山の歌 夏 祈りの山 天高く ~愛媛県 石鎚山~
四国山地の西部にそびえ立つ、西日本最高峰の石鎚山。昔から、山そのものがご神体としてあがめられてきた霊峰です。今も多くの人たちが、それぞれの祈りを胸に頂を目指します。ほら貝の音色を神にささげながら、毎日山へ荷物を届ける郵便配達員。険しい山道の途中で、登って来る人を元気づける「冷やしあめゆ」。年に一度、亡き妻への思いを胸に登り続ける男性と小学5年生の娘。神の山へ思いを寄せる人々を見つめます。
今回の放送内容
山を登り始めると、ほら貝の音が聞こえてきました。修行僧かと思いきや、吹いていたのは郵便局の制服をまとった配達員。山本篤幸さんは、毎日7合目まで荷物を届ける石鎚山唯一の郵便やさんです。配達の仕事を始めて間もない頃、山のふもとで大きな交通事故にあった山本さん。奇跡的に命が助かったのは、石鎚山の神さまのおかげだと感じました。以来、毎日ほら貝を吹きながら山を登り、感謝の音色を神様にささげています。
急勾配の坂道が続く山道を登っていくと、一軒の茶屋が見えてきます。そこで売られているのは、石鎚山のわき水で作った甘い「あめゆ」。店主の髙須賀正利さんは、できたてのあめゆを冷たいわき水で冷やし、夏の暑い山道を登ってくる旅人たちを迎えます。茶屋が建つのは登山道のちょうど中間地点。冷たいあめ湯が後半の登山への力となります。
登山の途中、武田和也さんと娘の篤実さん親子に出会いました。毎年必ず娘を連れて石鎚山に登るという武田さん。そのわけは、石鎚山が亡き妻・智子さんとの大切な思い出の場所だからでした。母の記憶を持たない篤実さんが10歳になった今年、武田さんは初めてそのことを伝えます。「お母さんにあんたが大きくなった姿を見せてあげたかった」。頂上を目指すのは、妻に一番近い場所だからではないかと話す武田さん。これからも娘と登り続けたいと願っています。
旅人・山田敦子アナウンサーより
山に救われ山によって人生が深く変わるということがあるのだなあと、石鎚山で思いました。赤ちゃんを残して妻が逝き、自暴自棄になっていた男性が、山好きだった妻にふと呼ばれたように石鎚山を目指す。その後何回も登り続けているうちに仲間ができ技術も上がり、今は地域活動に関わりながら登山の安全にも心を砕く忙しい日々。愛娘の成長する姿を妻に見せるため、毎年父娘で山に登る。見上げる頂に妻の存在を感じながら。頂の青空は瞳のようで、頂に湧く雲は息吹きのよう。魂の山、石鎚山を強く記憶に刻みました。
石鎚山へのアクセス
〈電車〉
JR「伊予西条」駅→せとうちバス「西之川」行き→「ロープウェイ前」下車(約1時間)→石鎚登山ロープウェイ「山麓下谷」駅→「山頂」駅(約7分)
〈車〉
松山自動車道「いよ小松」IC→国道11号を小松方面へ
問い合わせ先
▼石鎚山について
西条市観光振興課 0897-52-1690
▼石鎚神社について
石鎚神社 本社 0897-55-4044
投稿時間:08:24