務活動費、いる?いらない?

日本には「地方議員」が3万人もいることをご存じですか?
今回、その全員に初めてのアンケートを行いました。回答してくれたのは2万人近く。NHKでは1か月にわたって、そのホンネを伝えるキャンペーンを展開します。

今回は、不正な使い方が相次いだ「政務活動費」に関する自由記述をご紹介します。ちなみに政務活動費とは、「議員の調査研究その他の活動のために交付される経費」のことで、自治体ごとに条例で交付金額などを定めています。

必要なんです!

政務活動費がなぜ必要なのか、50代の男性議員はこう解説します。
「政務活動費について。不要論も聞こえてくるが、この制度は民主主義を担保するものであり、理解が必要。(金持ちだろうが持たない人であろうが一定の政治活動を保証することは大切だ。そうでないと金を持った人だけが活動できるということになる)ただし、使途については厳格な運用が必要であることは言うまでもない」

60代の男性議員も、必要性を強調します。
「科学的・統計的な根拠にもとづく(いわゆるエビデンスにもとづく)発言や政策提言がもっとなされるべきだと思います。政務活動費も本来はそのためのものです。単なる印象論や、結論ありきの単なる一方的主張をするだけでは、実のある議会にはならないのではないでしょうか(自らに対する反省も込めて)」

「第二の報酬」ではない!

不正な私的流用が相次いだことから、政務活動費は「第二の報酬」と揶揄(やゆ)されることもありました。

40代の議員は、表現に違和感を覚えるといいます。
「そもそも、政務活動費は『政務』充てられるもの。真面目に活動している議員にとって、政務活動費を自身の生活費や遊興費などに充てられる『給料』などという言い回しがされることに、大きな違和感を覚えている」

別の40代の議員は、その表現が誤解を招いていると。
「政務活動費は、議員が政策全般を勉強するお金である。これを下げれば『議員は勉強しなくてよい』という話となる。全国的、第二の報酬としてマスコミで問題となり、市民に蔓延した。それゆえ政務活動費=悪、という形となっている」

報酬と一緒にして表現するのはやめてほしい、と40代の男性議員はいいます。
「政務活動費は報酬ではありません。新聞各社の報道において、議員報酬と合算した数字が公表されることに、市民の皆様に対する誤った情報を与えかねない危惧の念を抱いております」

少なすぎる!

政務活動費が少額で、勉強会にさえ参加できないと、40代の女性町議は嘆きます。
「政務活動費が月に1万円以下しかないため、議員向けのよくある勉強会(1回15,000円するようなもの)にはまったく行けません。ニュースを印刷・全戸配布するだけでも、7万円ほどかかり、報酬をかなり使わざるをえない状況になっています。報酬をあげることは町民の理解を得るのが難しいと思いますが、政務活動費を上げることは町でもしてもらいたいところです。また国会議員が関わるような勉強会や、議員向けのセミナーなども町村議会向けの価格を設定してもらいたいです」

60代の男性市議も、すぐになくなると。
「会派視察2回でなくなります。改善を期待しますね」

もらってないよ!

それどころか、もらってさえいないという声が、町や村の議員から相次ぎました。

「町村議員は政務活動費がないためすべて持ち出し。町村議員はボランティアの部分が多い」(60代男性議員)

「当議会は政務活動費がないため、地方への視察、勉強するための経費に苦慮しています。市民が納得するレベルでの支給は必要ではないかと思います」(60代男性議員)

「私の市も、近隣市町村にも政務活動費がまったくありませんので、その中スキルアップなど自力で行っています」(50代女性市議)

「政務活動費が現在は0であるが書籍代や調査研究費として、月1万円位は必要である」(60代男性議員)

「政務活動費について県下町村議会の8割は導入していない。マスコミは不祥事が有るたびに県、市、町村を一律的に扱っているが政務活動費がなく一生懸命に頑張っている小規模議会もあることを再認識いただきたい」(70代男性町議)

やっぱり格差がある

議員報酬と同様、自治体によって格差があるという記述も多く見られました。

60代の男性議員も、格差の解消を訴えます。
「セミナーに参加したが、出席している市町議員はほぼ政務活動費を活用していた。村議会議員は私だけであったが、月報酬も参加者の半額であった。議員のなり手不足と話題になるが、公営選挙や政務調査費、議員年金も国が先導的になり『地方議員の諸待遇の一元化』を図り、議会制民主主義を保持すべきである」

40代の議員は、県議会などでは多すぎると主張します。
「市議会や町議会では、政務活動費は必要。本当に政務活動費を減らしたり、淘汰したりしてよいと思うのは、県議会。まず金額が月額30万円とか、50万円などは、到底理解できない。市議は3万円とかで、10倍以上」

今回のアンケートで、「政務活動費の金額は適切」かどうか尋ねたところ、「あまりそう思わない」「全くそう思わない」が過半数にのぼりました。

もらえばいい、というものでもない

60代の男性議員は、活用されていないと指摘します。
「議員がもっともっと勉強して政策面において執行部と渡り合える能力を身に付ける必要がある。政務活動費はそのためにあるが、実態はそれがうまく活用されていない」

60代の女性議員も、落胆しています。
「市町村議員に比べ県会議員は報酬も政務活動費も多いにも関わらず、調査活動など十分にしていない議員も見受けられるが、それでも何期も当選し続けていることに有権者の無関心さが伝わってくる」

70代の男性議員も、憤っています。
「政務活動費が認められているにもかかわらず、行動を起こさない議員もおり、自費で参加している多くの他県議員を知ると、その情熱と自覚の高さに頭が下がる。しかしながら是が現状の姿である。次の改選時には志高き若者が議会に加わり、未来を切り開いてくれることを願うばかりである」

政務活動費なんていらない!

一方で、政務活動費はいらないという声もありました。
「政務活動費廃止!」(60代男性市議)
「政務活動費は不要だ!」(60代女性議員)
「政務活動費は必要性を感じない。政務活動はあくまでも本人次第、お金を用意したからといって学習するとは限らない」(60代男性議員)

ある議員は、使われていないから必要ないと。
「議員に政務活動費は不要である。現在月1万円、年12万円の活動費が有りますが、大半の議員は使っていません。2年前まではありませんでした。地方議員にはなくて良いと思います」

60代の市議は、返還しているといいます。
「私は政務活動費を返還している。特に都道府県議会議員の政務活動費は高額すぎる。一体何に使うのか。
一般国民の年収は500万円にも満たない。シングルマザーの年収は200~300万円である。議員報酬の他にこれほど政務活動費を支給されていることはおかしい」

実際に廃止したというケースも。
「政務活動費を支給されていましたが、政治団体の会費や、選挙向けのチラシの印刷など、不適切な支出が相次ぎ、繰り返し指摘する中で制度を廃止しました」

60代の男性町議は、必要な費用を支給するだけでいいという考えです。
「私の議会では、政務活動費はありませんが、研修に対する旅費は支給されます。正当に請求すべきだと思います。曖昧な支出を一部の議員がされると、不信感を抱かれるので、政務活動費は廃止されるべきです」

60代の女性議員は、こんな理由から。
「人間がさもしくなるような制度は必要ないと考える」

ただ、アンケートでは、「政務活動費はいらない」という議員は少数派です。

使い道にも差がある

60代の女性議員は、どう使っていいかについても差があると指摘します。
「政務活動費からガソリン代、電話代も拠出できる議会とそうでない議会がある」

50代の男性市議は、使うべきでないものまで認めている議会があると。
「政務活動費は、それぞれの議会の運用方針によるものであり、何が正しいとは、言えない状況です。ある議会では、理由づけされたうえで、悪いとされるものも当然の活動費として認めている議会もあり、政務活動費の存在そのものが、行政予算から支出されるものとして、ふさわしくないと考えます」

60代の男性議員は、政務活動費を使うことで議会報告を義務化してはどうかと提案します。
「個人で発行する、ご自分の議会だよりは、義務にしなければならない。そのための政務活動費は認めてあげればよい。一般質問を議会報告として発信すれば、住民の信頼は高まる」

使いにくい

政務活動費を飲食に使うことを原則禁止とする自治体はありますが、交際費に使わせて欲しい、というのは60代の男性議員です。
「政務活動費の使途のしばりが強すぎて自由な活動ができない。世論は使途にだけ注目しがちだが、議員活動が多くなれば必然的に交際費も増える」

その理由は、寄付金集めに奔走することを防ぐためだと60代の男性県議は説明します。
「団体、地域等の出席および交際には会費等経費がかかるが、すべて自己負担である。意見交換そしてセットになっている会費は政務活動費を充当してもよいと思う。政治団体の経費出費でやるとすれば寄付金集めのためにエネルギーを使うがそれでは何のための議員か主客転倒となる」

会派が使い方を決めるのは嫌だ

70代の男性議員は、使い道を会派が決めることが不満です。
「報酬については十分と考える。政務活動費も十分と考えるが会派で使途を決定しているのは不満である。全体での視察研修に重点を置くのではなく、個人の研修や書籍費等に重点を置くべきである」

いっそ、報酬に上乗せしては

政務活動費は使いにくいから、全部報酬にしてほしいというのは50代の男性議員です。
「政務活動費は使途に制限があり、使いにくくそのチェックに議会事務局職員の職務に対する負担も大きいことから、議員報酬を引き上げ廃止することも考えるべき」

議員にも経費を認めれば、報酬だけでもいいのではないかと60代の男性議員は提案します。
「政務活動費が問題視されているが、私は余りにも曖昧すぎると感じている。それよりも、報酬を増し、経費を税法上、認めるべきと思います」

50代の男性市議は、なり手不足の解消につながる方に回すべきだと。
「私見としては、政務活動費は廃止しその分報酬を上げるべきと考えます。そうしないと若い人が議員をやっていく環境にはならず、優秀な人材の確保ができなくなります」

いや、報酬よりも政活費だ!

60代の男性議員は、使途を明確にするためには政務活動費のほうがいいと指摘します。
「使途が議員報酬の使途は、報告義務がない。しかし、政務活動費は、領収書の写しを添付して報告し、残金は全額市へ返還する。申告の内容は、議会事務局がチェックし、後に公開される。市民に見える政務活動費を、もっと充実させるべきである。増額すべきは議員報酬よりも政務活動費ではないのか?これにより、各議員の活動内容が市民にある程度見えてくる」

やっぱり使い方、おかしいぞ!

そんなことを言っても、使い方がおかしいケースがまだまだある、という声も相次ぎました。
「政務活動費の不適切使用をした議員が居すわっている」(50代議員)
「政務活動費は有効につかっている議員とそうでない議員と二極化されている」(50代女性議員)
「権利ばかり主張し、責任はとらない。政務活動費は公費である事を伝えても理解して頂けない」(50代男性町議)
「政務活動費の使途をもっと厳しくすべき」(50代男性議員)

70代の女性議員の指摘です。
「会派によっては、政務活動費はほとんど視察に使っているが、その実態は観光旅行のようなものである」

ある男性議員も、こんな事例を明らかにしています。
「毎回の議長就任の通知に、(就任祝いの?)参加費の領収書が参加の有無にかかわらず同封されている。金銭感覚が全く無い。政務活動費の違法が出るのは当然である」

問題のある使い方が横行していると、別の議員もいいます。
「政務に当たらない費用に平気で使うなど議会事務局職員の指導をも無視し、責任も取らずに啖呵を切るなど手におえない始末です。また、レシートをごまかし酒代などに支出する議員もいる」

ある議員は、不適切な使用を指摘したら、ほかの議員が使わなくなったと。
「政務活動費は全て現物の領収書を必要としている。他の議員の、不適切な使用と思われる部分が少々あったため、改善するよう指摘したところ使わなくなった。残金があれば全額返納することとしている。ちなみに、昨年度全額使用した議員は一人であった」

ルール作りを

50代の男性議員は、ルールを見直すべきだと。
「政令市など、政務活動費を多く支給されている層で不適切な事がおきると、すべての下層まで同じ様に見られる、もう少し、政務活動費のあり方を地方議会として考えなければならないと思う。議員報酬だけですべての活動は(現在の)できないと思うので、政務活動にあてる物は必要だが、明白になる様に全国の地元でしっかりと改めて、ルール作りを見直すべきと思う」

全国共通のルール通が欲しいと、40代の男性県議は要望します。
「政務活動費について、議会で定められたルールのもとで使っていても、オンブズマンからの指摘によって、不適切と訴えられ、困惑している。全国共通の明確なルールを定めるとともに、必要であれば、外部監査などによって、年度毎にきっちりと決算できる仕組みにする必要がある」

60代の男性市議は、議員に直接手渡さなければいいと。
「政務活動費についても以前より議員個人の手に渡らない仕組みになっており、不正の余地は一切ない」

後払いにしよう

70代の男性町議は、後払いにする必要があるといいます。
「地方議員については、政務活動費について一部の議員の不正等によって、国民の議員に対する不信感は大きい。領収書の提出は当たり前の事と思います。活動費は前払となっておりますが、後払方式に変えるべきと考えます。前払方式ですと、無理をして消化する考えが生じると思います。月数十万円の活動費(県議、市議)は消化する事は無理があるのでは(使用が制限、範囲ある)ないでしょうか」

月ごとに限度額を決めて使った分を払えばいいと、60代の男性町議は提案します。
「使った分だけを月額限度額等設けて実施すればクリアなこと明白。政活費制度は活発な議論には必要なことであり、全国的にはなくさないでほしいし、当町でも是非創設してほしい」

開示、開示とうるさい

こうしたなか、情報公開について厳し過ぎるという議員がいました。

「政務活動費の開示がうるさすぎる。情報公開は必要だが、余りに厳しすぎるし、議員はそれ程悪い人間は少ない。見えないところで市民のため、努力している。信用してほしい。基本的に議員本人は奉仕の心だ」(60代男性市議)

「雑用が多過ぎる。秘書もなしに政務活動費報告書(1円まで領収書添付)ばかげてる」(70代男性議員)

使途をネットで公開、は当然!

その一方で、全ての領収書をネットで公開するのは当然だという意見が相次ぎました。

「議会の情報公開をさらに進める。政務活動費の使途報告、使途基準の明確化。1円から、領収書もすべて、ネット上でアップ」(60代男性議員)

「政務活動費は絶対必要。もちろん100%使途公開が前提。議員報酬は抑えてでも、活動する議員を支えてほしい」(70代男性議員)

「先進地調査などに政務活動費を利用するのであれば、日程、費用、調査内容を、無条件で公表すべきと考える。※私は、政務活動費及び、選挙公営制度は使用していません」(50代男性議員)

60代の女性市議は、世論が高まっているいまこを公開をと。
「政務活動費の領収書公開を一貫して主張してきたが、当初は他会派が反対していた。不祥事が明らかになって世論が高まり他会派も賛成し、公開することになった」

公開したら妙なことが…

50代の男性議員は、ネット公開を始めたら奇妙が現象が起きたといいます。
「政務活動費について、平成29年度分からインターネットで公開をはじめました。
清算で不思議な現象が生じました。27、28年度分と比較して、29年度分の返還額が大きく増加するというものです。想像ですが、28年度までは使用していたものを、29年度の公開に合わせて、自粛したのではないか?というものです。
27年度分のうち、ある会派の資料を閲覧しましたが、要綱とのかい離、こじつけと言えるもの、契約書とは言えないような契約書、契約者と領収者が違うものなど、理解ができないものが散見していました」

チェック機関の設置を

70代の男性市議は、いくら使ってもいい代わりに審査会を設置しようと提案します。
「政務活動費は上限をなくすべきだ。政務活動費審査会を設置し、活動費の領収証を審査し、パスしたものを後払いとする」

60代の男性議員は、事務局にチェック権限を与えるべきだと。
「近年、自治体議員による政務活動費に関わる不正が問題になっている。もっと議会事務局が積極的に関与したらどうか。当選した時点で使い方のルールについてしっかりと研修しておくこと。不正な使い方ができるようなシステムを、また、議会事務局にチェックする権限を与えたら良い。領収書の公開は絶対の原則」

でも、提言するとひどい目にあう

しかし60代の男性議員は、問題点を指摘できないと、諦めの気持ちのようです。
「それぞれの市により、政務活動費は使用制限があり、我が市は会派支給ですので、議員個人で使うことが原則できません。研修会や他市への行政視察等の往復の交通費と宿泊代、そして講座受講費用(他に民間施設視察費用等)を考慮すると、せいぜい県内視察も含め、年2~3回程度しか視察や勉強ができません。一方で毎日の様に使い使いきれず、『いやいや』消化視察や講座に出かける議会や議員も居られるということです。
そんな課題や問題があるなら、議会や町内集会などで質問や提議すればと思われるのでしょうか?それこそ、お笑いの種で、地域のひんしゅくを買うのが関の山で、次回の選挙では苦戦を強いられるか、落選を覚悟しなくてはならないでしょう」

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寄せられた声をもとに、記事は随時更新していきます。一旦、集計は終了しましたが、ご意見は今後も参考にさせていただきますので、まだ回答されていない議員のかた、お待ちしております。
また、議員の方だけでなく、読者の皆様にも、地方議会の課題についてのご意見をいただきたいと思います。下の画像をクリックしていただけると、「ニュースポスト」が開きます。そちらにぜひ、「議員アンケートについて」などと書いて、投稿をお願いします。

【全議員アンケートについて】
NHKは、今年1月から3月にかけて、全国1788の都道府県・市区町村の議会と、所属する約3万2000人の議員全てを対象とした、初めての大規模アンケートを行いました。議員のなり手不足など、厳しい状態に置かれている地方議会の現状を明らかにし、「最も身近な民主主義」である議会のあり方について、有権者一人一人に考えていただく材料にしてもらおうというのが趣旨です。
約60%にあたる1万9000人余りから回答が寄せられています。集計結果をもとに、テレビ番組や特設サイト、そして週刊WEBメディア「政治マガジン」などで、統一地方選が終わる4月末にかけて「議員2万人のホンネ」と題したキャンペーン報道を行っていきます。4月27日(土)には、午後9時から「NHKスペシャル」の放送を予定しています。

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