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メディアの動き 2024年03月19日 (火)

【メディアの動き】仏国務院,メディア規制監督機関にニュース専門チャンネルの調査求める

 フランスで行政訴訟の最高裁判所にあたる国務院は2月13日,RSF(国境なき記者団)の求めに応じ,メディアの独立規制監督機関Arcomに対し,ニュース専門チャンネルCNewsが報道の多元性と独立性の義務を尊重しているかに関し,6か月以内に調査するよう求めた。

 CNewsは,実業家ボロレ氏一族のBolloréGroupが筆頭株主であるメディア複合企業Vivendi傘下の有料放送Canal+ Groupのニュースチャンネルで,フランス版FOX Newsともいわれている。これまでも極右の論客による過激な差別的発言などで規制機関から処分を受けている。

 RSF は2021年,CSA(現Arcom)に対し,CNewsに放送法が規定する報道の誠実性,独立性,多元性の法的義務を順守させるよう求めていたが,却下されたため,2022年に国務院に申し立てを行っていた。RSFは,CNewsはニュースチャンネルではなく,ボロレ氏の指揮下で,著しく偏向した意見を放送するオピニオンチャンネルと化し,研究者の調査でも出演者の78%が極右や右派だったなどとしている。

 政治的多元性の尊重については,Arcomはチャンネルごとに,出演した政治家の発言時間の報告を毎月義務づけて監視しているが,今回,国務院は,司会者やゲストなど番組出演者すべての意見の多様性についても考慮すべきだとしている。RSFは,国務院の決定は報道の自由と独立性にとって,歴史的な決定だとした。一方,Arcom委員長は地元メディアの取材で,編集の自由を尊重しつつ,実施規則の明確化に向け検討を始めたとしている。