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【絵金蔵】夏の特別展

  • 2023年07月19日

幕末の土佐藩で活躍した絵師金蔵、通称「絵金」の芝居絵びょうが街なかに並ぶ「絵金祭り」。その祭りに合わせて高知県香南市の絵金蔵で開かれている夏の特別展を取材しました。
(高知放送局 リポーター 五十嵐優衣)

香南市では毎年7月に「絵金祭り」が開かれています。この祭りでは、土佐藩の天才画家として知られた絵師金蔵、通称「絵金」の芝居絵びょうぶが飾られ、幻想的な景色を見ることができます。

市内にある資料館「絵金蔵」では、この祭りの時期に合わせて、県内各地で保存されている芝居絵びょうぶなどを集めた特別展を毎年開いています。

絵金蔵の学芸員、中西洸太郎さんに、令和5年の特別展の見どころを教えてもらいました。

まず見せてくれたのは、初公開となる「横のぼり」です。

香美市土佐山田町で発見されました。別々の2つの物語を左右に並べて1つにまとめられています。

中西洸太郎さん
「横のぼりは、かつて端午の節句に合わせて飾られていた土佐ならではの風習です。フラフと合わせて家の塀に貼り付けて男の子の健やかな成長を祝うために飾られたと伝わっています」

この作品にも、めでたい時に使われたことを示す「鶴」が描かれています。

中西洸太郎さん
「別の絵びょうぶに同じ作品が描かれていますが、ほかの絵に鶴の絵は基本いません。鶴は太平の世とか、長生きしてほしいという思いを込めて描かれるので、横のぼりのために付け足して描かれたという話が残っています」

見どころはほかにも。通常、2年に1度、夏祭りの時期にしか表に出されることのない、高知市の郡頭神社にある芝居絵びょうぶ4点も展示されました。

中でも目を引くのが、大胆な構図が特徴の「義経千本桜 鮓屋」です。

「日本三大歌舞伎の1つとも言われていて、絵金や絵金の弟子もたくさんこの作品を描いています。義経が壇ノ浦の戦いで平家を滅ぼしたあとの話です」

こちらの芝居絵びょうぶでは、平家の生き残りを助けようとする一家の悲劇が描かれています。

また、絵金といえば「血赤」と呼ばれる鮮やかな赤が特徴ですが、この作品ではそれ以外の色にも注目だと、学芸員の中西さんは指摘しています。

中西洸太郎さん
「緑とか黒とか、あでやかな衣装が多いのが特徴で、本物を見たときに色の厚みと迫力がより感じられます」

江戸時代末期から明治初期にかけて描かれたこれらの作品。劣化から守るために、ふだんは温度と湿度が管理された場所で保管されています。
レプリカではなく、本物だからこそ感じ取れる色使いや迫力を、この特別展では見ることができます。

中西洸太郎さん
「本物が見られるのは1年に1回だけです。高知は特に高温多湿なので、作品のことだけを考えると出さないほうがいいんですが、文化を残していくためにも続けていきたいと考えています。ぜひ本物を見に来てほしいです」

ことしの絵金祭りは終わってしまいましたが、絵金蔵では、また来年も祭りに合わせて本物の作品を展示する特別展を開催する予定です。

  • 五十嵐 優衣

    高知放送局 リポーター

    五十嵐 優衣

    今回初めて本物の芝居絵びょうぶを見ました!

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