文研ブログ

調査あれこれ 2022年08月19日 (金)

#417 「東京パラリンピック視聴と障害者スポーツへの理解」③ ~「東京オリンピック・パラリンピックに関する世論調査」~

世論調査部 (視聴者調査) 斉藤孝信

 前回に続いて、文研が2016年から実施した「東京オリンピック・パラリンピックに関する世論調査」の結果をもとに、東京パラリンピック(以下、東京パラ)を人々がどのように視聴し、それが障害者スポーツへの理解促進につながったのかどうかのお話です。

 <前回ブログまでのポイント>
 ①多くの人が、東京パラをNHKや民放の放送や、NHKプラスなどのインターネット向けサービスを通じて視聴した。
 ②東京パラをNHKで視聴した人の大多数が、大会をきっかけに、障害者や障害者スポーツへの理解が進んだと回答し、東京パラをスポーツとして楽しめた人が多い。

 今回も、東京パラをNHKで視聴した人の回答に注目しますので、まずは視聴した人の割合を改めてご紹介しておきます。74%と非常に多くの人が視聴してくださいました。

saiitou3-1a.png 今回のブログでは、NHKで東京パラを視聴した人たちが、障害者スポーツに対してどのようなイメージを持ったのか、みていきます。

 調査では、人々が障害者スポーツに対してどのようなイメージを持っているのかを把握するために、「あなたは、『障害者スポーツ』と聞いて、どのような言葉を思い浮かべますか」という質問をしました。その回答結果を、東京パラをNHKで視聴した人と視聴しなかった人別に集計したのが、次の表です。

saitou3-2a.png ご覧のように、視聴した人でも視聴しなかった人でも、トップは「感動する」というイメージですが、その割合には大きな差があります。また、視聴した人では、「すごい技が見られる」「明るい」などポジティブなイメージを持つ人が、視聴しなかった人よりも軒並み多くなっています。
 前回のブログでは、NHKで視聴した人は、東京パラをスポーツとして楽しめたというお話をしましたが、ここでも、「すごい技が見られる」「迫力のある」「面白い」「エキサイティングな」など、スポーツとしてのポジティブなイメージを持つ人が、視聴しなかった人よりも多いことがわかります。
 一方、「難しい」「痛々しい」「親しみのない」というネガティブなイメージを持つ人の割合は、視聴した人では、視聴しなかった人よりも少なくなっています。そもそも、視聴しなかった人では「感動する」以外はどの項目も20%未満と少ないので、「障害者スポーツ」と聞いても、パッと思い浮かぶイメージがあまりない、ということなのかもしれません。
 パラ競技は、選手の障害の種類や程度などによって、競技のクラス分けやルールが細かく設定されているので、どうしても、ふだん見慣れているオリンピック競技よりも「難しい」という印象を持たれるように思いますが、前述のように、視聴した人では「難しい」というイメージを持った人はわずか8%でした。言い換えれば、ほとんどの人が、“東京パラを視聴しても、難しいとは思わなかった”わけです。
 現実問題として、難しいはずなのに、どうして「難しい」と思わなかったのか。これについては、別の質問で、東京五輪・パラを楽しむためにどのような放送やサービスが役立ったのかを複数回答で尋ねた結果をご紹介します。

saitou3-3a.png 調査相手全体のトップは「競技の見どころをまとめたハイライト番組や映像」(57%)ですが、東京パラをNHKで視聴した人では「競技への関心につながるような選手やルールの紹介や解説」が65%で最も多くなりました。また、「競技中継の内容や注目点を画面上でわかりやすく伝える文字情報」を挙げた人も、全体より多くなっています。
 今回の東京パラで、多くの人が視聴したNHKの競技中継や番組では、画面上のテロップやアナウンサーの実況、解説者のコメントによって、かなり詳しくルールを説明していましたので、そうした工夫が、パラ競技のわかりにくさを減らし、結果的に、スポーツとして楽しめた人を増やしたのかもしれません。

 『放送研究と調査』6月号では、“人々にとって、東京五輪・パラとは何だったのか”と題して、今大会が人々にとってどのような意義を持ち、日本にどんなレガシーを遺したのかなど、さまざまな視点で考察しています。特に、今回のブログでご紹介した障害者への理解促進に関しては、「大会をきっかけにバリアフリー化が進んだかどうか」を尋ねた結果で、日ごろ障害のある人と身近に接している人と、接していない人では、回答に違いが出ていて、深く考えさせられました。ぜひお読みください!