首討論
憲法や年金などで議論

4日の参議院選挙の公示を前に、日本記者クラブ主催の各党の党首らによる討論会が開かれ、憲法改正や年金制度などをめぐって議論が交わされました。

討論会で、憲法改正をめぐって、自民党総裁の安倍総理大臣は、「自衛隊の存在を明確に憲法に位置づけることは、防衛の根本だ。与野党で3分の2の合意を得られる努力を国会で重ねていきたい。例えば、日本維新の会は、教育の無償化について、われわれとだいたい同じ方向を向いている。国民民主党の中にも憲法改正に前向きな方々がおり、合意を形成していきたい」と述べました。

公明党の山口代表は、「自民党が政党として憲法改正を主張することはあっていいと思うが、今の政権運営で、直接、必要なわけではない。もっと与野党を超えて議論を深め、国民の認識を広めることが大事だ。まだまだ議論が十分ではなく、冷静な現実認識を持ったうえで、議論を深める努力が必要だ」と述べました。

立憲民主党の枝野代表は、「憲法違反の安全保障法制が強行採決されて、現に存在しているが、憲法適合性をしっかりと結論づけなければ、9条について、まっとうな議論ができようがない。今の違憲の状況を棚上げしておいて、条文を変えるというのは、これこそ、無責任な議論のしかただ」と述べました。

国民民主党の玉木代表は、「憲法はしっかり議論していこうという立場だ。特に公平公正な国民投票を実現するためにも、資金力の差によって、国民投票活動に差が出てはいけないという立場であり、CM広告規制をきちんと入れた国民投票法を成立させてもらいたい」と述べました。

共産党の志位委員長は、「どんな世論調査でも、5割以上の人が憲法の改定を望んでおらず、憲法審査会を動かす必要はない。いま、野党の中で、『安倍政権のもとでの9条改定は反対だ』と一致している。安倍総理大臣ほど、立憲主義を壊してきた総理大臣はいない」と述べました。

日本維新の会の松井代表は、「憲法9条の改正案は、自民党が出してきたものを真っ正面から議論する。われわれがやりたいのは、教育の無償化、憲法裁判所の設置、地方分権であり、憲法審査会が開かれれば、自民党が出す案と並べて、まともな議論をしたい」と述べました。

社民党の吉川幹事長は、「憲法審査会には、今の法律や制度と憲法の関係について議論するという目的があり、大いにやるべきだ。『集団的自衛権は違憲だ』としてきたが、閣議決定でひっくり返されてしまい、本当に憲法と合致しているのか議論すべきだ」と述べました。

また、年金制度や10月の消費税率の引き上げをめぐって、安倍総理大臣は、「われわれが消費税率の引き上げを2回延期してきたのは事実だが、消費が堅調な中で、引き上げさせてもらいたいと考えている。年金は一人一人の生活に着目して、政府として支えていくことが大切だ。消費税を財源に、所得の低いかたに対して、年最大6万円の給付金を支給する。残念ながら、負担を増やすことなく、年金給付額を増やしていくという『打ち出の小づち』はない」と述べました。

公明党の山口代表は、「野党各党は、教育無償化や子育て支援を公約に掲げているが、財源が明確ではない。私たち与党は、消費税の使途を変更して、幼児教育の無償化などをスタートさせようとしている。消費税率の10%への引き上げも、各党で考えは違うようだが、統一候補を立てる中で、責任ある財源論を示すべきだ」と述べました。

立憲民主党の枝野代表は、「消費税率を8%に上げた悪い影響は継続しており、消費不況が続いている間は経済的に上げられない。『総合合算制度』は、年金額の比較的高い人には一定の負担をしてもらうが、低い人には負担を小さくして、能力に応じて負担をしてもらう。大きな蓄えがなくても、安心できる社会を目指していく」と述べました。

国民民主党の玉木代表は、「現在の経済状況を考えれば、家計をあたためる時だと思うので、消費税は増税すべきではない。年金の最低保障機能を高めなければいけない。最低でも月額5000円、年間6万円を支援が必要なところに届けようと提案しており、およそ600億円の追加の財政需要は金融所得課税の強化によって捻出できる」と述べました。

共産党の志位委員長は、「マクロ経済スライドは廃止し、減らない年金にすべきだ。高額所得者優遇の保険料の仕組みを正すことで、1兆円の保険料収入を増やしていく。200兆円の巨額の年金積立金を株価のつり上げに使うのではなく、年金給付に計画的に活用していく。賃上げと正社員化を進め、年金の支え手を強くする」と述べました。

日本維新の会の松井代表は、「社会保障制度は抜本的に見直すべきだが、まずは役所のお金の使い方について、行革をするのは当然だ。大阪府と大阪市で、合わせて8兆円の予算編成をしている中で、行革によって、教育無償化の財源を生み出してきており、これを全国に広げれば、今の時点で消費税を10%にする必要はない」と述べました。

社民党の吉川幹事長は、「企業は、大変、利益を上げている一方で、国民の間には、将来の生活に対する不安が、かつてないほど広がっている。政府からは、自己責任や自助努力ということばが聞かれるが、政治が国民に自己責任を問うのは、政治の責任放棄だ。この政治を変えて、安心と社会保障を作っていく」と述べました。

一方、安倍総理大臣は、参議院選挙の目標議席について、「政策を遂行していくのに必要な、非改選の議席も含めた過半数を、与党で確保したい」と述べました。

そして、野党5党派が「1人区」で候補者を一本化していることをめぐり、安倍総理大臣は、「候補者を一本化しているにもかかわらず、大切な憲法について全く統一されていないのは大きな問題だ。年金の考え方も、基本政策である社会保障の根幹だ。もし統一されていないなら、それを隠して候補者を1人に統一するのは非常に不誠実だ。ただ政府を倒すためだけに統一候補を選び、終わったら、またバラバラになる。決められない政治の再現としか言えないのではないか」とただしました。

これに対し、立憲民主党の枝野代表は、「国民生活が大変危機的な状況に追い込まれている中で、生活防衛の共闘として、1人区で候補者を一本化し、有権者に『今の政治のままの継続でよいのか、軌道修正が必要ではないのか』という明確な選択肢を示した。自衛隊と憲法の問題は、『集団的自衛権の一部行使容認は明確な憲法違反で、憲法違反の安全保障法制は廃止する』という点で一致している」と述べました。