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『らんまん』万太郎が解明したかった 桜の病気は

牧野植物園の樹木医に聞く!
  • 2023年07月04日

『らんまん』第13週は槙野家にとって思い出深い「仙石屋(せんごくや)」の桜が病気になってしまったという話が物語の中心でした。
万太郎(神木隆之介)が解明しようとしていた桜の病気は何なのか、高知県立牧野植物園の樹木医を取材しました。
(高知放送局 キャスター 佐藤好)

万太郎 桜の病気の解明に奮闘

『らんまん』第13週は、槙野家にとって思い出の桜が物語の中心となっていました。

「仙石屋」にある思い出の桜を見上げる万太郎

その桜が病気になり、切り倒さないといけないと聞いた万太郎は、桜の病気を解明し、治すことができないかと奮闘します。

大学や博物館にも枝のサンプルを送り、助けを求める
研究に熱を入れすぎて妻・寿恵子にも強く当たってしまう

ドラマに出てきた桜の病気は?

ドラマの中で桜の病気は「鳥よりも大きい、てんぐが巣を作ったような病」と説明されていました。

いったいどんな病気なのか、高知県立牧野植物園の樹木医、藤井聖子さんに聞きました。

ドラマはさまざまなところがフィクションですし、一部を見て断定はできないのですが、おそらく「サクラてんぐ巣病」かなと。

サクラてんぐ巣病?

はい。症状がわかりやすい写真があります。この桜、満開の時期なのに一部咲いていないところがありますよね。この部分がサクラてんぐ巣病にかかっています。見たことがあるという人も多いかもしれませんね。

海外では「Witch’s broom」=「魔女のほうき」と呼ばれているサクラてんぐ巣病。

ドラマにもあった通り、大きな巣のように、枝がほうき状に広がっているのがわかります。

カビの一種の菌が木に入り込んで引き起こすと言われています。菌が芽の中などに入って、植物ホルモンに似た物質を出し、植物に異常な成長を起こさせるんです。さらに胞子を作って自分の子孫を飛ばし、感染を広げてしまいます。

菌が木に入り込む原因はわかっているのですか?

それがわかっていないんです。今の時代も悩まされています。

ドラマの中では切り倒すしかないと言われていた桜。病気のまん延を防ぐ方法はあるのでしょうか。

健康な部分から病気の部分を切り離せば防げると言われていて、基本的ですが、そういった手立てを取ります。病気の部分を除去した後は、桜は切ったところから腐りやすいので、傷口に癒合剤を塗ります。早いうちに見つけて除去していれば、切り倒す必要はありません。

思い出の桜 次の世代へ

ドラマでは、万太郎は桜の病気を解明、治療することはできませんでした。

再び「仙石屋」の桜を訪れた万太郎たち

しかし、代わりに行ったのが、接ぎ木です。大木は生涯を終えても、健康な枝を使って、大木の後継を育てようとしたのです。

接ぎ木された小さな木を見つめる万太郎たち

いい状態で長く樹木を見てもらえるよう、植物園でも日々健康管理を徹底しています。しかし、樹木も生き物ですので、いつか切り倒す決断をしなければならない時も来ます。その時は、枝や種子を生かして、その木の遺伝子を残せないかと考えます。

その木が生涯を終えても、遺伝子が未来につながる。人間と同じですね。

そうですね。なんちゃあやない樹木かもしれませんが、その木が誰かにとっての思い出の木の可能性もあります。そんな皆さんの心のシンボルツリーをどう守っていくのか。たとえ自分がいなくなっても木の遺伝子は生き続けると思ったら未来が楽しみですし、今後も地道に頑張っていきたいです。

ドラマではその後、万太郎の祖母・タキがこの世を去りましたが、遺伝子を受け継いだ万太郎は、自分の力で芽吹き、成長していくことを誓います。

接ぎ木で遺伝子が残された小さな桜も、槙野家のそばで、家族を見守りながら成長を続けるのかもしれませんね。

  • 佐藤好

    高知放送局 キャスター

    佐藤好

    宮城県仙台市出身。思い出の桜は、中学校の隣の「三神峯公園」の桜。陸上部でいつも木の下を走り回っていました。

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