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『らんまん』矢田部教授と研究した土佐の学者

近代考古学の先駆者・松浦佐用彦
  • 2023年07月21日

万太郎のモデルとなった牧野富太郎博士は、ドラマにもあったように、東京大学植物学教室の初代教授・矢田部良吉から大きな影響を受けていました。実は牧野富太郎博士よりも一足先に、矢田部教授とともに研究をした高知の学者がいました。
(高知放送局 リポーター 五十嵐優衣)

東京大学植物学教室の初代教授

『らんまん』で東京大学植物学教室の初代教授として登場する田邊彰久(要潤)。

万太郎の人生に大きな影響を与える、重要な役回りです。

万太郎のモデルとなった牧野富太郎博士も、当時の東京大学植物学教室の矢田部良吉教授から多大な影響を受けたと言われています。

矢田部良吉教授肖像  出典:国立国会図書館「近代日本人の肖像」 (https://www.ndl.go.jp/portrait/)

高知県出身で、牧野富太郎博士より一足早く、矢田部教授と共に研究をした人がいました。どのような人物なのか取材しました。

近代考古学の先駆者

高知県大豊町にある、豊永郷(とよながごう)民俗資料館です。ここには、国の重要有形民俗文化財2595点を含む、およそ1万2千点の民具が保存、展示されています。

資料館の学芸員で、お寺の住職の釣井龍秀(つるい・りゅうしゅう)さんに話を聞きました。

釣井龍秀さん
「牧野博士ほど知名度は高くありませんが、高知県大豊町出身の松浦佐用彦は日本で最初の近代考古学者と言われています。明治初期に貝塚の発掘などに関わった人物です」

松浦佐用彦とは

松浦佐用彦は1856年に土佐の豊永郷(現在の高知県大豊町)で生まれました。

画像提供:東京大学総合研究博物館

新しい文化を学ぶために、10代半ばで土佐藩の給費生として上京。東京外国語学校で英語を学びました。その後、1877年に東京大学が設立した年に、東京大学理学部に進学しました。

実はこの時、植物学教室の初代教授だった矢田部教授と共に研究をしていました。

釣井龍秀さん
「松浦佐用彦は、東京大学の動物学の教授で、大森貝塚の発掘で知られるエドワード・シルベスター・モースの助手をしていました。理学部では動物学と植物学の研究がされていて、植物学教室の初代教授・矢田部良吉とも一緒に研究を行いました」

日本最初の臨海実験所

モースは日本に、貝などの腕足動物の調査をするために来日していました。そのために、横浜の江の島に日本で初めての臨海実験所を建て、ここで矢田部教授と松浦も植物や海洋生物などの調査を行いました。

江の島臨海研究所付近 画像提供:東京大学総合研究博物館

松浦は、モースのもとで大森貝塚の発掘作業も行い、日本で最初の発掘作業を行った考古学者とされています。

大森貝塚遺跡庭園

墓石にはモースの言葉

松浦は、モースがアメリカに帰国している間も大森貝塚の発掘を任されるなど絶大な信頼を得ていました。しかし、その生涯は短く、東大在学中の1878年、22歳の若さで亡くなりました。

このお墓は2021年に東京から移され、現在は豊永郷民俗資料館のすぐそばにあります。
墓石にはモースの言葉が刻まれています。

「忠実な学徒にして誠実な友、自然を愛した人。物質界でも精神界でも“最終的に判断をくだすのは権威ではなく、観察と実験である”という信念を抱いていた人、それが松浦だった。エドワード・モース」

さらに、モースは松浦について著書『日本その日その日』の中で何度も取り上げています。

『日本その日その日』エドワード・モース (著)  石川 欣一 (翻訳)  創元社

釣井龍秀さん
「名前が出てくる人物としては、松浦が一番多いのではないでしょうか。1人の人物の記述にしてはかなり多いと思います。また、モースはアメリカに帰国後も松浦について語っていたようです」

著書には、モースが松浦のお見舞いに行った際に、松浦は大学での研究がどのように進んでいるのかモースに尋ねたとされ、モースは「最後の瞬間まで興味を持ち続けていた」と記しています。

釣井龍秀さん
「松浦は『らんまん』に直接登場はしていませんが、史実では、牧野博士が影響を受けたと言われる矢田部教授などと一緒に研究を行っていました。この機会に松浦佐用彦を知る人が増えたらうれしいです」

豊永郷民俗資料館では、9月30日まで「松浦佐用彦と研究者たち」と題した企画展を行っています。
この機会に足を運んでみてはいかがでしょうか。

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    高知放送局 リポーター

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