の議員…この人、
大丈夫かな?

日本には「地方議員」が3万人もいることをご存じですか?
今回、その全員に初めてのアンケートを行いました。回答してくれたのは2万人近く。NHKでは1か月にわたって、そのホンネを伝えるキャンペーンを展開します。

さて、今回は「居眠り」「質問しない」など、困った議員の行状や、議会の実情を一挙に紹介します。

居眠りは当たり前!?

「議会本会議場で、居眠りしている議員がいる。残念でならない」(60代男性議員)
「ベテラン議員の中には居眠りをしていたり、議案質疑もする事なく、一般質問も市職員に作ってもらっている議員がいる」(60代男性議員)
こうした声、相次ぎました。

今回のアンケートでは、「居眠り議員は許せない」という質問に、「とてもそう思う」「ある程度そう思う」の回答が、80%余りにものぼっています。

40代の男性議員は、居眠りどころじゃないと憤ります。
「レベルが低い。居眠りは当り前、会議の欠席が多い人もいる。議案書や書類が読みこめない人、議場に置きっぱなしの人もいる」

60代の男性議員は、市民も監視すべきだと考えています。
「議会中は居眠り。議案書を持ってこない、持ってきても開かない。開いてもどこを開いていいのかわからない。委員会の質疑発言は皆無。委員会視察に不参加。会議を忘れて欠席・遅刻。このような議員に投票した市民は、送り出した議員をしっかり監視していかなくてはならないと思います」

居眠りには理由がある、という50代の男性議員です。
「居眠りですが、一般質問の場合ですが、各議員が議題をつくり通告して持論を展開するので時々的外れや認識違いの内容のものがあり、黙って聞いているのが辛い時がある(居眠りしてしまうこと…)」

「居眠りしない」を公約に!

60代の女性議員は、許せないことがあったと明かします。
「代表質問に立った際、議長と私を除いた議員のうち8割近くが居眠りをしていた。次の統一地方選で、『当選したら居眠りをしない』と公約させるべきである」

居眠りだけでなく、発言しない議員も問題だと、70代の男性議員は指摘します。
「議会で居眠りばかりしている議員1名と、全く発言しない議員がおり、何故このような人が議員として存在できるのかわかりません。税金ドロボーといわれても、そのとおりだと思います。当人は何とも思っていないようだ。この様な人を見抜けない住民が一番悪いと思います」

全く質問しない議員がいる!

発言しない議員について、驚くべき記述も見られました。

「会議で一般質問を4年間まったくしない議員がいること。質問もとんちんかんが多かったりと勉強しない議員が多い」(70代女性議員)

「初当選から何期も当選している議員の中に、一度も議会で質問をしていない人が何人もいる。市民の代表で、質問や意見を議会で発するために、議員になっていることを自覚してもらいたい」(60代女性市議)

「議会での質疑や一般質問、委員会での発言をまったくしない議員もおり、限定された議員だけに役職が回ってくる」(70代男性議員)

質問どころか、いなくなる議員もいると。

「ご自分の都合で、議会中退席される議員がいらっしゃる」(60代女性議員)

「本会議をいつも休む議員がいます。家業優先で遅刻する議員もいます。議場に携帯電話は禁止なのですがマナーモードにもせず 着信音が…信じられないくらい堂々と居眠りしたり。選挙で当選したならば、しっかり有権者の代表として仕事をして欲しいです」(60代女性議員)

ベテラン議員になると、発言が減る傾向があると、60代の男性議員は憤ります。
「当選回数を重ねるごとに、一般質問等、議場での発言回数が減っている議員が多い。こうした認識を改めない限り、地方議会は良くならないと考える」

暗黙のルールがある

議長を経験すると質問しなくていい、という変なルールがあると女性議員はいいます。
「同僚議員の中でも一度も質問しない議員がいるのが不思議です。報酬だけもらっている人が数人います。議長を経験すると質問しなくてもいいという人もいるが、誰がこのようなルールを作ってしまったのか…あきれるばかりです」

70代の男性議員も、暗黙のルールは存在すると。
「暗黙のルールがあり、新人議員にそれを教えず、ルール違反だと言ってやり玉にあげる」

40代の男性議員も。
「地方議会では先例や申し合わせと言った決め事、議長をはじめとした役職の専任などについて、議会内だけのルールや考えが存在しています。まさに、議会のジョーシキは市民の非常識といった状況もありえる状態です。劣化コピーが繰り返されているのが、今の地方議会にあるのではないかと思います」

アンケートでは、「暗黙のルールが多い」という議員は、「とてもそう思う」「ある程度そう思う」を合わせて40%余りとなっています。

議会なのに議論を避けてる!?

60代の男性議員は、議会なのに、議論を嫌がる雰囲気があるといいます。
「議案に対して、または報告承認等に対する『賛否』討論を避けたり、嫌がる雰囲気と慣習があり、反対討論があるのに賛成討論が出ずに可決したり、議会制度を理解しようとしない議員が一部いて困っている」

議員どうしで討論しない

ある議員は、議員間の討論が少ないことが問題だと指摘します。
「『議員間討論』はほとんどない。更に、常任委員会での発言が制限された。また、本会議での『討論』も時間を1人20分に制限された。
多数派の議員は『民主主義は多数決』で決まるというが、本来は少数意見を尊重することが礼儀であり、そうでなければ『数は力なり』という無節操な状況が生まれてしまい、正しい意見を発言する少数派意見を封鎖している」

60代の男性議員も、機会が少ないと。
「議員間討論など、議員同士の活発な意見交換の場を、もっともっと増やしていただきたい」

そもそも議論する能力がない!?

いや、そもそも議論する能力がないのだ、というのは70代の男性議員です。
「議案の採決の時の賛否の討論を自分の考えでできない人が90%居る。自分達で説明を聞く論議したものに対し、理由を付けられない。担当職員に書いて頂いたものを棒読みして討論している。これでは何時になっても成長できない。反対に対しての自分の賛成する理由を言えばよいのにできない」

「おっさん議会」はセレモニー

50代の女性市議からは、痛烈な言葉が。
「国会もそうだが、女性が少ない『おっさん議会』が地方議会の現状である。議員は『市民の代表』なのだから議会は多様な人々の集まりであるべきだが、上記の理由で多様性に欠ける。『円滑な議事進行』を優先するばかりに質問や討論時間を削減したり、議会がセレモニー化、形骸化している」

市民の声を聞きたがらない

市民の声を聞くことにさえ否定的という状況を、60代の男性議員は疑問に感じています。
「議会はスムーズな進展が第一。議会内外での討論は一切ない。討論したいという意識もない。市民との対話にも消極的。市民から多くの要望が出るので、やめようという声が主流。何のために議会なのか、だれのための議会なのか疑問に思うことが多い」

市民からの声も寄せられない、という男性議員も。
「『市民参加条例』も形骸化しており、市民から直接意見を聞く『パブリックコメント』も寄せられる意見はほとんどゼロか数件程度です。
議案の審議も形式的なものとなっており、実のある審議、議論もほとんどなし。野党的立場の議員の一般質問に対してもはぐらかし、ごまかし、いなおりの答弁ばかりで議会軽視がはなはだしい。
市民アンケートの結果も無関心、不信が増えていて議会不要論まで出ている。
市民の信頼をとり戻し、議会としての働きを正常なものにするために、議会改革の早急な実行が求められている」

会派が恣意的に

こうした状況の中、多数派が恣意的に議会を動かしていると懸念する女性議員もいます。
「最大会派になると、周りの会派をバカにして、議会人事など、すべて思い通りに進めてしまう。話し合いが全くない。特に女性に対しては女性蔑視で、対象外という古い考えがあり、男女平等が進んでないように思う。まだまだ男社会です」

60代の男性議員も、現状を嘆いています。
「多数派ですべて進行されており、議会としての役割がまげられている
議員の中には自分自身の考えのない議員やまったく勉強しない議員がおり、はずかしい。金魚のフン的議員がおり、はずかしい」

40代の女性議員は、少数意見をもっと聞くべきだと。
「何でも多数派の意見が正しいと思っているのはまちがいと思う。少数意見だけでなく、“意見を言わない人”“現状のままが良い人”の意見もひろうべきだと思う。多数の意見が、その町にとって良い方向とはかぎらないので、意見に反しても“何がよいか”をもっと考える必要があると思う」

議員の「ボス」が人事を

議会に「ボス」的存在がいると指摘する議員もいます。
「議員に『ボス』が生まれ、彼が執行部とグルになって議長などの役職を決め、それを選挙せずに押し付けてくる。反対するといじめられる。発言を封じられる」

人事が壟断(ろうだん)されていると、50代の男性議員もいいます。
「議長、副議長、委員長の役割と権限を知らないままポストにこだわっている議員が多い。また、人事権を有する議員がボス的存在になり、新たな議会制度への改正をはばんでいる」

60代の男性市議は、この状況を「猿山のボス争い」になぞらえます
「会派でグループを組む最大の目的は、議長、副議長、委員長などのポストを自分たちで取ることであって、政策実現などではないというのが現実です。議長になれば報酬が加算され、肩書きも手に入れることができますが、それが欲しくて議長選挙は毎回『サル山のボス猿争い』のような状況になってしまいます。ポストとは縁がない、少数会派の議員からすれば、うんざりするようなことばかりです。ポストによって加算される報酬は、すべて廃止し、お金目当てではなく、議会のために活動したい議員が議長にならなければ、今後も、この停滞した状況は変わらないように思えますが、変えるのは難しいのが現実です。市議選では、新人の候補者が出るような話をまだ聞きませんが、市議会の問題体質が、市民に広く知られてきたため、議員になりたいと思う人がいなくなってしまったのかもしれません」

60代の男性議員も、ボスの存在を危惧しています。
「企業のブローカー役をする議員がおり、議会の品位をおとしめるボスが存在しており、正論が通らない」

別の「ボス」問題もあると、50代の男性市議が。
「市議は『地域のボス』的な存在が多く、市全体を見る方は少ない」

高齢化が進むと…

60代の男性町議は、高齢化の影響が出ていると。
「議員の高齢化が進行し、考え方が保守的である」

バランスが悪く、改革を進めたくても難しいと40代の町議はいいます。
「中間世代(30~40代)の町民が、議会に関心があっても報酬が少ないために立候補できないという声をよく聞きます。議会自体も高齢化してきて、半数が70代になるような状態で、前回選挙も無投票。1番若いのは40代半ば。各世代の代表がほしい所です。選挙があっても、ほとんど入れ替わりもなく、という感じです。議会改革を進めたくても反対する議員が多いので、何も進まずというのが現状です」

公約を忘れている!

70代の男性議員は、公約を忘れてしまっていると指摘します。
「議員も首長も選挙時の公約を忘れている人が多い。特に公約を実現できない理由を、国、県の方針だからとか、金が無いとか言う。私は地方自治体はそれぞれの立地や環境に対応すべく運営すべく努力すべきと思う。もし国県の方針で動くなら、議員も首長も無くても良い。役場職員で充分である。また公約をはたせなかったら、選挙民との約束を守らないのだから何かの反省があるべきと思う。町民のためにと言ったわけだから報酬のカットとか」

アンケートでも、公約を実行できていない議員が多いという意見が多数を占めています。

これはもう、犯罪

50代の男性市議は、驚くべき実態を告発します。
「飲酒運転をしても、隠し続ける議員がいるし、それを協力している議員もいる。他にも警察事件になるような事をしている議員がいるので許せない!質があまりにも悪い!出世しか考えていない議員がいる!保身ばかり考えている議員がいる!」

選挙だけ熱心

選挙しか頭にない議員がいる、というのは60代の男性議員です。
「地方議員自体が役割をどのぐらい理解しているのか。選挙の事だけを考えて活動している議員が何と多い事か」

別の男性市議も、疑問を感じています。
「政策より選挙に勝つことが目的になっていて、何のために議員になっているのか判らない人が多い。資質に関わらず、地域・集落の代弁者として議員になっている人もいて、疑問を感じる」

選挙が終わってからも、嫌な感じだと、40代の女性議員はいいます。
「選挙が終わればノーサイド、ではない。足の引っ張り合いが続く。功名心で議員になっている人間が多い。掲げる公約と発言が伴わない議員だらけ」

今回のアンケートでも驚いたのは、わずかとはいえ、「実現したい政策は、特にない」と答えた議員がいることです。

でも、希望はある

一方で、思ったよりも話せば分かる、と感じているのは60代の女性議員です。
「当選して議員になってみると、選挙前のウワサや所属政党・会派の政策イメージとは異なり、人間対人間のつきあいが大切だと思うようになった。
政治的立場は違っても、双方理解しあおうとすると、腹を割った話ができる。これは、この世界に入ってみなければ気づかなかったことで、人生のプラスに作用している」

一市民として、飛び込んだ

最後に、そんな状況を憂いながらも、頑張っていこうという女性市議の記述で締めたいと思います。

「議員になる前、一市民として議会傍聴に行った時、居眠り、離席、単なる文章の読み上げ…といった状況を見て、それまで一番身近なところにある議会や市政に関心を持たず、誰かがやってくれる、おまかせ、と思っていた自分自身に立腹しました。このままではいけない、政治に無関心でいることは、投票権を持たないけれどもこれからの将来、この街を担っていく子どもたちに対あして無責任なことだと痛感。誰かが声を上げてこの状況を変えなければと思いました。

実際、当選して議会の中に入ると、外から見る以上にひどかったです。
徹底的な少数派排除。議会が率先して弱い者いじめをしているのです。また発言の少なさにも驚きました。
議員の仕事は自分の地元にとって良いことをする事、そんな意識の議員が多いように思います。また、有権者も『この地域は○○さん』と、ほかの候補者については情報を得ることもなく、惰性で選んでいる人があまりに多いです。その地域の代表ではなく、市議会議員というからには、市の隅々までしっかりと課題把握することが必要だと思います。

また、いまだに、議員特権が横行していることも問題です。海外視察や、費用弁償(議会出席手当)、国保の助成上乗せした人間ドックの補助…これだけ市民の生活が苦しく、また市財政が逼迫している中、議員だからという理由で優遇される理由が分からない。

不都合なことは表に出さず、華やかに見えることは広報するやり方もおかしい。議会の中でひっそり行われていることをどんどん市民に見せるべきだし、もし見せることができないことがあるとすれば、やめるべき。
今後も、圧力をかけられても、一市民として、しっかり情報を表に出していきたいし、市政や市議会に無関心な人に対してもっともっとアプローチしていきたいと思っています」

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寄せられた声をもとに、記事は随時更新していきます。いったん、集計は終了しましたが、ご意見は今後も参考にさせていただきますので、まだ回答されていない議員のかた、お待ちしております。
また、議員のかただけでなく、読者の皆様にも、地方議会の課題についてのご意見をいただきたいと思います。下の画像をクリックしていただけると、「ニュースポスト」が開きます。そちらにぜひ、「議員アンケートについて」などと書いて、投稿をお願いします。

【全議員アンケートについて】
NHKは、今年1月から3月にかけて、全国1788の都道府県・市区町村の議会と、所属する約3万2000人の議員全てを対象とした、初めての大規模アンケートを行いました。議員のなり手不足など、厳しい状態に置かれている地方議会の現状を明らかにし、「最も身近な民主主義」である議会のあり方について、有権者一人一人に考えていただく材料にしてもらおうというのが趣旨です。
約60%にあたる1万9000人余りから回答が寄せられています。集計結果をもとに、テレビ番組や特設サイト、そして週刊WEBメディア「政治マガジン」などで、統一地方選が終わる4月末にかけて「議員2万人のホンネ」と題したキャンペーン報道を行っていきます。4月27日には、午後9時から「NHKスペシャル」の放送を予定しています。

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