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【梅雨】亡き父のあとを継ぐ 傘の修理人

  • 2023年07月20日

高知県高知市の商店街で亡き父のあとを継ぎ、傘の修理を手がける職人がいます。
父が大事にしてきた信念を受け継ぎ、傘の修理を続ける職人を取材しました。

(NHK高知放送局 カメラマン 大和田純平)

“思い出”を直す 傘の修理人

高知市の商店街にたたずむ小さなお店。

ここで傘の修理業を営む濱口俊明さんです。

1年で最も多くの傘が持ち込まれるのが梅雨の時期。
その数は月に60本ほどにもなります。
濱口さんの店には修理してでも使い続けたいという思いのこもった傘が集まってきます。

「母の日にお子さんたちからプレゼントされた傘だったり、お母さんの形見の傘だったり、持ち込まれる傘は特別なものばかりです」

傘はどれも形状や部品が異なるうえに骨が折れていたり持ち手が破損していたりと、修理の依頼も様々です。

買い替えることが当たり前の中、交換部品を調達することが難しい傘も多くあります。

濱口さんは依頼ごとに修理方法を考え、すべて手作業で対応します。
部品を手作りすることもあり、時には2日間かけて傘を修理します。

これまで集めた部品を加工して使うことも

「傘の何でも屋ですね」

濱口さんは修理依頼にない故障を見つけたときは、客の喜ぶ姿を見たいと修理することにしています。

傘を開閉をする金具が戻らなくなっていた

「使っていて我慢しているところもあると思うんですよ。
プラスアルファで良くなっていたら喜んでもらえるかなと」

また修理費用を安価に抑えることも濱口さんのこだわりです。

傘の先端の交換や骨1本の修理は500円ほどから

「傘を大事に使ってもらいたい思いがあるので、修理に持ってこようと思えるように費用を抑えるようにしています」

丁寧な仕事ぶりに、濱口さんの店には客が次々と訪れます。

家族の形見の傘を頼んだ客

「ぽきって折れて、これでさしたら穴が開くから、大急ぎで持ってきました。
形見なので記念に置いておきたいがですよ、ありがとうございます」

プレゼントの傘を頼んだ客

「父の日に家族からもらった傘だったので大事に使っていたのですが、
他では部品を取り寄せないと直らないと言われていたので、助かりました」

亡き父の生きがい

濱口さんの父親で傘修理の師匠でもある濱口茂城さん。

同じ工房で傘の修理をしていた父・濱口茂城さん

茂城さんは95歳まで生涯現役を貫き、2年前に他界。
亡くなる2か月前まで現場に出続けていたそうです。

「ものづくりが好きだったっていうのもあるでしょうし、お客さんのためっていうのもあったんだろうなと思いますね」

傘の修理は、客と傘があっての仕事。

父の生きがいであった傘の修理、それを支えた客にお礼をしたいと濱口さんは傘の修理を引き継ぐことにしました。

自宅がある香川県から高知県まで1時間半かけて通い、父が残した道具や部品を使って傘の修理を続けています。

持ち込まれた傘に見つけたものは

この日持ち込まれたのは母から譲り受けて使い続けてきたという傘。
傘の骨が折れたので直してほしいという依頼でした。

作業に取りかかった濱口さん。
傘の根元部分に目がとまりました。

傘の根本部分には修理した跡が

「親父さんかな、私のやり方によく似てますね」

骨1本1本が手作業で補修された傘。
亡き父が過去に修理した傘を直すことになった濱口さん。まさに偶然の出会いでした。

「骨を全部変えたかったはずなんですよ。でも部品がなかったので短い骨をカットしてつないだんですね。手が込んでいます」

修理の跡から感じた“父の思い”

修理代を抑えるため、手持ちの部品を使って修理をしていた父。
少しでもお客に喜んでもらいたいという父の思いを改めて感じました。

塗料がはがれていた父の修理跡にも手直しをします。

「塗っとってくれって言っているような気がするんです」

父とともに修理した傘

 

傘を受け取り笑顔を見せる依頼人

「母から譲り受けた大切な傘ながですけど、こんなに丁寧に直していただいてありがとうございます。実はお父様にも何年か前に修理していただいたんです」

「父の手の修理があるなと思って見させてもらいました。
ありがとうございました」

修理を必要とする傘がある限り

「お返しするときに喜んでいただけるのが一番うれしいですね。お客さんの反応をじかに感じられるのがやりがいです。使ってもらっているうちは終わりじゃないなと思います」

傘の修理屋さんとは珍しいお店があるものだと興味をひかれて取材が始まりました。

持ち主にとっての宝物を直すこのお店はただモノを修理するお店を超えて、思い出をよみがえらせるかけがえのない場所でした。

濱口さんによって傘に施される丁寧な修理跡。
それは長年大切にされてきた証しに見えました。

  • 大和田純平

    高知放送局 カメラマン

    大和田純平

    2020年入局
    高知の文化や自然についてリポートで発信
    これからは1本の傘を大切に使い続けたい!

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