ネはいらない、
秘書が欲しい!

日本には「地方議員」が3万人もいることをご存じですか?
今回、その全員に初めてのアンケートを行いました。回答してくれたのは2万人近く。NHKでは1か月にわたって、そのホンネを伝えるキャンペーンを展開します。

議員の仕事は一生懸命やればやるほど、手がかかるもの。「秘書がほしい!」という声が相次ぎました。

秘書が欲しい!

いずれも60代の男性議員3人、異口同音にこういいます。

「政策秘書が必要だと思います」
「地方議員に政策秘書を公費にてお願いしたい」
「県議、政令市議に秘書制度を導入すべき」

さっそくですが、ここで今回のアンケート結果を。秘書が欲しいと思っている議員は、半数近い47%余りにのぼりました。

資料整理一つにも、手が足りないと、ある男性市議は訴えています。

「市議あたりで秘書など考える余地などないが(報酬も安いし)資料とかホームページ更新などの作業時に、秘書がいたらうれしいのだが…といつも思う」

60代の男性市議も、とにかく時間がないんだ、といいます。

「市議会議員では、私設の秘書を置くことは困難。ほとんどすべての政治活動にかかわる事務作業を自分でこなさなくてはなりません。何がそんなに忙しいのか、何をやっているのか、どのような成果ができているのか、説明が足りない点もありますが、集会や報告資料の作成等に割ける時間はそれほど多くありません」

40代の男性議員は、議会の質を高めるにも重要だとしています。

「事務所と秘書の経費が欲しい。現在月1万円の政務活動費しかない。熱心な方々には不足である。これがクリアできて専門議員になれば質の高い議会になる。今は片手間で来る議員が大多数だ。私は、住民の声を聞いたり、調査してたらとても他の仕事は持てない」

政策提言するなら秘書を!

ある男性議員は、政策提言を行うには、秘書が必要だと訴えます。

「まず、政策提言のための活動をきめ細かく行えるように図るならば、公設の秘書が必要だと思います。有権者を見ているといかにこの国の民主主義のレベルが低いかと愕然(がくぜん)とする時があります。市民・県民のための政策実現活動よりも、単に地域を歩き続け、看板ばかり設置し、行政の行事よりも公務的に参加もしていない議員が当選し続けている実態に悲しくなるときがある」

課題解決のプロジェクトには、人手がいると60代の女性議員も強調します。

「町の抱える問題について、職員・議員を交えたプロジェクトチームをつくって研究、提案できる体制をつくれば、つっこんだ政策提案ができると思う。その体制づくりが必要。
事務や事柄ごとにまとめる秘書がいれば、さらに質のよい質問ができると思う。スタッフが不足していると思う。
党では話題ごとに学習会があるが、それを町にあてはめ研究・調査する時間と人手がほしいと思う。
議員による町民との懇談や政策研究・提言活動がもっと盛んに行われるべきと思う」

70代の男性議員は、実際に政策提言をするため、弁護士と秘書契約を結んだといいます。

「二元代表制ですからお互いに競いあい辛辣(しんらつ)な意見を交わすべきと思うが、最近は知事与党、市長与党と称して議案まるのみの賛成が年々増えてきていると思う。
私は政策提言を唱えていますから、元検事→弁護士と秘書契約を結で政策立案に役立ています」

多勢に無勢なんです!

行政側のチェックをするには、自分1人では難しいと60代の男性議員はいいます。

「地方議員にも秘書制度が必要 → 議員一人で理事者(注:議会で説明する行政側の人)と議論するのは困難」

60代の女性議員も、アンバランスな現状を嘆きます。

「市政全般を“1人で”調べなくてはならず、秘書やスタッフが欲しいと思う。執行部と議員は『多勢に無勢』『チーム対個人』だ。『勉強しなくては!』と常にプレッシャーがある」

共有でもいいんです!

会派ごとに秘書を付ける方法もあるのではと、50代の男性議員は提案しています。

「地方議会において、市長から提案される議案に対して対策を出そうと思っても現状において難しい。例えば議員1人に秘書など、また会派制をとっている議会であれば会派に何人かの秘書を付けられる制度もしくわ費用があたえられれば政策立案など議案に対しての対策なども活発化できると思う。
政務活動費も使えるような費用が認められれば可能なような」

40代の男性市議は、複数の議員で秘書を共有しても構わないといいます。

「議員が政策立案等に集中できる環境を整えることが必要になっていると思う。そのためには、議員数名程度で共有でもいいので秘書がいた方がいい」

金を持っていないと、議員になれない!?

こうした状況のなか、50代の女性議員は、思い出す言葉があるといいます。

「忙しい毎日が続く時がある。フォローして下さる秘書的な人がほしい。1日24時間が足りないと思う時がある。問題解決をする場合、様々な資料、場所、声を聞く必要がある。また、それを文章にまとめてみたり等。他のことができない時もありとても大変。
ある議員から『金を持っていないやつは、議員になれない!』と言葉があった。初めのころは反論していたが、実際なってみると、その言葉の意味も少し分かる気がする」

報酬を減らしてもいいから!

60代の男性議員は、政務活動費よりも、秘書を重視したいようです。

「議員の政策立案を高めるには、政務活動費ではなく秘書を採用するべき(公費か自治体職員でもよい)」

秘書を雇うために報酬を引き上げて欲しい、というのは60代の男性政令市議です。

「政令指定都市の議員については報酬を引き上げ政務調査に必要な秘書的な身分の人の確保も図るべきであると思います」

いやいや、報酬を削って公設秘書を置くべきだと、40代の男性議員は考えています。

「定数の削減と、報酬の削減、政務活動費の削減は一つ一つで考えるべきものではない。例えば、公設秘書を認める代わりに、報酬や政務活動費の削減は考えられる」

議員を減らしてでも!

なおのこと、議員を減らしてその分、公設秘書を導入すべき、という意見を40代の男性市議は持っています。

「地方(市)議員こそ、住民に一番近い立ち位置であり、職員活動を補佐する秘書が必要である。企画立案力を高めるために公設秘書制度を市以上の自治体に1議員1名を付けるべき。
そのためには財源が必要となるため、例えば市議を半分にして公設秘書を付け、政務費を増やして行くことが必要だと思う」

ルールを作ればいい

50代の男性議員は、秘書の導入に当たってはルールが必要で、導入することで「なり手不足」にも効果があるといいます。

「議員の素質として調査研究能力が求められると思います。それがあってこそ市民の声を政策に変えられる。市職員と対等に議論できると考えます。
一方で、あまりの多忙さで、秘書の必要性を実感する所です。議員報酬から秘書を雇うのではなく、公費負担にすれば全員がそうするでしょうし、家族禁止条項にしておけば、市政にかかわる人が増えると思います。
議員にとって、常に背中から見ている他人様がいれば、つねに襟を正す必要がでます。また、地方議員のなり手不足も解消するのではないでしょうか」

だからこそ、議会事務局の充実を

秘書を雇えないので、代わりに議会事務局の機能強化が必要だと、60代の男性議員は考えます。

「議会事務局の充実。政策立案、条例提案、議会、委員会での質問にせよ情報収集に時間をとられ偏ります。
地方議会では政党や会派は体をなしておらず、秘書を雇う余裕もありません。議員個人の力量にかかっています。相談機能の充実が必要と考えます」

では、いまの議会事務局はというと…

秘書が欲しいという地方議員の声を紹介しました。
では、議員たちを支える立場にある議会事務局の現状はどうなのでしょうか。次回はそれに関する声をご紹介したいと思います。

なお、寄せられた声をもとに、記事は随時更新していきます。一旦、集計は終了しましたが、ご意見は今後も参考にさせていただきますので、まだ回答されていない議員のかた、お待ちしております。
また、議員の方だけでなく、読者の皆様にも、地方議会の課題についてのご意見をいただきたいと思います。下の画像をクリックしていただけると、「ニュースポスト」が開きます。そちらにぜひ、「議員アンケートについて」などと書いて、投稿をお願いします。

【全議員アンケートについて】
NHKは、今年1月から3月にかけて、全国1788の都道府県・市区町村の議会と、所属する約3万2000人の議員全てを対象とした、初めての大規模アンケートを行いました。議員のなり手不足など、厳しい状態に置かれている地方議会の現状を明らかにし、「最も身近な民主主義」である議会のあり方について、有権者一人一人に考えていただく材料にしてもらおうというのが趣旨です。
約60%にあたる1万9000人余りから回答が寄せられています。集計結果をもとに、テレビ番組や特設サイト、そして週刊WEBメディア「政治マガジン」などで、統一地方選が終わる4月末にかけて「議員2万人のホンネ」と題したキャンペーン報道を行っていきます。4月27日(土)には、午後9時から「NHKスペシャル」の放送を予定しています。

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