方議会は、もういらない!?

日本には「地方議員」が3万人もいることをご存じですか?
今回、その全員に初めてのアンケートを行いました。回答してくれたのは2万人近く。NHKでは1か月にわたって、そのホンネを伝えるキャンペーンを展開します。

いま、地方議会や議員の「不要論」が出ているといいます。当の議員たちはどう考えているのでしょうか。

「議員いらない」に危機感

アンケートの回答では、議会や議員の不要論を強く懸念する記述が見られました。

50代の男性議員は、議員の役割を考えて欲しいと訴えます。
「議員不要との考えもあるが、行政監視は不必要なのだろうか?なにごとにもバランスが必要なのではないでしょうか!!」

30代の男性町議は、若者世代から見限られているといいます。
「年寄り議員は若者世代の意見を聞いているのかというと『若者としての意見は?』『若者の意見はわからない』という始末。これでは議会不要論を言われてもしょうがない」

議会の力不足が心配だと、30代の女性議員はいいます。
「若く、女性で議員になった私にとっては、とてもやりがいのある仕事に感じています。しかし、議員のあり方もそうですが、議会の力のなさに力不足を感じます。議会の力は議会で大きくするしかないのですが、議会の力を大きくする事に、関心の少ない議員が多いように感じます。(議員の力を大きくすることには関心はあるのですが…)今のままでは本当に議会は不要と思われるのではと不安になります」

50代の女性町議は、一部の議員のせいだと憤ります。
「町政与党に所属しているだけで、意見も言わず一般質問もせず、ただ集票のみの存在だけの議員がいることが地元住民から『議員なんていらない』という考えがなくならない原因なのではと思うことが多々ある」

議員自身が「議員いらない」

なんと、今回のアンケートに回答した議員自身から、議員や議会の不要論が見られました。

60代の男性議員は、首長の権限が強く、諦めの気持ちのようです。
「議員の私個人の考えではあるが首長がしっかりしておられるかたであれば議会不要と考える…都道府県議会も同様と考える。特に県議会議員は金儲けである。多くの歳費以外に月額30万もの政調費を支給されているのはおかしいと思う県会議員は月に50万預金できるらしい話はたくさんある。
最近の地方自治法は首長に権限が集中するべく方向に改正されていく傾向にあり、議会の権能が低下しており議会不要への方向となっていることも事実である。首長が決定した事項を議会が変えることはほぼ不可能であることも事実としてある」

行政監視ができないなら、不要だと70代の男性議員もいいます。
「地方議会はその機能を果たしていない。不要なのではないか。首長とうまくやって何らかの利益に与かろうとする議員が多数を占め、行政のチェックがなされていない」

50代の男性議員は、批判を込めてこう述べます。
「自分の地域の利害で活動するのなら議員は不要、自治会長会で充分」

都道府県議会はいらない

50代の男性議員は、都道府県議会はいらないと主張します。
「都道府県議会は不要。議会は基礎自治体と、国にあれば十分」

40代の男性議員は、その理由をこう述べます。
「県議会は不要。基礎自治体と国のやりとりで充分こなせる。もし必要なら県議会に市議会から代表して出たら効率もいいし、実情も訴えられるのではないか?」

70代の男性議員は、報酬が高すぎるのも一因だと。
「県議会議員の報酬活動費が高すぎる。普通市の市議会議員はその半分以下、生活ができない。働きざかりの人はなれない、ならない。質の低下がひどい。悪くなる一方だ!!全国で考え、制度を変えない限り議会不要論が出る」

60代の男性市議は、行政の仕組みを変えようと提案します。
「県の単位をもう少し広域での単位(例えば道州政制のようなもの)に組織変更し、国と県での重複事務事業の効率化を図り、また県と市との重複事務兼業の効率化を促進すべきと考える。県議会議員は不要。市町村の新たなあり方を考える必要があると思う」

いや、小規模議会のほうがいらない

70代の男性議員は、その逆を主張します。
「小規模町村においては議会は不要。行政のチェック機能が果たされていない現状。住民会議が妥当と考えています」

原因は「見えない議会」だ

50代の男性市議は、議会が見えないから不要論が出るのだと指摘します。
「市民から見れば『議会で、何の話がされ、何が決まっているのかわからない』状態がある。実際まちを歩き、声を聞くと、『議会がなにをしているかわからない』という声は多い。
このままでは地方自治体の議会不要論はますます大きくなるのではないかと危惧する。
世間、特に若い世代とのギャップは大きいのではないか。当市では本会議、常任委員会ともにケーブルTVで放送しているが、高齢の一部は視聴しているが、若い世代~中堅世代には充分届いていないように思うし、そもそも視聴する時間帯は学校や仕事。市民への情報伝達のあり方を真剣に考えないと、今後、議会はますます市民、若い世代から乖離し、存続が危ぶまれるように思う」

40代の男性議員は、議会のあり方に問題があると考えています。
「そもそも政治は利害調整の場であるので、政策課題に対する賛否は表明する必要があるが、かたくなに賛否それぞれの主張にこだわるため、政策課題をどのように解決するか提示できていない。このままでは地域の課題解決が進まず地方議会不要となってしまう。議員間・会派間・議会と執行機関との間で自由に政策課題について討議する機会が必要なのではないか」

「定数削減」も不要論につながる

50代の男性議員は、定数削減が不要論のきっかけになると主張します。
「議員定数は、削減すればする程、投票率は低下します。立候補できない地域が生まれ、関心が低くなるからだと思います。定数を削減すればする程、議会不要と考える人が増えると思います。しかし、増やせとは言えません。議会は、なにをやっているのか、住民の理解がうすいと思います。その責任は、議会にもあります。議事をすべて公開することが一番に行うべきと考えます」

民主主義のコストを考えて欲しい、というのは60代の男性議員です。
「無投票選挙なくするには定数の削減はやむをえない面があるが、地方議会はその方向で進むと議会不要論につながる。地方の活性化には議員の存在をきちんと整える必要を感じる。議会制民主主義は日本国の根幹である。コストを悪であると言う風潮は最悪の結果をまねくような気がする」

どうしたら「必要」と思ってもらえるか

60代の男性市議は、議会のあり方を変えるべきだといいます。
「当局の議案だけを審議するだけでなく、議員が議案を提出して議員どうしで議論するような議会にしていかないと多様な市民ニーズに応えられない。そうしなければ議会不要論が出てくる。なり手もいなくなる」

50代の男性議員は、国にも注文を付けます。
「総務省が地方議会を縛るのではなく、地方自治法の中で明確な改正を行い、地方議会の裁量権を認めるようにしなければ、社会情勢に対応した議会活動は望めない。そうでなければ住民にとって議会は不要となってしまう」

50代の男性議員は、主権者教育が必要だと考えています。
「地方議会の二元代表制は一般にはわかりづらく、市民も理解していない人が多い。だから議会不要などの言葉が出てくる。民意の代表である議会が不要な訳がない。私たち議員も理解してもらうように努力しなければならないが、政治教育としても必要だと考えます」

70代の男性議員は、とにかく襟を正せと。
「議会不要論が拡大する中、議員自らがエリを正し、議員としての職責を果たすことで、市民から『信頼される』ことが必要。地方議会の重要性を市民に認識してもらえるよう、活動していきたい」

「住民が直接」の流れなのか…

60代の男性議員は、不要論が出る議会の現状を、このように分析します。
「首長が市民との直接対話や民間組織・市民団体との交流などを重視活用され、議会不要論が台頭してきたこと。
大選挙区制においては、議員間・地域間の意識の相違が大きく、議会の総意を集約するとことが容易でないこと。
議員の多くが地元地域への利益を主眼としていて、行政への監視機能の能力と意識が低下していること。
旧態依然の組織である議会に政策立案や条例提案のガバナンスが確立されていないこと」

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これを受けて、次回は「住民投票」「直接民主制」についての意見を紹介します。

寄せられた声をもとに、記事は随時更新していきます。一旦、集計は終了しましたが、ご意見は今後も参考にさせていただきますので、まだ回答されていない議員のかた、お待ちしております。
また、議員の方だけでなく、読者の皆様にも、地方議会の課題についてのご意見をいただきたいと思います。下の画像をクリックしていただけると、「ニュースポスト」が開きます。そちらにぜひ、「議員アンケートについて」などと書いて、投稿をお願いします。

【全議員アンケートについて】
NHKは、今年1月から3月にかけて、全国1788の都道府県・市区町村の議会と、所属する約3万2000人の議員全てを対象とした、初めての大規模アンケートを行いました。議員のなり手不足など、厳しい状態に置かれている地方議会の現状を明らかにし、「最も身近な民主主義」である議会のあり方について、有権者一人一人に考えていただく材料にしてもらおうというのが趣旨です。
約60%にあたる1万9000人余りから回答が寄せられています。集計結果をもとに、テレビ番組や特設サイト、そして週刊WEBメディア「政治マガジン」などで、統一地方選が終わる4月末にかけて「議員2万人のホンネ」と題したキャンペーン報道を行っていきます。4月27日(土)には、午後9時から「NHKスペシャル」の放送を予定しています。

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