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メディアの動き 2024年02月14日 (水)

【メディアの動き】TBSテレビ『news23』の調査報道,BPOが「放送倫理違反」の意見

 2023年1月,TBSの報道番組『news23』で放送された,内部告発をもとにした調査報道について,BPOの放送倫理検証委員会は,内部告発者の身元が特定できないようにする措置が十分でなかったとして,「放送倫理違反があった」とする意見を2024年1月11日に公表した。

 問題となった番組では,各地の農業協同組合(JA)の共済契約をめぐって,JAの職員がノルマ達成のために身内の名義を使って必要のない契約をしている実態を,複数のJA職員の内部告発をもとに伝えた。証言した職員の顔にはぼかしがかけられ,音声も変えられていたが,職員に会ったことがあるという視聴者から,放送を見て誰であるかをすぐ特定できたという指摘がBPOに寄せられた。

 このため委員会で検証した結果,①内部告発者の保護よりも映像の見た目を優先した取材が行われた,②編集した映像のチェックが不十分であった,③取材経験の少ない番組制作会社の担当者に対し,具体的な撮影のやり方などの指示がなく,現場任せであった,などの問題点が判明した。

 民放連の報道指針には,「情報源を秘匿しなければならない場合,これを貫くことは放送人の基本的倫理である」と明記されている。委員会は「本件放送は,秘匿すべき内部告発者の周辺でその身元特定が強く疑われる状況を招き,取材源の秘匿を貫くことができなかった」として,「放送倫理違反があった」と判断した。

 一方,意見書では最後に調査報道の重要性を説き,「その意志を絶やすことなく,挑戦を続けてほしい」と強調している。