NSが、こわいんです
~2万人議員アンケート

日本には「地方議員」が3万人もいることをご存じですか?
今回、その全員に初めてのアンケートを行いました。回答してくれたのは2万人近く。NHKでは1か月にわたって、そのホンネを伝えるキャンペーンを展開します。

国会では以前、桜田五輪相が「自分でパソコンを打つことはない」と発言し、海外でも報道されました。SNSが全盛のなか、地方議会ではどうなのでしょうか。

パソコン、使えない議員も

「去年の改選で30代議員が2人当選し、平均年齢が若くなりました。その議員がIT機器を持ち込んで議会で使っています。これからはIT機器の時代になるのでしょう。勉強しなくてはと思っています」(60代男性町議)
なるほど、これからは議会もITだと。

「パソコンもできない議員が半数以上いる」(60代男性議員)
やはり使えない方もいらっしゃるんですね…

「政務活動費がない、議員用のPC・プリンターがない。1台あるが規制がある」(60代男性議員)
そもそもパソコンがないぞ、と憤っています。

でも、タブレットなら…

「タブレット議会を実現したい」(50代男性町議)
議場でも使えるタブレットを導入する議会は、増えていますよね。これならパソコンより敷居が低いのでは…

「ペーパーレス化でタブレットを導入しても高齢議員は使えない」(40代男性議員)
そういうかたもいらっしゃると。

「タブレット端末導入の協議をすゝめているが、手段が目的している。時代を反映した電子機器を用いることに違和感は持たないが、費用対効果は?庁内全体の文書管理の軽減につながるように研究している」(60代男性議員)
買えばいいというものでもないので、有効に利用できるように。

「ペーパーレス化でタブレットを導入しても、アダルト動画をみたり競馬サイトを見たりして事務局に注意される人もいた」
いやそれはいけませんね。

SNSは「ちょっと違う」

自らの議員活動を、SNSで発信する議員も増えてきました。しかし、ちょっと違う、という声も。

60代の男性市議は、本末転倒になっていると指摘します。
「各種行事に参加している事をSNSなどで発信している議員が議員活動をよく行っていると、市民もかんちがいしている。SNSで発信することが議員の仕事になっている。市議会議員であるならば市民の考えを聞いて議会活動行う必要がある」

住民とふれあうことのほうが大事、と70代の男性議員はいいます。
「インターネット等の発信もいいが、表面的政治活動を私は好ましいとは思わない。住民と直接話せる議会活動を心がけています」

50代の男性議員は、いっそなくなってしまえ、と。
「非現実的でありますが、いっそのことインターネット配信やSNSが全くない状態になったときに、それぞれの議員がどんな活動をしているのか逆に丸裸にされ、もっと市民に触れ合う機会が増えるのではないかと思っております」

いやSNSこそ現場の声を、と

意識改革を訴える50代の女性町議は、SNSがあればこそ、町民とふれあえたと。
「災害時においても、議員が口出しするべきではないとか、被災者に対しても、議員の知り合いであるかどうかで、公平でなくなから、そっと見守るだけで良いなどと言う議員がいる。住民代表であり、住民の代弁者であるとの自覚がない。避難所に行っても職員と話するだけで、被災者の声に耳を傾けようとしない。理解に苦しむ。私は、心ある数名の議員と、被災者のもとに訪れ、多くの声を聞き、災害対策本部に届け、避難所の環境改善に取り組んだり、また、SNSを使い町民に、情報発信を続けた。今こそ、議員1人ひとりの意識改革が必要である」

40代の女性市議は、むしろSNSがないと市民とつながれないと。
「地域で公益的な活動をする市民は増えており、SNSの進展でそうした市民たちがつながり力を持つようになっている。そうした流れと、議会がズレている。社会の変化に議員の新陳代謝が追いついていない」

議会のことを分かりやすく伝えるためにも有効だと、40代の女性市議は説明します。
「過去4年間については、チラシやリーフレットといった紙ベースの情報発信からSNS中心の情報発信に切り替えたが、今後は紙ベース+インターネット(SNSとホームページ)という複層型の情報発信に努め、その内容も平易な言葉で分かりやすいものにしていくことを心掛けたいと思う。
更に議会改革の一環として、本会議インターネット中継にはいち早く取り組んだものの、議会報告会の実施の開催については後ろ向きであった。これまでの議会運営委員会での取り組み経緯を検証しながら、広報誌である『市議会便り』の抜本改正、ホームページの刷新といった市議会の広報公聴活動に力をいれていかなければならないと考える」

40代の女性議員は、少々辛辣(しんらつ)です。
「SNS発信も、できる人を妬みすぎ。堂々と妬むな。恥を知ってほしい」

40代の男性市議は、説明責任を果たしたいといいます。
「議員はSNSを使うなどして活動報告をしっかりとする必要があります。この地域で有権者の方がよく言われるのは、『選挙が近くなると、市を良くしますので、応援よろしくお願いします、と言われるけど、選挙が終わったら、4年間全く何の音沙汰もない』ということ。議員が責任ある仕事をしていることも、その仕事自体が魅力的なことであることも、まったく市民に伝わらない。これじゃ、だめですよね」

アンケートの結果では、「インターネット・SNSの情報発信」を「頻繁に実施」「ある程度実施」している議員は、3人に1人となっています。

SNS怠るとサボっている!?

それでも、やはり人によると40代の議員はいいます。
「SNSやブログで立派なことを言いさえすれば、議場でどんなとんちんかんな質問や質疑をしていたとしても、有権者には『きちんと仕事をしている』と判断されてしまうのが、残念でならない(反対に日頃忙しく動きまわっていても、SNSやブログの発信が日数があいたりするとサボっていると思う有権者がいる)」

60代の男性市議は、自分の性に合わなかったといいます。
「SNSは選挙のためにもやらなければならないと思い、できるようにしたが、ネット上でのひんぱんな市議の投稿内容を見て、いかにも人気取りパフォーマンス的文章に嫌けがさして、実行していない。他人は他人、自分は自分とわり切って踏み出さなければ…」

60代の男性議員は、結局は、使う議員の資質によるのだと。
「SNSもよしあしである。自分の考えや議会活動のようす、成果を発表するのなら大変意味があるが、耳当たりのいいことばかりのアピールで、中身の無いホームページである議員もいて、大変なげかわしく思う」

それでも、やはり伝わらない

30代の男性議員は、SNSの発信力を評価しています。
「自分が思っている以上に市民の方々は議会だよりやSNS等を見て下さっていることが多く、非常にやりがいのある仕事と実感しています。3期12年務めさせていただいていますが、こんなに楽しい仕事はありません」

しかし、それでもSNSは万能ではありません。議会のネット中継と同様、なかなか関心を持ってもらえない、という声も相次いでいます。

40代の男性市議は、市民との温度差を感じています。
「議会は様々な形で議会改革に取り組み、市民の皆様に興味を持ってもらえるようにしているが、大変温度差を感じる。議員がなにをやっているか、SNS、市政チラシ、報告会で発信しているが、なかなか伝わらない。まだ努力不足か‼この温度差をうめていきたいと思います」

50代の男性議員も、広がりがないと。
「地方議会、議員活動などに対して無関心な方の割合が非常に高いように感じます。様々な情報発信を議員みずからがしていくことも重要だと思いますが、SNS等で発信しても一定の範囲内での拡がりにとどまっているように感じます」

SNS、別の意味でコワイ

最後に、SNSが別の意味で怖いという声をご紹介します。

60代の女性議員は、対応に苦慮しています。
「市民が議会に関心をもち、きびしく見られているので、活動が難しく感じる時がある。SNSについていけない。何でも議員に話せばできると思う人が多いため、対応がむずかしいと思う時があります」

60代の男性議員も。
「ネット、SNSなどであまりにも議員に対しての誹謗中傷が多すぎる」

50代の男性県議も、議員のあり方そのものへの影響を懸念をしています。
「メディアやSNSの影響により委縮している。正々堂々とみずからの主張を貫く議員が減ってきている。明日の政策を考える「政治家」よりも明日の我が身(=選挙)のことばかり考える『政治屋』が増えてきている。両方のバランスのとれた議員が生まれにくい風土になりつつある。パフォーマンスに走る若手議員も増えている。政策のバックボーンがなく、ポピュリズムに流れていて、首尾一貫しない行動が目立つ」

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寄せられた声をもとに、記事は随時更新していきます。一旦、集計は終了しましたが、ご意見は今後も参考にさせていただきますので、まだ回答されていない議員のかた、お待ちしております。
また、議員の方だけでなく、読者の皆様にも、地方議会の課題についてのご意見をいただきたいと思います。下の画像をクリックしていただけると、「ニュースポスト」が開きます。そちらにぜひ、「議員アンケートについて」などと書いて、投稿をお願いします。

【全議員アンケートについて】
NHKは、今年1月から3月にかけて、全国1788の都道府県・市区町村の議会と、所属する約3万2000人の議員全てを対象とした、初めての大規模アンケートを行いました。議員のなり手不足など、厳しい状態に置かれている地方議会の現状を明らかにし、「最も身近な民主主義」である議会のあり方について、有権者一人一人に考えていただく材料にしてもらおうというのが趣旨です。
約60%にあたる1万9000人余りから回答が寄せられています。集計結果をもとに、テレビ番組や特設サイト、そして週刊WEBメディア「政治マガジン」などで、統一地方選が終わる4月末にかけて「議員2万人のホンネ」と題したキャンペーン報道を行っていきます。4月27日には、午後9時から「NHKスペシャル」の放送を予定しています。

アンケートの集計結果はこちらから。
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