ずっとヨシ原で ~栃木県 渡良瀬遊水地~
栃木県の南部にある「渡良瀬遊水地」。群馬、茨城、埼玉にもまたがるこの場所は明治時代、足尾銅山の鉱毒事件をきっかけに作られました。土地の人たちは、広大な湿原のほとりに住み暮らしを立ててきました。遊水地で生きる知恵のつまった伝統の「よしず」作りに、水害の絶えない土地での備えや工夫。いまも続く川魚の漁には、厳しい時代を乗り越えて生きてきた人々の精神があふれます。遊水地と共に歩んできた人々と出会います。
今回の放送内容
栃木県の南部、群馬・茨城・埼玉にまたがる「渡良瀬遊水地」。面積は約33平方キロメートル。大雨の際、増水した川の水をため込むことで、下流への水害を防ぐ役割を担っています。元々は明治時代に、足尾銅山の鉱毒対策として作られました。現在は、一面にヨシが生い茂る、本州最大の湿原となっています。5年前には、ラムサール条約にも登録されました。
周辺地域では、かつて、遊水地のヨシを使った「よしず」作りが盛んでした。農家にとって、よしず作りは、農閑期の貴重な収入源でした。今も毎年3月に行われる「ヨシ焼き」は、枯れたヨシを焼き払うことで、病害虫を防ぎ、質の良いヨシが育つとされています。人々は、暮らしの中で、遊水地の湿原を守ってきたのです。
遊水地では、川魚の漁が今も行われています。かつてはどの家も、毎朝舟を出して 魚を獲り、問屋に売って収入を得ていたといいます。コイ、フナ、ウナギ、ナマズ、モロコなど、豊かな食材が食卓を彩りました。何者にも代えがたい、ふるさとの味です。
旅人・山本哲也アナウンサーより
ロケスタッフと待ち合わせた場所が「道の駅きたかわべ」、なんと群馬県板倉町であります。あれ、栃木県の旅だよねと思いつつ、行って納得。渡良瀬遊水地は栃木、群馬、埼玉にまたがっているんです。なんと広い広いことか。見渡す限りの池と湿原、しかも池はハート型をしているではありませんか。その空間、ゆったり感、思いっきりの深呼吸。遊水地を目の前にして圧倒されました。よしず作り農家の松本八十二(やそじ)さんのごつごつで皺だらけの大きな手は遊水地の恵みを生かす魔法の手でした。明治時代に作られたというこの遊水地、ここに至るまでの遊水地周辺に暮らしてきた人たちの忍耐と地道な歩みをあらためて感じた旅となりました。ロケの途中で食した遊水地の恵みのひとつ「なまずのてんぷら」、もちもちして甘味がありおいしかったことを付け加えておきます。
渡良瀬遊水地へのアクセス
〈電車〉
東武日光線「新古河」駅(徒歩約5分)/「柳生」駅(徒歩約20分)/「板倉東洋大前」駅(徒歩約20分)/「藤岡」駅(徒歩約20分)
JR宇都宮線「古河」駅(徒歩約20分)
〈車〉
東北自動車道「館林」ICから約20分
投稿時間:08:24