文研ブログ

2016年6月 3日

メディアの動き 2016年06月03日 (金)

#29 熊本地震の災害FM(臨時災害放送局)

メディア研究部(メディア動向)村上圭子

熊本地震からまもなく2カ月。県内では、災害FM(臨時災害放送局)という臨時のラジオ局が4局立ち上がり、現在も3局で放送が続いています。

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災害FMとは、災害発生時、
被害の軽減に役立つことを目的に、自治体が免許をとって臨時に開設するFMラジオ局のことです。ラジオ局を立ち上げるためには電波の割当てが必要なため、国の制度として1995年の阪神・淡路大震災の時から運用が始まっています。

災害時には、NHKや県域民放等といったマスメディアでも様々な災害情報を放送しています。しかし、災害の規模が大きかったり、地域によって被災の状況が異なる場合、できるだけ地域の細かい生活情報や行政情報を被災した人達の立場にたって届けたり、復興に向けて地域のつながりを再び取り戻していくため、こうした制度を活用する自治体が増えているのです。東日本大震災の時には、27の自治体で開局されました。

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熊本県で現在も放送を続けているのが、甲佐町、御船町、益城町です。被害が特に大きかった益城町では、放送だけでなくインターネットでの配信も行われています。そのため、町外に避難している人や町に親戚がいたりする人など、全国から放送を聞くことができます。アプリは無料でダウンロードできるので、関心のある人は是非聞いてみてください。

いま益城町では、役場から「り災証明書」の発行が行われていますが、毎日大変な混雑で整理券が配布されています。いつどこで整理券が配布されるのかなどが一日4回の生放送で伝えられるため、住民は最新の情報を聞くことが出来ます。現在、放送で募集したボランティアの人達40人ほどがかわるがわるアナウンスを担当する他、町長も出演しています。

御船町では町役場の一角で放送が行われています。町には防災行政無線が整備されていないため、余震に関する緊急情報などを速やかに住民に伝達する手段がなく、また、災害後、多くの人達が車での避難をしており、そうした人達にも確実に情報を届けたいという
ことから、災害FMの開局を決めたといいます。

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現在放送は役場のわずかな職員で担当していますが、今後はボランティアの人たちも募集し、放送内容についても、行政からの情報だけでなく、避難所や仮設住宅で始まる新生活に向けてのコミュニティ作りためのメディアにしていきたいということです。

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熊本における災害FMの今後の運営についてや、今後災害が起きた際、こうした災害FMを立ち上げるにあたっては、様々な課題があります。引き続き取材を進めて報告していきたいと思います。


東日本大震災の災害FMについては、
「放送研究と調査」2012年3月号に掲載されています
また、別なお知らせになりますが、私が継続連載している「これからのテレビを巡る動向を整理するVol.8~2015年1月―4月~」については、2016年6月号に掲載されています