ラマに出てくるの議員は
なぜ「悪役」ばかりなの!?

日本には「地方議員」が3万人もいることをご存じですか?
今回、その全員に初めてのアンケートを行いました。回答してくれたのは2万人近く。NHKでは1か月にわたって、そのホンネをお伝えするキャンペーンを展開します。

アンケートでは、メディアの地方議会の取り上げかたについても、多くの記述がありました。

不祥事ばかりじゃない!本当は「まじめ」

最も多かったのが、不祥事の報道ばかりでなく、まじめに活動している議員のことも、もっと報道してほしいという声です。

「議員、議会の不正、不祥事には憤りを感じるが、真摯(しんし)に取り組んでいる地方議会、議員達の姿をもっと報道するべきと思う」(70代男性議員)

「マスコミにおいては議員の不祥事の報道が多くみられるが、普段の議員活動の様子も報道してほしい。大多数の地方議員は住民のため一生懸命がんばっています」(60代男性議員)

「マスコミの方々へも、一部の議員の不祥事等だけではなく、頑張っている議員の特集、議員の魅力再発見などの地方議員のなり手不足解消に共に力を合わせて取り組んでいきましょう!!」(40代男性議員)

50代の女性議員は、仕事がやりづらくなっていると。
「議会活動の見える化が十分ではない。それは見える化に反対の議員が多く存在することが原因。住民の無関心とマスコミの取り上げかた(とんでもない議員のニュースばかりで真面目な議員の活動は全く取り上げないこと)から議員の(仕事)役割は汚いものとなってしまっている。とても残念でやりづらい」

ドラマで議員は「悪役」ばかり

60代の男性市議は、ドラマに出てくる議員が悪役ばかりで印象が悪いといいます。
「現在のTVドラマなどマスコミでの議員の露出は悪役ばかりで、印象を悪化させている。善役の議員のドラマなど見た記憶がありません。
県議会議員までは、地方紙等で取り上げられる機会があるが、市町村議員が登場する機会は少ない。TV討論しかり。なかなか、主張が伝わりにくい」

50代の女性議員は、ひとくくりにする伝え方を考えてほしいという意見です。
「不祥事を起こす議員が多く、マスコミやネットを通してバッシングされることは当然の報いとも言えるが、一部タレントが一方的に議員をひとくくりにして非難することは許せない感情がある。依然、中でもテレビは世論への影響が大きいことをふまえ、何を報道するのか、各局の意志をもって平等に報道して欲しい」

なり手不足の原因にも?

議員のなり手不足にも影響しているという意見も見られました。

「議員のなり手不足をまねいた原因は種々ありますが、最も大きなものは、失態を呈した一部の議員をマスコミがあまりにも大々的に取り上げることにより、若い人を中心にすべての議員に拒否反応を持つようになっておるのではないか」(70代男性議員)

「マスコミ報道で議員不祥事ばかり取り上げている。議会・議員に対する不信感が醸成されてしまう。善行・善行を積極的に取材してはどうか?議員へ立候補する意欲や、投票率を上げる事にもつながると考える」(60代男性議員)

イメージの悪さが待遇の悪化にもつながっていると、40代の男性市議は指摘します。
「行政システムを理解すれば議会の役割と重要性は多くのかたが理解できると思う。しかし、議員とは特権を持った職であると言うネガティブなイメージが先行し待遇の悪化をしたことにより地方議員のなり手不足につながっていると思う。
行政組織をチェックする議員の定数を減らせばそれだけ行政に対する圧力は低下する。議員の報酬や政活費を削ればそれだけ活動量が低下し、民意を汲み取る事は困難になる。有権者の議会に対する理解の低下は最終的に行政の権力を強め、場合によっては民意が反映されにくい行政運営へとつながることが懸念される。
一部の議員の悪行にだけ焦点を当てるのではなく、議会の役割や議員の活動の良い点をマスコミにも取り上げてもらいたい。お役所の『お上意識』は皆さんが思っている以上に高く市民に対して高圧的である」

やりがいのある仕事だと伝えてほしい

50代の男性議員は、やりがいのある仕事だと伝えてほしいといいます。
「議員、特に地域に密着した地方議員は、本来非常にやりがいのある仕事、楽しい仕事であり、それを伝えることが議員のなり手不足解消にもつながる。専門性を発揮でき、専門性を認める環境づくりができれば議員の地位向上も可能。昔ながらの名誉職的議員は不要だが、社会の議員のイメージは昔のまま、新しい時代にふさわしい議員の活動を知らせる役割をメディアも担ってほしい」

60代の男性議員は、成果を上げた議員を実名で報道してほしいと訴えます。
「地方議員の不祥事だけでなく、地方議員がどのような活動をしているのか、どのような成果を出しているのか、など新聞、TVなどメディアで報道していただきたいと思います。
悪いことは実名が出ますが、良いことをしても実名は出してもらえません。これで本当に公平・平等な報道と言えるのでしょうか?多くの地方議員は真剣に地域の将来のことを考えています」

30代の男性議員は、伝えるためにこそ開かれた議会が必要だといいます。
「今、議員のなり手不足が数多くの自治体からもよく聞かれます。そこには非常勤である身分と、社会保障の問題もあると思いますが、イメージも大きなウェイトを占めていると思います。メディア(ニュースやドラマなど)で流れてくるのは、不正が多く、本気でがんばっている議員がいるということもクローズアップされていくべきではないかと考えます。情報発信不足である事も、原因の一つであると考えられますので、今後はさらに『市民の方に開かれた議会』を目指して取り組んでいきたいと思います」

まだまだ、メディアの監視が足りない

一方で、メディアによる議会や議員へのチェックが、まだ十分でないという意見も見られました。

「地方議会においてはメディアの役割が大切で、日頃からのチェックが不可欠。議員を減らし、メディアと有権者からの監視を厳しくすれば地方議会としての質を向上できる。そのように考えます」(30代男性政令市議)

「まだまだ、メディアの役割は大きいので、学校教育とともに真の民主主義を果たすためにも、メディアにはチェック機能と教育を実施していただきたい」(30代男性議員)

30代の男性議員は、問題議員はまだ多いと指摘します。
「マスコミはもう少し地方議会をクローズアップして欲しいです。『なぜこの人が』が多すぎる。こんなのが増え続けるようなら議会は不要かもしれない。若い人に夢を持ってもらえる職でありたい。未来の地域・日本を背負う子どもたちに背中を見せる政治家がもっと増えてほしい」

30代の男性議員は、監視によって議会の質の向上につながるといいます。
「議会としては人材不足、各議員については勉強不足です。メディアの力も借りなければ質の向上は難しく思いますが、地方の事例はあまり報道でも取り上げられず、目立たぬところで不合理な議会運営、行政運営が行われておるように思います。優秀な記者さんがいた時期は、報道の質もよく、結果として議会、行政に対する緊張感を与えていました。地方議会・行政にも、メディアの監視の目をもっと向けていただきたいと思います」

政治とカネ以外にも問題はある

40代の男性議員は、政務活動費だけでなく、パワハラ問題ももっと取り上げてほしいと。
「ベテラン議員の人権を無視したような発言に対し失望した。これをよしとしているような地方議会では問題があり、多くの地方議会でこのようなことがおきているのであれば、マスコミは政務活動費の不正問題だけではなく、議員の職員に対するパワハラ問題もとりあげるべき」

40代の男性政令市議は、昔と変わったと嘆きます。
「チェック機能ということであれば、マスコミのかたへの苦言にもなりますが、現在の本市のメディアは支局こそあれども、議会をしっかりと歩いて取材するような記者さん(昔は存在した)は散見されず、結果として、行政からの報道発表資料等をコピー&ペーストするだけのメディアばかりです。これでは、行政へのチェック機能はますます働きません。行政・議会・マスコミ、いずれも緊張感のある関係を築く必要があると考えます」

地方議会の報道が少ない

とにかく、地方議会についての報道が少ない、という声も相次ぎました。

「地方議会を放送して下さい。地方議会が市民の暮らしに一番大事なことを決めていることを放送して下さい。最近の方々は新聞を読まない。自分の都合のいいところだけ見て聞いて判断することです。公正なメディアでぜひとりあげて下さい」(60代男性議員)

「地方議会のその意義と重要性を、広く住民・有権者に理解していただけるような環境作りもなくてはならないと考えるが、たとえば地方政治の出来事に対するメディアの報道は、一般に中央政治に比較して極端に少ないのが実態だ。メディアの皆様にも地方議会の動向によりいっそう注目いただき、地方議員の意義ある活動については積極的に取り上げていただけるよう要望したい」(60代男性政令市議)

50代の男性議員は、税金の使い道を決めることから考えれば、国も地方も大差ないと。
「国会だけでなく、地方議会についても、もっと日頃から報道すべきだと思います。国会も地方議会も、税金の使いみちや日常生活との関係からすれば、重要性に大差ないと考えられるのに、住民の関心度に差があるのは、マスコミの報道によるところが大きいと感じています」

地方議会の現状が大きく変わっていることを伝えてほしいと、60代の男性議員はいいます。
「現在の地方の行政・議会は地方自治の確立のため国や県への事務委託を廃止した事により小さな行政区の仕事の量が多種多様になっている。
しかし財源の乏しい町村は、議会への財源もなく議員の身分保障がまったく無い状態で報酬も少なく仕事は増えている。地方創生や国境離島新法の制定により住民にはサービスの向上が増えているが議員に対する保障は無い。地方に仕事を増やすのであればそれ相応の対応は議会活動や議員報酬等の議員活動に対しても財源の処置をするべきと思う。仕事は増えているものの報酬は減少され議員数は減少しなければならない状況で、議員のなり手を議論しても解決はしない。小さな町は仕事も少ないと思っているのでしょうか。
安心して議員活動を行うことができるよう、地方行政とは別に地方議会への国の財源を必要とする議論をマスコミも研究していただきたい」

報道が少ないからこそ、不祥事が起きた

40代の男性議員は、閉ざされた議会が、不祥事の原因だと指摘します。
「市議会によっては、素晴らしい取組を実践しています。昔ながらの体質から抜け出せていない地方議会はまだまだ多いですが、国会の政治は国民から遠く、本来自治を認識・体現できるのは身近な地方議会です。地方議会そのものが報道されることなく閉ざされた世界でガラパゴス化してきたからこそ、不祥事が後を絶たなかったのではないでしょうか。ICTリテラシーやその活用は民間企業からは15年近く遅れています」

国会議員より住民に近いんだ!

70代の男性政令市議は、住民に密接なことをしていると、もっと伝えてほしいと。
「次々に生まれてくる行政課題に的確に議会は市役所とともに良い施策を行っているのに、地元紙を含めマスコミの報道が極めて少ない。結果、『議会や市役所は何をやっとんねん!』という市民の声となる。国会よりも市民に密接なことをばりばりやっているのですから、マスコミがじゃんじゃん取りあげてほしいと考えます」

別の議員も、国会議員より住民の立場に立っていると強調します。
「マスメディアでは地方議員のことを悪く言うことが多く感じるが、果たしてそうでしょうか。国会議員がどれだけ住民の立場に立って物事を考えておられるでしょうか・・・?私たち地方議員は常に住民と直接話し合ったりご意見をいただいたりしています。現状、国会議員の悪口は出ずとも常に地方議員が標的にされるのが残念です」

有能でも機会がない議員のために

30代の男性市議は、有能な議員に光を当ててほしいと訴えます。
「個々に有能な議員であっても議会の会派や運営のあり方によって機会を与えられない場合も多いと思われる。そうした議員に光が当てられる取材と報道がなければ、不祥事や汚職・利権にまみれた『政治』イメージばかりが世論を席巻してしまうので、マスメディアの方々には色々な目で政治家・地方議員を捉え報じていただきたい」

若者向けの政治番組を

60代の男性議員は、若者向けの政治番組を作ってほしいと要望しています。
「有権者、特に若年層に政治に対する関心が希薄のように感じる。これが投票率の低下にもつながっているのではないか。マスメディアにおいてもバラエティ番組もいいが若者向けの政治関連番組、あるいは若者が関心を持つような番組等の対応を考える必要があると思う」

70代の男性議員は、議会の高齢化にはメディアにも責任があると。
「当選しても、4年だけの所得保障。年金制度もない。若い人に関心を持ってもらえるはずがない。私は年金(厚生)受給者だからいいようなものだが子どもにはさせたくない。子どもを大学にて教育させるだけの所得は必要だと思う。
日本の地方議会(市町村)は、老人のサロンとなるのは明白。市町村議会は定数減に努力実現してきたが都道府県では、いかんともしがたい状態。マスコミがたるんでるとしか言いようがない」

メディアは「短いフレーズ」ばかり

50代の男性議員は、メディアに現れる政治像を、このように述べます。
「世間一般の、議員になるべき人の理想像が高すぎると思われます。報道する方々が議会(特に国会)、議員を劇場と俳優のように例え過剰に熱を入れてニュースにすることがあるとき、見る人々はその一面的な見方でしかその内容をとらえられないのではないかと思う事があります。ネットメディアは多くのかたが同時に見ることが少ない。政治コンテンツはさらに視聴者の母数自体が少ない。議員にはとても複雑で様々な業務があると、この世界に入って感じましたが、それを伝える機会はまずないでしょう。人は短いフレーズでしか政治の話を聞くことはない。新聞・テレビなどは伝える時間が限られ、端的な表現しか選ぶことができないですしジレンマです」

「新しいこと」だけ書かないで

ある男性県議は、政策は新しければいいものではないと訴えます。
「条例を作って満足している議員が多い。対外的にカッコつけている。条例を作るのに役所の職員に負担をかけている。条例を作らなくてもできる事は沢山ある。マスコミは常に新しいことを書きたがる。新しい施策を作っても、費用対効果で疑問の点が沢山ある。新しい施策を打ち出す時にはもっといろんな角度から検討する事が必要である」

既存メディアの経営状況が影響

50代の男性議員は、既存メディアの現状が、地方の政治報道にも影響していると分析します。
「市民の地方議会や議員への関心は薄く、選挙での投票率は低迷している。その原因として、政治家の努力不足のほかに、NHKのかたもご承知と思うが、メディアを巡る構造的な問題があると思う。

以前より影響力が低下したと言われるが、テレビと新聞は市民の政治意識になお圧倒的な影響を与えている。その報道内容と取材態勢は相変わらず中央集権的で、国政など中央発の情報が優先され、分量も多い。地域ニュースは後回しでコンパクトに扱われていることが、視聴者や読者の地方政治に対する関心を高まりにくくしている。地方紙でさえ、通信社が配信する中央発のニュース、全国ニュースを一面トップに扱うことが多い。

加えて、近年はマスコミ各社の経営環境が悪化し、地方紙や地域紙は淘汰され、全国紙やテレビ局は地方支局の取材態勢の縮小を強いられている。地方政治に取材する記者は減らされ、議会の動きはますます市民の目に届きにくくなっている。

こうした既存メディアの状況が、『地方議会や議員が何をしているかわからない。見えない』という市民の声の背景にある。自分が住むまちの地方選挙より、AKB総選挙の方に詳しい人も少なくないのではないか。

SNSは、地域の情報を、既存メディアをはるかに上回るほど、きめ細かく伝えられる。地方議会や議員と市民とを結ぶツールとしても、その可能性に期待できる。流される情報は、訓練を積んだデスクらによるチェックを通っておらず、作為的な目的のものもある。情報を発信する側にはモラルの向上が、受け取る側には大量の情報を吟味できる眼を持つことが求められる。それができれば、中央発の情報であふれる既存メディアを脇に置き、SNSを手掛かりに地方議会や議員の動きを知り、地方政治に積極的に関わろうと志向する市民が増えると思う」

NHKには…

最後に、ある市議の記述を。肝に銘じます。
「NHKは特に政治報道、偏らないで報道していただきたい」

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寄せられた声をもとに、記事は随時更新していきます。いったん、集計は終了しましたが、ご意見は今後も参考にさせていただきますので、まだ回答されていない議員のかた、お待ちしております。
また、議員のかただけでなく、読者の皆様にも、地方議会の課題についてのご意見をいただきたいと思います。下の画像をクリックしていただけると、「ニュースポスト」が開きます。そちらにぜひ、「議員アンケートについて」などと書いて、投稿をお願いします。

【全議員アンケートについて】
NHKは、今年1月から3月にかけて、全国1788の都道府県・市区町村の議会と、所属する約3万2000人の議員全てを対象とした、初めての大規模アンケートを行いました。議員のなり手不足など、厳しい状態に置かれている地方議会の現状を明らかにし、「最も身近な民主主義」である議会のあり方について、有権者一人一人に考えていただく材料にしてもらおうというのが趣旨です。
約60%にあたる1万9000人余りから回答が寄せられています。集計結果をもとに、テレビ番組や特設サイト、そして週刊WEBメディア「政治マガジン」などで、統一地方選が終わる4月末にかけて「議員2万人のホンネ」と題したキャンペーン報道を行っていきます。

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