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【らんまん】綾(佐久間由衣)が口にした『はちきん』とは?

  • 2023年07月06日

皆さん、竹雄が綾に告白したあとに返した綾のことばを覚えていますか?

「バカじゃのう。せっかく東京行ったのに、こんなはちきんの強情っ張りより、かわいらしいお人が おったじゃろうが」

綾が口にした土佐のことば「はちきん」の由来を調査してきました!
(高知放送局 ディレクター 柴田英徳)

高知県民に聞いた!「はちきん」のイメージは?

まず、高知県民に「はちきん」のイメージを聞いてみると、、、

70代女性

「ちゃきちゃきしていて、はっきりしているみたいな
『えらもん』というか気が強い」

40代男性

「お酒も強くて、男の人に負けないぐらい強い女性」

60代女性

「負けず嫌いやね。簡単に言えば負けず嫌い」

およそ20人に話を聞いたところ、出てきたイメージがこちら。

「強い」ということばがたくさん出ました。

「はちきん」は2つのことばが合体したもの!?

では、「はちきん」の由来は何なのか?専門家を訪ねました。

高知大学教育学部の岩城裕之教授。主に方言を研究しています。

岩城さん

「はちきんは『はち』『きん』が合体したことばなんですよ」

岩城さん

『はち』は女の人で、おてんばでよくしゃべるし、よく動く人のこと、
『きん』は、きんぴらという言い方がありまして、きんぴら浄瑠璃という浄瑠璃からきています。そこから、「きんぴら娘」という力の強い男の人のような女の人という、まさに男勝りな女性のことをあらわしています」

岩城先生の話をまとめると、「はち」は”おてんば”、「きん」は”男勝り”。
2つのことばが合体して、高知の女性を象徴することばとして、使われはじめたといいます。

ちなみに、岩城先生によると、高知は同じ意味のことばを合体させるパターンが珍しくないそうです。例えば、つくしが生えたあとの「スギナ」。

岩城さん

大豊の辺りから高知市にかけての中央辺りが「スギナ」と呼んでいて、一方で、室戸や幡多の辺りは「マツナ」と言うんです。葉っぱの形を松にたとえるんです。そして、「スギナ」と「マツナ」と呼ぶ地域に挟まれた場所では、2つのことばを合体させて「スギマツ」と呼んでいたんです」

ちまたでよく聞くあの説は?

「はちきん」は、2つのことばが合体して生まれたという岩城先生。
ちまたで耳にする、「女性1人で男性4人を手玉にとる」という説については?

岩城さん

「ある意味おもしろくて分かりやすいので、聞いた人たちが『なるほど!』と思うと、その地域で語源として定着することがあります。あくまで民間の人が言いだしたことで学問的なことではないけれども、それもありかなと」

高知だけじゃない!?実は他県にも似たことばが、、、

また、いつから使われ始めたのかたどると、意外なことが分かりました。

岩城さん

「静岡の辺りに「はちかん」ということばがありました。1900年ごろの記録が残っています。実は似たことばは、近畿の広い範囲にあります」

静岡では「はちかん」、 お隣の徳島では 「ばちかん」と呼びます。 他にも「はちまん」や「はちくれ」など、高知以外の11府県でも 「おてんば」という意味で 使われていたんです。

時代とともに意味が変わった「はちきん」

さらに、「はちきん」ということば自体、時代によって意味が変わってきているといいます。

岩城さん

「もともとはあんまりいい意味では使っていなかったような感じですね。男はこうあるべき、女はこうあるべきという時代のことば。生活のことばとしては、多分言われたらうれしいことでもないし、あんまり人に向かって言うようなことでもなかったと思います。現代に近づけば近づくほど、それがプラスの意味にもなってきているようで、今だと元気のいい女性といった感じの捉え方になっているそんなことばだと考えています」

時代とともに、プラスの意味に変わり、さまざまな分野で「はちきん」ということばが使われるようになりました。

高知女性=「はちきん」を裏付けるデータが!?

では、高知には本当におてんばで男勝りな女性が多いのか?女性の社会進出などに詳しい高知工業高等専門学校名誉教授の池谷江理子さんに聞きました。

池谷さん

「自治会長や管理職は、どちらかというと日本では圧倒的に男性が多い。しかし、高知の場合は女性が多いというのは、かなり大きな特色です」

区長など自治会長に占める女性の割合は全国3位。 平均の2倍以上です。 

そして、管理職に占める女性の割合も全国3位となっています。

その背景には、高知の環境が関係していると池谷先生は言います。

池谷さん

「高知県は、第1次産業が盛んで、戦後、漁村や農村部から保育所を設置して欲しいという要望がとても強かったんです。現在、保育所の普及率は、全国1位となっています(令和元年度)。また、高知は、明治の頃から女子教育に熱心でした。看護や社会福祉、教師など資格を重視した学校が結構多く設置されてきました」

池谷さん

社会生活の中で活動しているウエイトが高い点でも元気だと見えるのではないかなと思います」

今回の調査の結果、「はちきん」は、 “おてんば”と“男勝り”を示すことばが合体してできたこと。そして、「はちきん」女性たちが社会で活躍していることが分かりました。

取材を終えて、、、

取材をしていくと、世代によって、「はちきん」ということばの捉え方が異なることが印象に残りました。中高年の方が、ネガティブに捉える一方で、若い世代は、ほとんどがポジティブに捉えていました。また、こんな意見もありました。

高校生

「知りません。ことば自体聞いたこと無かったんで、意味も全然分からないです」

中学生

「だんだん時代に流されて、もう廃れていきゆうことばに感じる。今は昔より女性の発言権は強いし、そこまで高知の人特有のことばでは無くなりつつあると思います」

時代とともに変化する土佐のことば「はちきん」。将来、今以上に男性、女性関係なく輝ける時代がくれば、「はちきん」ということばの意味は、さらに変わってくるかもしれないと感じました。

 

みなさんの身近な疑問や相談大募集!

NHK高知局では、高知県のみなさんの身近な疑問や相談を大募集しています。「なんで、高知の中高生はスポーツタイプの自転車が多いの?」や「帯屋町のことをなぜ『まち』と言うの?」など以下のURL先からどしどしお寄せください。
https://post.nhk.or.jp/px3ybtuz9o/kojantkochi/image/registrations/input

  • 柴田英徳

    NHK高知放送局ディレクター

    柴田英徳

    山形県出身。高知女性にぴったりのことば「はちきん」。残り続けて欲しいと感じました。

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