方か敵か、議会事務局
~2万人議員アンケート

日本には「地方議員」が3万人もいることをご存じですか?
今回、その全員に初めてのアンケートを行いました。回答してくれたのは2万人近く。NHKでは1か月にわたって、そのホンネを伝えるキャンペーンを展開します。

前回の記事では「秘書が欲しい!」という地方議員たちの声をご紹介しましたが、その中には「秘書が雇えないなら、議会事務局の強化を」という声がありました。議会事務局というのは、自治体の議会に関わる事務を行うセクションで、自治体の職員が事務局員を務めます。議員をサポートする存在でもあります。今回は、議会事務局や、議員を支える機能についての声です。

とにかく人数を増やして!

40代の女性議員は、1期目の感想としてこのように記しています。
「困ったことは事務局に相談すると、すぐに対応してくれる」

議員から頼られる存在ですが、体制強化を求める声は、多数見られました。
「議員を支える事務局体制の充実強化(現行2名体制・資質含む)不可欠な要件と思う」(70代男性議員)
「議会事務局の定数を増やすべし。議会強化に繋がる」(70代男性県議)
「議会事務局員も4名と、シンクタンクとしての機能を果たせるレベルにはない」(30代男性議員)

ある女性議員は、小さな自治体ほど事務局の役割は大きいといいます。
「小規模自治体は特にマンパワーに欠ける。特に議会事務局職員の役割は重要である。議員の資質向上と議会力UPに議会事務局職員の果たす任務は大きいと痛切に感じる」

事務局が多忙すぎ!

70代の男性議員は、現状では過重労働になるのではと心配しています。
「議会事務局の職員が少なく、仕事量が大変である」

人数の基準が必要だというのは、60代の男性議員です。
「議会事務局職員が多忙過ぎる。また、市町村で職員配置に格差がある。一定の配置基準が必要」

今回のアンケートでは、「議会担当の職員には同情する部分がある」という質問で、「とてもそう思う」「ある程度そう思う」と回答した議員が、合わせて60%以上にのぼりました。

事務局が何もしてくれない

議会事務局の体制が十分でないことで、影響が出ていると60代の女性議員はいいます。
「議会の事務局職員数が足りなくて、議員への情報提供など、手薄と感じます」

ある男性議員は、議員になった後の手続きに不満があったようです。
「議員になり与えられたもの=バッチと議員必携(注:地方自治や議会活動について解説した本)だけ。名刺は、と議員事務局に行けば、ご自身で作成してください。コピーは、コンビニで印刷せよ」

いや、お世話係じゃないぞ!

一方、80代の男性議員は、違う意見です。
「議会事務局へ頼り過ぎ、職員が可哀そう」

50代の女性議員は、議員側の態度がおかしいと指摘しています。
「議会事務局職員に『お茶、コーヒー入れて』と上から目線で注文し、飲み終えたカップ、菓子のゴミ、ペットボトルの飲みかけを散らかしたまま帰る。自分のゴミくらい自分で片付けるのは子どもでもできることなのに片付けをしない。議会事務局職員は議員のお世話係ではない。志を共にする職員を部下のように雑用を頼むのはどうかと思う」

議員が勘違いしている、というのは50代の女性議員です。
「議会事務局職員や役場職員への、会議中の横柄でぞんざいな口のきき方や威圧的な態度をとる議員がいることに驚いた。何を勘違いしているのかと思った」

政策の立案には必要なんです

政策提言をするためにこそ、事務局の強化が必要だという意見が相次ぎました。
「政策立案能力を高めるための事務局の強化」(60代男性県議)
「議員提案・議案を増やすため、議会事務局の充実・増員をはかるべき」(70代女性議員)

「本来の議員活動を充実させるため(政策の立案など)議会事務局の職員を増やすべきと思います」(60代男性議員)

60代の男性議員は、議会のあり方に関わるとしています。
「二元代表制の下で、住民代表機関としての議会の役割は重要であると思う。しかしその重責を果たしていくには、議会事務局充実が大事である。議会が独自に政策や修正案を出せる体制が必要と感じている」

なり手不足解消にも役立つ

50代の女性議員は、なり手不足の解消にもつながるといいます。
「なり手不足の解消では、議会事務局の調査機能と充実が必要かと思います。議案の理解のための資料や政策提案のための調査など、議員がやらなければならない事を担う事務局体制があれば、日中は本業で、夜土曜日曜は議会ということも可能ではないかと思いますので、やっていい人が増えるのではないでしょうか」

そもそも専任の職員がいない状況をどうにかしようと、40代の男性村議は動き出しています。
「将来的な議員のなり手不足が懸念されるため、私たちの議会では議会のあり方研究会を立ち上げた。報酬や政務活動費、定数に関することや、専任議会事務局員がいないことの問題など検討項目として挙がっている。まずは議員一人ひとりのやる気が住民に伝わるようでないと、次に出る候補はないと思う」

事務局員も勉強を

そのためには、と60代の男性議員の声です。
「議会事務局の職員も条例提案の勉強をしてほしい」

別の60代の男性議員も、サポートのために必要だと主張します。
「事務局員が優秀であれば、議員のサポートが十分できる。資料集め等とても助かる。執行部の議案に対して議員が検討する時間がないケースが多い。事前に提案する議案と、そのための資料と説明をしっかり聞き、取り組みを十分理解したい」

70代の男性議員は、議員と事務局員がともにレベルアップすべきだと。
「政策提案はできるが条例提案はなかなか難しい。議員自身の勉強と事務局の体制・能力向上が必要」

事務局の人事が重要

そもそも、職員を配置する人事が重要だと60代の男性議員は主張します。
「議員を支える議会事務局に優秀な人材を確保し、議会機能の向上を図ることが大変重要です」

60代の男性市議は、人事異動があるので人材が育たないといいます。
「議員をサポートする議会事務局が弱体化して、また市長部局と同様の人事異動等があり、人材が育ってない」

60代の女性議員は、事務局長の態度がおかしいと。
「事務局長が『議長に気に入られてナンボ』と公言してはばからない」

首長・行政寄りでおかしい

70代の男性市議は、こうした人事のあり方によって、事務局が行政寄りになっていると指摘します。
「地方議会は二元代表制といわれながら、現実は首長の権限が強く、思うような活動ができない面を強く感じている。身近に感じている事の一つに議会事務局員の人事がある。人事権は首長にあり、局長の人事でさえ議長に事後報告であり、職員の関心は常に執行部の方に向いている様におもう。また、小規模な自治体では人員の配置が少なく、政策立案に対する知識がなく議員だけでは困難な事が多い(法務担当がいない)等がある」

60代の男性議員は、首長の手先だと憤っています。
「議会事務局職員が市長側の手先となっているように思える。議会全体のために働くというより、市長側に立ち、議論させないようにしている」

70代の男性議員も、事務局が活動を制限しているといいます。
「議会事務局が議員活動を執行部寄りになるよう制限し、議会を価値あるものにしようとしない」

職員の立場がそうさせるのだ、と60代の女性市議はいいます。
「国の三権分立に比べて、行政からの独立性?を考えることがあります。議会事務局の職員は、市の職員であり、政治判断が必要な場合でも、理事者(注:議会で説明する行政側の人)に都合の良いやり方を主張されることがあります」

事務局を独立させよ!

こうした状況から、事務局が行政側に影響されないようにすることが重要だと、70代の男性議員はいいます。
「議会事務局員は町の職員ではなく独立職員とすべき」

事務局長は特別職にすべきだ、というのは50代の男性議員です。
「議会の強化のためには議会事務局長を特別職とする等して、執行機関からの独立をはかる必要があるので地方公務員法、地方自治法などの法改正が必要であると考えられる」

30代の男性議員は、専門性の高い職員を独自に採用すべきだという意見です。
「議員がやりたい政策を実現するためにアドバイスをしてもらえる人材、例えば法務や例えば法務や予算の専門の事務局職員を配置したり、もっと情報公開するために事務局職員を増やす必要がある。その際は職員からの出向ではなく、事務局独自で採用するほうが二元代表制の観点から望ましい。執行部は巨大なシンクタンクであり、議会の側も、内容、能力的に対抗しうる体制を整えなければ議員自らが政策立案や、条例制定する度合いを上げることは現実的に難しい。二元代表制のパワーバランス的に議会の側は圧倒的に不利である。情報公開についてももっと進めたいが議事録の文字おこしをしたり、事務的業務に対応する人員が足りず、また予算の関係もあり、設備投資も難しいことから委員会の動画や議事録の公開などができていない」

採用方法を変えてしまおう

50代の男性議員は、一般公募できないかと考えています。
「議会改革は事務局の改革とし、『議会の事務局』としての立場の明確化が必要です。役場の職員(ベテラン)が当たる場合、議員へのアドバイスが『議会の立場』でできるか。一般から募集することはできないが検討すべきではないでしょうか?」

60代の男性議員は、広域で採用してはどうかという意見です。
「議会事務局の職員は教員や警察官の様に都道府県の採用で郡単位(広域)での任用し、専従とすべきではないかと思う。現行制度では市採用の職員が事務局に配属されるので市長や部局への配慮があり、議会優先とならない状況も生じやすい」

とはいえ、独自採用のための予算がない、というのは60代の女性議員です。
「議会事務局職員が市の職員であり、人事異動も行政中心である。法制担当や事務局職員を独自に雇用するための予算がなく、二元代表制でありながら議員をサポートする体制ができない」

議会に人事権があればいいのではないか、と70代の男性議員は提案します。
「議会事務局への人事権、人数を議会で決定できる制度の導入」

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以上、「議会事務局」についての自由記述を紹介しました。

寄せられた声をもとに、記事は随時更新していきます。一旦、集計は終了しましたが、ご意見は今後も参考にさせていただきますので、まだ回答されていない議員のかた、お待ちしております。
また、議員の方だけでなく、読者の皆様にも、地方議会の課題についてのご意見をいただきたいと思います。下の画像をクリックしていただけると、「ニュースポスト」が開きます。そちらにぜひ、「議員アンケートについて」などと書いて、投稿をお願いします。

【全議員アンケートについて】
NHKは、今年1月から3月にかけて、全国1788の都道府県・市区町村の議会と、所属する約3万2000人の議員全てを対象とした、初めての大規模アンケートを行いました。議員のなり手不足など、厳しい状態に置かれている地方議会の現状を明らかにし、「最も身近な民主主義」である議会のあり方について、有権者一人一人に考えていただく材料にしてもらおうというのが趣旨です。
約60%にあたる1万9000人余りから回答が寄せられています。集計結果をもとに、テレビ番組や特設サイト、そして週刊WEBメディア「政治マガジン」などで、統一地方選が終わる4月末にかけて「議員2万人のホンネ」と題したキャンペーン報道を行っていきます。4月27日(土)には、午後9時から「NHKスペシャル」の放送を予定しています。

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