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静岡浜松 鉄を打って78年。 林業を支えた92歳の鍛冶職人。

NHK静岡 シリーズ「だもんで、浜松市。」
  • 2023年12月08日

 


集落の朝を告げる音

「カンカンカンカン…」
浜松市天竜区にある佐久間地区。
朝の7時半、一つの集落に響く音があります。
音をたどっていくと現れたのは一軒の鍛冶屋。
 

鍛冶屋が開業するのは朝の7時半

佐久間地区で唯一の鍛冶職人
片桐保雄さん(92)

飛び散る火花から目を守るためにサングラスは必須

 片桐保雄さん(92)。鎌やナタといった林業に使う道具を中心に地金作り、研ぎから販売までを一人でこなす佐久間地区で唯一の鍛冶職人です。

 片桐さんの父が始めた鍛冶屋は今年で93年になります。
子どもの頃から、父の背中を見ていた片桐さんが
この道に入ったのは14歳のときでした。

地金と鋼を貼り合わせる工程

92歳になった現在も技術は衰えず、
中でも地金と鋼を貼り合わせる技術は一級品です。

林業を支えた鍛冶屋

天竜区には林業が盛んだった昭和30年には9万人が暮らしていました。
その頃、片桐さんの鍛冶屋は大繁盛していたといいます。

片桐さん

天竜の各地から、鎌や道具を求めて
人が押し寄せたものだったよ。

 中でも人々が求めたのが「金原鎌(きんぱらがま)」。
天竜川の治水に尽力した金原明善(きんぱらめいぜん)が指示して作らせたと伝わる鎌です。下草刈りや枝打ちに使いやすい、大きさと切れ味が持ち味です。
 

金原鎌を打つ人はいまや片桐さんのみ

時代と共に変わるもの

しかし、林業従事者が減ると共に鎌やナタを求める人も
激減。片桐さんも日常的に使われる包丁を打つようになりました。

よく切れると評判の包丁

 

片桐さん

もう年だから。
いつやめてもいいんだがね。

取材中、片桐さんが何度も口にするこの言葉。
そう話しながらも片桐さんは日曜日以外、
毎日欠かさず鍛冶場に立っています。
 

ある日の取材中、ぼそりとつぶやいた言葉がありました。

片桐さん

私の技術を誰かに伝えてやっても
いいんだがね。
もういない、これをやる人がね。

鍛冶仕事が終わると見せてくださる笑顔

時代がどんなに変わろうと、
鍛冶一筋に向き合い続けてきた片桐さんの78年。
今日も片桐さんは鍛冶場に立ちます。


片桐さんが登場する番組はこちら↓
 

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