文研ブログ

調査あれこれ 2022年08月18日 (木)

#416 「東京パラリンピック視聴と障害者スポーツへの理解」② ~「東京オリンピック・パラリンピックに関する世論調査」~

世論調査部 (視聴者調査) 斉藤孝信

  前回に続いて、文研が2016年から実施した「東京オリンピック・パラリンピックに関する世論調査」の結果をもとに、東京パラリンピック(以下、東京パラ)を人々がどのように視聴し、それが障害者スポーツへの理解促進につながったのかどうかのお話です。

 <前回ブログのポイント> 
 ①東京パラでは、オリンピックと同様に、日本がメダルを獲得した競技が多くの人の印象に残った。
 ②多くの人が、東京パラをNHKや民放の放送や、NHKプラスなどのインターネット向けサービスを通じて視聴した。
 ③東京パラをNHKで視聴した人の大多数が、大会をきっかけに、障害者や障害者スポーツへの理解が進んだと回答した。

 このあとの分析をお読みいただく前提として、改めて、東京パラをNHKで視聴した人の割合をご紹介しておきます。74%と非常に多くの人が視聴してくださいました。

saitou2-1.jpg 今回のブログでは、NHKで東京パラを視聴した人たちが、障害者スポーツに対してどのような感想や意見を持ったのかを、もう少し具体的に掘り下げます。
 
 調査では、東京パラを視聴してどう思ったか、9つの感想を示して、「そう思う」かどうか尋ねました。NHKで東京パラを視聴した人の回答結果はご覧の通りです。

saitou2-2a.png 「そう思う」という人が最も多かったのは、「選手が競技にチャレンジする姿や出場するまでの努力に感動した」(87%)と「想像していた以上の高度なテクニックや迫力あるプレーに驚いた」(86%)で、9割近くにのぼります。
 私が注目したのは、東京パラを、スポーツとして捉えた人の多さです。上記の「想像していた以上の高度なテクニックや迫力あるプレーに驚いた」に加え、緑色でお示しした「記録や競技結果など純粋なスポーツとして楽しめた」は76%、「これからもっと障害者スポーツを見たいと思った」は60%と、いずれも半数を大きく上回っています。
 一方で、「オリンピックの楽しみ方とパラリンピックの楽しみ方はまったく違うと思った」という人は45%と半数以下にとどまりました。すなわち、パラリンピックも、オリンピック同様に、世界のトップアスリートたちがメダルをかけて競い合う姿を観戦し、応援するという楽しみ方をするものだと考える人のほうが多いわけです。
 これに関連して、今回の世論調査を振り返ると、大会前の第6回では、「パラリンピックには、スポーツとしての側面と、福祉として側面がありますが、放送では、どのように伝えるべきだと考えますか」という質問をしました。

saitou2-3a.png 「オリンピックと同様に、純粋なスポーツとして扱うべき」という人が43%と最も多く、「なるべくスポーツとしての魅力を前面に伝えるべき」(23%)と合わせると、『スポーツとして伝えるべき』だという意見が67%にのぼり、「競技性より、障害者福祉の視点を重視して伝えるべき」(4%)という意見を圧倒的に上回りました。
 つまり、大会前から、東京パラをスポーツとして楽しみたいと思っていた人が多く、実際に大会を視聴した人の感想としても、スポーツとして楽しめた人が多かったのです。
 ふだん、オリンピック競技ほどには見慣れていないはずのパラ競技を、オリンピックと同じようにスポーツとして楽しめた人が多かったという結果は、東京でのパラリンピック開催や、それを伝えたメディアが、障害者スポーツの理解促進に寄与したことのひとつの証ではないでしょうか。
 次回のブログではさらに、東京パラの視聴が、人々の障害者スポーツに対するイメージに、どのような変化をもたらしたのかをご紹介します。

 『放送研究と調査』6月号では、“人々にとって、東京五輪・パラとは何だったのか”と題して、人々はコロナ禍での開催をどのように感じていたのか。そうした状況で大会をどのように楽しんだのか。今大会は人々にとってどのような意義を持ち、日本にどんなレガシーを遺したのかなど、さまざまな視点で考察しています。どうぞご一読ください!