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メディアの動き 2024年02月14日 (水)

【メディアの動き】能登半島地震,大津波警報で「命を守る呼びかけ」,SNSで偽情報の拡散も

 1月1日午後4時10分ごろ,石川県能登地方を震源とするマグニチュード7.6の大地震が発生した。石川県輪島市と志賀(しか)町で震度7の激しい揺れを観測し,鉄筋コンクリートのビルを含む多くの建物が倒壊したほか,大規模火災も発生。土砂災害も多発し,土砂が道路を塞ぐなどして山間部を中心に孤立する集落が相次いだ。さらに大津波が発生。気象庁が行った現地調査では,▶新潟県上越市で5.8メートル,▶石川県能登町で4.7メートルの高さまで波が陸地を駆け上がったことがわかった。

 石川県によると,この地震により県内で死亡が確認された人は,同月29日午後2時の時点で238人となっている。特に新型コロナウイルス感染症が「5類」に移行した,いわば「コロナ禍明け後」に初めて迎えた元日の地震だったため,久しぶりに帰省し,犠牲になった人もいた。さらに過酷な避難生活などが原因で亡くなる,「災害関連死」の疑いはこのうち15人で,避難生活での被災者の健康管理や広域避難の進め方などが大きな課題となっている。

 この地震では,「石川県能登」に大津波警報が発表された。発表は2011年の東日本大震災以来で,放送メディア各社は緊急報道を展開。このうちNHKはアナウンサーが強い口調で,叫ぶように呼びかけ続ける「命を守る呼びかけ」を行った。これは,東日本大震災の津波で多くの犠牲者が出たことを教訓に作成されたもので,「今すぐ可能な限り高いところへ逃げること」などのさまざまな表現やフレーズを使って危険が切迫していることを伝え,住民の素早い避難を促そうというものだ。これについてX(旧Twitter)では「NHKのアナウンサーが叫んでいたので逃げた」という声があった一方,「怖かった」という意見もみられた。

 また,この地震では多数の偽情報がSNS上で拡散した。このうちXでは,今回の地震が「人工地震」だと主張して不安をあおる投稿が広がり,NHKは気象庁や地震の専門家の見解をもとに,打ち消し報道を行った。

 さらに,Xでは「インプレッション稼ぎ」とみられる偽の投稿も相次いだ。内容は「救助を求めている」というものだったが,石川県珠洲(すず)市内の架空の住所を使っていたり,実在する住所でもそこに住んでいない人の名前を使ったりしていた。また,その場所とは関係のない動画や静止画が貼りつけられていた。Xでは,2023年8月以降,有料サービスに加入しているユーザーが,投稿で獲得した一定の閲覧数=「インプレッション」に応じて収益を得られる仕組みになったことから,閲覧数による収益をねらって意図的に偽の情報を書き込んだ可能性があるとみられている。これを受けて総務省は1月2日,Xなどプラットフォーム事業者4社に対し,明らかに事実と異なり社会的に混乱を招くおそれのある情報について,各事業者が定める利用規約などに沿って適切に対応するよう文書で要請した。

 能登半島地震は,発生直後に津波警報・大津波警報と緊急地震速報が重なり,アナウンサーがとっさの判断を求められるなど,緊急報道の難しさを改めてメディアに突きつけた。また,SNS上で拡散する偽情報を,どう見つけ,打ち消すかなど,新たな課題も浮かび上がった災害といえる。