文研ブログ

調査あれこれ 2016年03月01日 (火)

#13 月報3月号紹介① 「朝ドラ」研究、はじめました!

メディア研究部(番組研究)関口 聰

今日は、文研の刊行物である
「放送研究と調査(通称・月報)」3月号の発行日です。今日から開催中の文研の年に一度のビッグイベント「文研フォーラム」の会場では、実際にお手に取ってお買い求めいただくこともできますよ!

今回は、出来たての3月号から、誌面をかなり割いている調査報告“【「朝ドラ」研究】最近好調な「朝ドラ」を、視聴者はどのように見ているか?”についてご紹介したいと思います。


【ここで問題】
いきなり脱線しますが、「朝ドラ」というのはあくまで俗称です。正式には「連続テレビ小説」。「大河ドラマ」も実は俗称だったのですが、ある作品から番組冒頭に表記されるようになり、正式名に昇格(?)しました。その作品とは何だったでしょう?答えは文末に…



“最近好調な「朝ドラ」”と聞いて、皆さんが思い浮かべたのはこちら↓でしょうか?
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うーん、残念!
いくら半年間と放送期間の長い朝ドラとはいえ、調査を実施し、分析して論文にまとめて発行するまでを放送中に間に合わせるのはなかなか難しいのです…
でも、安心してください、『あさが来た』の調査もやってますよ!

さて、思わせぶりなタイトルをつけておきながらネタバレしちゃいますが、“最近好調な朝ドラ”とは、放送時刻が8時になり、視聴率が好転したとされている『ゲゲゲの女房』以降を想定しています。社会現象とまで言われた『あまちゃん』の時のフィーバーぶりは、まだ皆さんの記憶に新しいのではないでしょうか?大晦日にダイジェストをまとめ再放送し、『紅白歌合戦』で特別コーナーを組むのがすっかり定着しましたよね。
ただ、実のところ『あまちゃん』の世評と視聴率等のデータとは必ずしも一致せず、そのギャップについて調査したのが以下の過去論文です。

▼『あまちゃん』に関する4つの調査
  http://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/bangumi/077.html
▼その英訳版(ものすごく手間がかかりましたが、自信作です!)
  http://www.nhk.or.jp/bunken/english/reports/pdf/report_16012201.pdf
▼『あまちゃん』調査をもとに、2014年3月に開催した「特別セッション」の採録
  
http://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/bangumi/079.html

しかし我々『あまちゃん』調査チームは、その後もモヤモヤとした気持ちを持ち続けました。思えば朝ドラは、今となっては古臭い、とても変わった放送形態をとっています。朝の忙しい時間に毎日15分を週6日、これを半年間も見続けなくてはなりません。
視聴者はいったい、どんな気持ちで朝ドラを見続けてくれているのでしょう?
それを知るべく、インターネット上にモニターを集め、数週間にわたって朝ドラについて語ってもらう調査を昨年実施しました。MROCエムロック(Marketing Research Online Community)といいます。英文を見るとどんな調査かイメージできるかと思います。
集まった人々は、そこそこ朝ドラを見てくれている人でした。忙しい出勤前にリアルタイムに見る人、録画して家族と夕食を食べながら見る人、色々な朝ドラの楽しみ方をうかがうことができました。ただ、過去の作品について語ってもらおうとすると、あまり発言は盛り上がりませんでした。『あまちゃん』が好きだと言う人も多かったのに、たった2年前の『あまちゃん』でさえ個々のシーンの思い出は薄れていたのです。どうやら、ほぼ毎日、毎週続く朝ドラ視聴においては、どんどん記憶が上書きされてしまうのではないか、と我々は考えました。「朝ドラ」のことを調べるには、その時点で放送しているものについて訊くべきではないのか、と。

そこで、今回の調査対象は主にこちら↓
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WEB調査とグループインタビューで、放送中であった『まれ』について様々な角度から質問しました。それを分析することで、視聴者が朝ドラ全般に対して何を求めどう評価しているか、と同時に、『まれ』というドラマはどんな特徴を持っていたかを知ろうとしたのです。詳しい内容は是非本文を読んでいただきたいのですが、チラッとデータだけ置いておきましょう。ピンクが女性キャスト、ブルーが男性です。

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いったい誰が何位なのか?気になる答えはどうぞ本文でご確認ください!

こんなふうにヒット番組の良いところを調べて形に残し、現場に還元することもまた
文研の役目なのです。これから何年かかけて「朝ドラの継続的研究」を進めていきます。繰り返しになりますが、『あさが来た』の調査も現在進行中。安心してくださいね!


【冒頭の問題の答え】
2004年の『新選組!』が最初でした。意外に最近であることと、当時「大河っぽくない」と言われた作品から表示されているのがちょっと興味深いですね。