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メディアの動き 2023年10月16日 (月)

【メディアの動き】ニュージーランド,TVNZが広告収入減で事業の大幅な見直しを迫られる

 ニュージーランド最大の放送局TVNZが,広告収入の大幅減に直面し,大規模なコスト削減を迫られている。9月18日に経営側からスタッフに送られた文書で明らかになった。

 文書で経営側は,「現在,テレビ広告市場は厳しい状況にあり,最大のプレーヤーとして影響を受けている」と危機感を訴えた。幹部らは,「すべての可能なコスト削減の機会」を特定したとして,あらゆるプロジェクトの見直し,幹部や高収入スタッフの昇給の停止,出張回数の大幅減,マーケティング調査やインフラ整備の大規模な縮小など,多方面にわたるコスト削減の具体策を示した。

 TVNZは,これまでたびたび運営形態を変えてきた。1943年に設立された国営放送局が前身で,長年にわたり受信料と広告収入に支えられていたが,2000年に受信料制度が廃止された。2003年には政府全額出資の株式会社になり,広告収入や商業収入を財源としている。

 株式会社になってからも,他局があまり取り上げないテーマや少数派の意見に配慮した番組を放送することなどを使命とする「TVNZ憲章」を掲げていたが,2011年に廃止された。憲章が柔軟な企業活動を妨げるなどとして議会が廃止を決めたが,公共放送サービスの存在意義を軽んじるものだとの批判もあった。

 広告・商業収入のみで運営してきたTVNZは,2020年以降,新型コロナウイルスの影響による景況の悪化などから広告収入を大幅に減らしており,2023〜24年の会計年度には1,560万ニュージーランドドル(約14億円)の赤字が見込まれている。