たっぷり静岡+「だもんで、浜松市天竜区。」 音作りの現場
- 2023年12月04日
ひとつのまちを深堀する「たっぷり静岡+」シリーズ第4弾は浜松市天竜区!このシリーズで全てのMA(整音)作業を担当している技術の宮本大誠です。MA(Multi Audio)という言葉に聞きなじみのない方が多いと思いますが、音を整理して聞きやすくしたり、ナレーションや音楽、効果音を入れたりと、音の調整や録音作業のことを指します。この現場から番組の魅力を紹介します!
今回は、子どもたちが集う駄菓子屋さん、大人たちが本気になる「国盗り綱引き合戦」など、浜松市天竜区を音でたっぷり感じてもらえると思います。天竜区で働く人々の音にフォーカスを当てた「だもんで、この音。」という新企画もあるので楽しみにしてください!
音のこと
編集された番組の「音」はさまざまな素材を組み合わせています。音の大きさはバラバラですし、声が聞き取りにくかったりもします。ロケでは、必ずしもいい条件で録音できませんし、音声マンが付かない複数のカメラで録ってきた音もあります。
特に小型カメラに内蔵されたマイクの音は環境音(雑音)が大きく、聞きたい音が埋もれてしまうことがほとんどです。そこで、視聴者の皆さんが聞きやすくなるよう音の調整が必要になるのです。
整音作業
MAの中でも大部分を占めるのは、ロケで録音した音のノイズ除去や音の大きさ、バランスの調整をする整音作業です。この作業で苦労するのは、良く聞きたい声が環境音に埋もれてしまっている時の処理です。たとえば風の音やセミの鳴き声、電車の中やBGMがかかる店内といった場所での会話です。
MAではこの写真のような編集ソフトで作業を進めていきます。ノイズ除去ソフトを使用することで、音がきれいになる時もありますが、多くは一度で処理しきれないため、ノイズ除去ソフトを使用した音声+元の音声データ+使用している映像の空間の音(喫茶店の中のざわざわ感や外の空気の音や子どもたちの声など)の3つを混ぜて使い、その混ぜ具合を調整することで良いバランスを実現しています。
今回の番組の例では綱取り合戦のシーンのインタビューに会場アナウンスがすごく重なってしまっていたのですが、この方法を使って整音していますので、ぜひ聞いてみて下さい。
他にも、映像ではまだ映っていない部分の音を、先行して聞かせて、次の展開へのわくわく感を演出したり、印象付けたい音にリバーブといった反響音を付けることでより際立たせたりする工夫を行っています。
ナレーション収録
整音作業と並行して、ナレーションの収録を行います。ナレーションのコメントは取材に基づいた情報から、番組の内容を際立たせるようにディレクターが練り上げていき、ナレーターとともに適切な表現を考えながら完成させます。
今回、だもんでシリーズにてナレーションを担当頂いている声優の堀越真己(ほりこしまみ)さんに、声のことや番組についてお聞きしました!
浜松市天竜区の回、収録を終えていかがでしたか?
だもんでシリーズは収録が終わると毎回こころが温かくなるんです。
今回も、収録中に泣いてしまったんですよ。こんにゃくのパートでぺちぺちやってるところ。おばあちゃんたちの手のしわから、あのぺちぺちがずっと聞こえてるんだなと思うと長い歴史を感じてね。
ディレクターたちも地道なことや生活の営みを一生懸命やっていることに目を向けているのが良いですよね。子どもたちには、そういうことがすごく大事なことだって知って欲しいですね。
ダモンデさんの声は、どのようにして生まれたんですか?
ダモンデさんの絵がもう少し太かったら声の雰囲気も変わるんですけどね(笑)。
元気のあるおばさんという話があったので、声のトーンは高くしてます。ダモンデさんの絵もアニメーションだからアタックを意識しているけど、長いコメントもあるのでずっとそれでは耳障りになっちゃう。ダモンデさんの主観か客観かで使い分けに気をつけています。
あと、初回の松崎町を担当した捧(ささげ)ディレクターの子どもに対するインタビューの声がすごく好きだったの。彼女があの声出すから、じゃあこっちの声にしようと思って。彼女とのバランスを考えたんですよ。
最後に番組への思いを聞かせて頂いても良いでしょうか?
スタッフが若いじゃないですか。ナレーションの文章が粗いところもあるんだけど
作る目線が好き。その目線を邪魔しないように、応援できるようにしゃべりたいと思ってます。最近SNSとかで、みんな出ることに慣れているんだけど、テレビはテレビなので。おじいちゃん、おばあちゃんにしても身近なところで主役になれる。素敵な番組だなと思ってます。
静岡県も広くて奥深いですよね。定点観測して魅力あるところがたくさんある。次はどこに連れてってくれるのか楽しみにしています。
堀越さん、今日は貴重なお話を聞かせて頂き、ありがとうございました。
音声表現
さて音の調整、ナレーションの収録が終わったあとは最後の仕上げとしてすべての音素材のミックスを行います。
25分の番組全体を理解した上で、どこで視聴者の気持ちを盛り上げ、番組の世界に引き込むことができるのかを考え、音で表現していきます。音声担当者として、自分の耳と指を信じて番組の質を上げていきます。
今回の番組で意識したところを、ちょっとだけ紹介します。
音にフォーカスを当てた企画「だもんで、この音。」 92歳の鍛冶職人が登場するパートでは、天竜の豊かな森林の風景から作業場へ近づくごとに、だんだんと鉄を打つ音を上げて期待感を高めました。森の木々は長い年月、この音を聞いていたということが感じられるのではないでしょうか
同じく「だもんで、この音。」からで、こんにゃくをつくっているお母さんたちのパートです。こんにゃくをつくっている手元の音だけでなく、お母さんたちの楽しそうな会話部分も際立たせることによって、お母さんたちのこの笑顔によってふるさとの味が作られているということを表現しました。
「国盗り綱引き合戦」のパートでは、カメラワークや「そーれ!」「そーれ!」といった掛け声に合わせて音量の上げ下げを意識的に作ることで、どちらが勝つかわからないドキドキ感を演出しました。
音の表現で番組の伝えたいことを、さらに高めていくことができます!
浜松市天竜区の魅力を情熱込めて音で表現しましたので、ぜひご覧ください!
NHK静岡 たっぷり静岡+ 「だもんで、浜松天竜区。」
12月8日(金) 午後7時半~
一つの市や町の魅力を深掘りする「たっぷり静岡+」のだもんでシリーズが浜松市天竜区に!
子どもたちの今が見える天竜二俣の駄菓子屋、水窪の「国盗り綱引き」、春野を走る便利屋トラック、佐久間の92歳の鍛冶職人、龍山の肝っ玉「ドラゴンママ」たちも登場!
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