文研ブログ

2021年11月19日

調査あれこれ 2021年11月19日 (金)

#350 紅白シーズン到来! 音楽コンテンツはテレビ放送から?それとも動画?

世論調査部(視聴者調査) 保髙隆之


 早いもので11月も終盤に入ってきました。コロナ禍で季節感を感じる機会が例年より少なかった気がする2021年ですが、個人的には毎年、この時期に楽しみにしている恒例のイベントがあります。それは…「紅白歌合戦」の出場者発表!

211124-01.jpg
 我が家では家族そろって紅白を見て、両チームを採点するのがお約束。誰が初出場で、誰が出場しない、というのは子どもの頃は“重大”ニュースでした。大みそかには、父の「若いアイドルはみんな同じ顔に見える」なんて声を聞きながら、「これは人気ドラマの主題歌なんだよ!」などと、「ザ・ベストテン」仕込みの知識で解説したものです。40代以上の方なら同じような経験をした方も少なくないのではないでしょうか?
 最近は発表と同時に、若年層と高年層の双方から「知らない人ばかり」「なぜ私の推しが出ないの!」などと激しい応酬がSNS上で繰り広げられることも風物詩となっています。刺さる人にはとことん刺さるけど、そのアーティストのファンコミュニティーの範囲を超えることは難しい。そんな昨今の音楽シーンの背景には「音楽」ジャンルの映像コンテンツへの接触パターンの変化もありそうです。
 下のグラフは昨年11月から今年の1月にかけて実施した世論調査「コロナ時代のテレビの価値」(全国13歳以上対象)の結果です。動画利用者(1,377人)に、「テレビ放送(録画含む)」(図中では「放送」)、NHKプラスやTVerなど「インターネット経由のテレビ番組」(同じく「番組配信」)、YouTubeやAmazonプライム・ビデオのオリジナルコンテンツなどの「インターネット動画(テレビ番組除く)」(同様に「動画」)の3つに分けて、それぞれ視聴ジャンルを複数回答で尋ねました。

211124-2.JPG
 「音楽」ジャンルと、参考に「ニュース・報道」ジャンルの接触パターンを年層別に比較すると、「放送のみ」での接触がどの年層でも多い「ニュース・報道」に比べ、「音楽」は「動画のみ」での接触が目立ちます。動画利用者へのインタビュー調査では、自分の好きなアーティストのパフォーマンスだけを見たいという声が多く聞かれました。ひと昔前なら、自分の聞きたい歌手の出番が来るまでテレビの前で待つしかありませんでした。(その代わり、思いがけない歌手との出会いの楽しさもありました。)しかし、今は違います。ハードなニュースで問題になりがちな社会の「分断」ですが、「音楽」ジャンルにも「自分」と「他者」のお気に入りを隔てる壁が存在しているようです。
 一方、「放送&動画」の両方で接触する人が幅広い年層で一定数いることも確か。これは他のジャンルと比べても「音楽」の大きな特徴になっています。そういえば、私も昨年の紅白で、それまで食わず嫌いだったYOASOBIの曲を初めて聞き、以来、サブスクやYouTubeで新曲は必ずチェックするようになりました。「ザ・ベストテン」世代の私でさえそうなのですから、デジタルネイティブのZ世代は各メディアとジャンルの特性を理解し、賢く効率的に使い分けているはずです。さて、今年の紅白では、どんなアーティストが世代をこえた出会いの喜びと感動を届けてくれるのでしょうか。今から楽しみです。
 コロナ禍を経た今、ジャンルや生活場面によって異なるテレビや動画の見方について、また、紅白のように家族そろってテレビ「放送」をみる習慣が変化する可能性について、「放送研究と調査」10月号「コロナ禍はテレビと動画の利用者にどんな影響を与えたか」で詳しく報告しています。ぜひ、ご一読ください。