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メディアの動き 2023年06月21日 (水)

【メディアの動き】RSF,リンゴ日報創業者の釈放求め公開書簡,風刺画掲載停止の香港紙も

 国境なき記者団(RSF)は5月16日,中国に批判的な論調で知られた香港紙・リンゴ日報の創業者,黎智英氏の釈放を求める公開書簡を発表した。

 同氏は詐欺罪などで服役中で,9月には香港国家安全維持法違反の罪での審理が始まる予定。

 書簡ではノーベル平和賞受賞者であるフィリピンのマリア・レッサ氏やロシアのドミトリー・ムラートフ氏に加え,世界各国の報道機関幹部など100人以上が,黎氏や同じく拘留されている13人の記者の釈放を求めた。

 香港では,香港国家安全維持法が2020年6月に制定されてから3年となるのを前に,萎縮効果がいっそう拡大している。

 香港紙・明報は5月11日,風刺画の掲載を停止すると明らかにした。

 これは,黄紀鈞氏が「尊子」のペンネームで1983年から連載してきたもので,人材募集をテーマにした風刺画では「過酷な統治に耐えられる人材を優先採用」と描くなど,皮肉やユーモアを込めて政治や時事問題を扱うのが特徴だった。

 しかし,5月9日に掲載された選挙をテーマにした風刺画では「試験の点数や健康診断の結果が不合格でも,長官が認めれば当選できる。彼らに任せておけば市民は安心だ」と,体制に批判的な候補を排除する選挙制度の変更をやゆした。

 これに当局が激しく反発し,掲載停止につながった。

 その後,香港紙・South China Morning Postの調べでは,黄氏の風刺画や天安門事件関連の書籍が公立図書館で閲覧できなくなっていることがわかった。

 言論の統制が進む中,香港社会に,国家安全維持法に触れることを恐れた自己抑制の動きがまん延している。