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メディアの動き 2023年08月22日 (火)

【メディアの動き】あいテレビの深夜番組のセクハラ発言, BPOが「人権侵害なし」の見解

愛媛県の民放あいテレビで放送されていた深夜番組の女性出演者が,番組内でのたび重なるセクハラ発言で精神的苦痛を受けたと申し立てた問題で,BPOの放送人権委員会は7月18日,人権侵害は認められず,放送倫理上の問題もあるとまでは言えないとする見解を公表した。

問題になったのは,あいテレビが2016 年から2022 年の3月まで毎週放送していた深夜のバラエティー番組『鶴ツル』で,出演者の女性フリーアナウンサーが,番組内で2人の男性出演者からしばしば下ネタや性的な言動を受け,羞恥心を抱かせられ,自身のイメージも損なわれたと申し立てた。

委員会は審理の結果,申立人が番組での性的な言動に長年悩んできたことは「真実」と考えられるが,本人が2021年11月に番組プロデューサーに伝えるまでは,あいテレビがそれに気づくことができたとは言えず,その後の対応にも過失があったとは言えないと判断した。
また放送局の責任を問うことについては,表現の自由の制約につながりうることから「謙抑的であるのが妥当」という考え方を示したうえで,「申立人の人格の尊厳を否定するような言動」があったとは言えないことから,「人権侵害があったとは認められない」と結論づけ,「放送倫理上の問題があるとまでは言えない」とした。

一方で,フリーアナウンサーとテレビ局,男性中心の職場に置かれた女性,という視点に照らし,申立人が圧倒的に弱い立場だったとして,あいテレビに対し,出演者が気軽に悩みを相談できる職場環境やジェンダーに配慮した体制を整備することを要望した。