2010年
「ハッシュパピー バスタブ島の少女」 (アメリカ)
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「エリ」
(メキシコ=ドイツ=オランダ=フランス)
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「イエリャーナ」
(ロシア)
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「朝日ヶ丘の素晴らしき人々」 (日本)
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ハッシュパピー バスタブ島の少女
Beasts of the Southern Wild
2011年/アメリカ/91分
●2012年 サンダンス映画祭 USコンペティション審査員大賞(グランプリ)、撮影賞
●2012年 カンヌ映画祭 ある視点部門 カメラドール賞・国際批評家連盟賞・エキュメニカル賞スペシャルメンション
●2012年 AFIムービー・オブ・ザ・イヤー
●2013年 アカデミー賞ノミネート 作品・監督・主演女優・脚色
【あらすじ】
不屈の心を持つ6歳の少女ハッシュパピーは、父のウィンクと共にルイジアナの臨海湿地帯バイユーに暮らしている。「バスタブ」と呼ばれるその小さなコミュニティは長い堤防で産業地帯や通常の文化生活と隔てられ、まるで世界の果てのよう。大きな嵐が来ると堤防でせき止められた水はどこにも行きようがなく、バスタブはすっかり水没してしまう。住人は水上共同避難所を作って暮らすことになるが、誰もバスタブを後にする者はいない。謎の病に冒されているウィンクの健康は日を追って悪化し、自分がいなくなった後の世界でハッシュパピーが強く生きていけるよう、父は娘を懸命に訓練する。
ウィンクの心臓が痛むのと呼応するように、世界の鼓動が突然速く強く乱れる。南極では棚氷から巨大な氷塊が離れ、海上を漂い始めた。氷の中に眠っているのは前史時代の獣、オーロクたち。そんな中ハッシュパピーは、物心つく前にいなくなった母親を捜して海に泳ぎ出る。
ワールドプレミアはサンダンス映画祭2012。USドラマ・コンペの最高賞である審査員大賞と撮影賞を受賞し、ベン・ザイトリンは本作品で驚くべき長編劇映画デビューを飾った。また、オーディションで3500人から選ばれた6歳(撮影当時)の新人クヮヴェンジャネ・ウォレスにも称賛が集まり、2013年のアカデミー賞主演女優賞に史上最年少でノミネートされた。
【監督】
ベン・ザイトリン
ニューヨーク市クイーンズ地区で民俗学者の両親のもとに育ったベンは、映画監督でありアニメーター、作曲家でもある。「Egg」「The Origins of Electricity」「I Get Wet」「Glory at Sea」の短編作品で多くの監督賞を受賞し、映画専門誌でインデペンデント映画の新星の一人として紹介された。共同脚本のルーシー・アリバーが書いた舞台劇をもとにした本作で長編劇映画デビュー。物語の舞台となるニューオーリンズに移り住んで制作を進めてきた。
エリ
Heli
2013年/メキシコ=ドイツ=オランダ=フランス/105分
●2013年 カンヌ映画祭 監督賞
【あらすじ】
メキシコの小さな町。住民の生活は貧しく、自動車の組み立て工場で働くか、麻薬密売組織の手先となるしかない。突然行方不明となった父を捜す長男エリは、警察の腐敗やドラッグ密売など、社会の裏側の世界に直面する。絶望の中、彼の行く道は?
【監督】
アマット・エスカランテ
スペイン、バルセロナで生まれ、メキシコのグアナフアトで育つ。映画編集と音響をバルセロナの学校で修めた後、キューバの国際映画テレビ学校で学ぶ。短編映画で受賞を重ねた後、2005年の初長編「Sangre」がカンヌ映画祭ある視点部門で上映され国際批評家連盟賞を受けたほか、多くの映画祭で受賞。続く2008年の「Los Bastardos」も各国の映画祭で受賞している。「Heli」は長編3作目となる。
イエリャーナ
Elena
2011/ロシア/109分
●2011年 カンヌ映画祭 ある視点部門 審査員特別賞
●2011年 ヘント国際映画祭 グランプリ
●2012年 ゴールデン・イーグル(ロシア) 作品賞・監督賞・助演女優賞・撮影賞
【あらすじ】
老夫婦、イエリャーナとヴラディミルは10年間一緒に生活している。イエリャーナには前の夫との間に息子がおり、ヴラディミルにも娘がいる。ヴラディミルは裕福だが、金に困っているイエリャーナの息子一家への援助には二の足を踏んでいる。優しくかわいらしい老婦人が金を手に入れて息子にチャンスを与えようと、あるトリックを思いつく。
【監督】
アンドレイ・ズビャギンツェフ
ノボシビルスクで生まれる。ロシア舞台芸術アカデミーで演技を学んだ後、舞台、テレビ、映画に俳優として参加。2000年にテレビ番組の演出を手がける。2003年の初長編映画「父、帰る(The Return)」でベネチア映画祭金獅子賞と新人監督賞をダブル受賞。2作目の「The Banishment」は2007年のカンヌ映画祭でプレミア上映され、主演男優賞を獲得している。今回受賞の「イエリャーナ」は長編3作目にあたる。
朝日ヶ丘の素晴らしき人々
The Wonderful Lives at Asahigaoka
日本
【あらすじ】
川沿いの街、朝日ヶ丘で起こる迷える人々の物語。
ある夕方、女子高生のえみりは自宅マンション6階のベランダから飛び降りる。タクシー運転手の小谷は、記憶喪失の幽霊となったえみりに取り憑かれ、記憶探しに付き合わされる。
高校生の智は2人の女子高生と付き合うかたわら、夜は中年・壮年の男女に体を売り、恋愛小説の表現について考える。他人同士の彼らは、えみりの自殺と智の小さな事件をきっかけに出会い、巻き込まれて行く。
【監督】
山岡大祐
静岡県出身。神奈川大学在学中にダメ人間を主人公にした自主映画を撮りはじめる。Vシネマのメイキングスタッフ、フィルム会社勤務などを経て、2007年に完成させた「ロストガール」はドレスデン国際映画祭で上映され、都内でも劇場レイトショー公開された。その他の作品に山形国際ムービーフェスティバルで村上透賞を受け、日本やアメリカのレズビアン&ゲイ映画祭で上映された「みかとせいじゅん」などがある。受賞した「朝日が丘の素晴らしき人々」は共同脚本の江藤有吾と共に創造した物語。