文研ブログ

おススメの1本 2019年03月08日 (金)

#174  時代とともに変化する"子どもとメディア"をめぐる研究

メディア研究部(番組研究) 小平さち子


40年前に、私が“子どもとメディア”の研究に関わり始めた時、人々の注目を集めていたメディアは、圧倒的にテレビでした。当時は、NHKだけでなく、民放各局も、子ども向け番組を多数放送しており、親たちの間でも、研究者の間でも、子どものテレビ視聴時間や番組内容に対する関心が高かったのです。

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現在はどうでしょうか。テレビは子どもたちの生活時間の中で、相変わらず大きなウェイトを占めていますが、関心の対象は変化しているようです。スマートフォンを手放すことができない子どもを心配する親、スマートフォンを目にした2歳児に、お気に入りの動画をせがまれる親・・・・・・。学校に目を向けると、タブレット端末の授業への導入が進む中で、先生たちは新たな対応を求められる等、社会に広まった新しいメディアに対する関心が高まっています。

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このように、子どもを取り巻くメディア環境は大きく変化していますが、インターネットの本格的な普及が始まった2000年以降に注目して、文研の他、政府機関や民間の研究所、大学の研究室等で実施された“子どもとメディア”をめぐる多様な調査研究事例に目を通して、この時期の研究動向の特徴を整理してみました。

その結果、「スマートフォンやタブレット端末等新たに登場したメディアを取り上げる研究の増加」「乳幼児を対象とする研究の増加」「メディアの影響分析における、量的側面だけでなく、番組・コンテンツの内容や描写といった質的側面を重視する傾向」「研究成果を授業・保育・保護者の啓蒙等の教育プログラムに反映させる枠組みを意識した研究の重視傾向」等が明らかになりました。

詳細については、“子どもとメディア”をめぐる研究に関する一考察 ~2000年以降の研究動向を中心に~『放送研究と調査』2019年2月号に掲載)をご一読ください。

本稿の前段となる、テレビ放送開始の1953年から2000年までの時期の研究動向については、子どもとテレビ研究・50年の軌跡と考察: 今後の研究と議論の展開のためにと題して、『NHK放送文化研究所年報』47集(2003年1月発行)に発表しています。“子どもとメディア”の研究に関心をお持ちの方は、こちらも併せてお読みいただき、今後の研究の発展に役立てていただければ幸いです。