか?ほかのことをしながらテレビを見る「ながら」視聴と、テレビを見る行動だけの「専念」視聴に分けて時間量をみたのが、次のグラフです。「ながら」(51分)と「専念」(57分)は同じくらい、つまり、ほぼ5対5でした。「リアルタイム」の割合(「ながら」「専念」は6対4の割合)ほどではないですが、自分で選んで視聴する「動画」でも、「ながら」視聴が半数近くになる様子がみえてきました。

 テレビ動画視聴者 動画(テレビ)の時間量 ながら・専念(全員平均時間の積み上げ・月曜)
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 では、テレビ画面で動画を見ながら、どのような行動をしているのでしょうか?次のグラフはテレビ動画視聴者が動画視聴と同時に行っている行動をみたものです。最も多いのは、「食事」(21%)で、「SNS(スマホ)」(17%)、「身のまわりの用事」「家事」「会話おしゃべり」(いずれも14%)が続きます。スマホよりも大きい画面で離れて見ることも可能となり、食事、身のまわりの用事、家事をしながら動画を見たり、スマホ携帯でのSNS利用や会話・おしゃべりなどコミュニケーションしながら動画を見たりするなど、家の中でのさまざまな生活シーンで動画を視聴していることがうかがえます。

テレビ動画視聴者 動画(テレビ)との重複行動 行為者率(1日)(上位5項目・月曜)

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 ここまでみてきましたように、テレビ画面で動画を視聴する人は、朝の時間帯はリアルタイムのテレビを見る一方で、夜の遅い時間帯はYouTubeやAmazonプライム・ビデオなどの動画コンテンツを見るなど、時間帯によってリアルタイム視聴とネット動画視聴を使い分けています。また、スマホよりも大きい画面で離れて見ることも可能となり、食事中やスマホでSNSをしながらなど、家の中でのさまざまな生活シーンで動画を視聴している様子がみえてきました。テレビにインターネットを接続したコネクテッドテレビという新しいメディア環境により、人々は、自分の嗜好(しこう)や生活シーンに合わせて、好きなコンテンツを好きなように見ることができるようになりつつあるのかもしれません。今回のテレビ動画視聴者は全体の6%とまだ少数派ですが、今後、コネクテッドテレビが普及しテレビ動画視聴者が増加すると、こうした視聴スタイルが広がっていくのではないかと考えられます。

放送研究と調査2023年3月号」では、そのほかに、テレビ動画視聴者はスマホ携帯やPCタブレットで動画をどのくらい見ているかについても分析しています。ぜひご覧ください!