早期治療がかぎ 脳梗塞のt-PAと血管内治療を徹底解説

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脳梗塞吐き気言葉が出ない麻痺(まひ)がある脳・神経

脳梗塞の発症後、4時間半以内にしか行えない「t-PA」

血栓を溶かす薬「t-PA」

血栓を溶かす薬「t-PA」
血栓を溶かす薬「t-PA」

脳梗塞の治療では2005年にt-PAという薬が登場し、それまでの治療から大きく進歩しました。それ以前の治療では、血栓で詰まった脳の血管の再開を積極的に目指す治療法はなく、病状の悪化を防ぐ目的で脳保護薬などが使われてきました。
脳梗塞によって、脳の神経細胞が徐々に壊死すると、その周囲からは活性酸素などの有害物質が発生します。脳保護薬は、その活性酸素などの有害物質の働きを抑えて神経細胞を保護する働きがあります。

一方t-PAは、脳の血管を詰まらせていた血栓を溶かし、再び血液を脳の神経細胞に行きわたらせる効果があります。早い段階でt-PAを投与すれば、壊死の範囲を最小限にとどめることができます。t-PAの登場は、脳梗塞の治療を大きく変えたといえるでしょう。

「t-PA」で治療できない場合もある

「t-PA」で治療できない場合もある

t-PAによる治療は、脳梗塞が発症してから4時間半以内に行わなければなりません。それを過ぎてから投与すると脳出血を起こす危険性が高くなるとされています。脳梗塞が起きて血流が遮断されると、その先の血管壁は血液が供給されないためにもろくなります。そこに血流が再開すると、血管が破れて脳出血を起こす危険性が高くなってしまうのです。

脳梗塞の発症から4時間半以内に医療機関に到着しても、診察、画像検査、血液検査などに1時間ほどかかるため、発症から3時間半以内には専門の医療機関に到着する必要があります。
ほかにも、「過去に脳出血を起こしたことがある」「脳梗塞の範囲が広い」「血圧が非常に高い」「大きな手術後2週間以内」「血液検査(血液の凝固機能や血糖値、血小板数など)に異常がある」といったケースでは、脳出血を起こす危険性が高いためt-PAを使用することができません。

脳梗塞の発症後、8時間以内なら行える「血管内治療」

脳梗塞を発症してから4時間半を過ぎた場合でも、8時間以内であれば血管内治療を行うことができます。血管内治療はt-PAが受けられない場合や、太い血管に大きな血栓が詰まっていてt-PAの効果が得られにくい場合などに行われます。

血管内治療は、脚の付け根の動脈からカテーテルを脳の血管に送り込むことで治療します。カテーテルの先端についたデバイス(医療用装置)で、脳の血管に詰まっている血栓を取り除き、血流を再開させるのです。
最近では、機能的で安全性の高いデバイスが登場したことで、後遺症を残さなくてすむケースが増えてきました。デバイスには、ステント型と吸引型の2種類があります。

ステント型

脳梗塞の治療 血管内治療・ステント型

ステントとは、金属製の網目の筒状のものです。これをカテーテルによって血栓が詰まっている部分まで挿入します。目的の地点でステントを広げ、血流を確保しながら血栓をからめ取ります。そしてステントと一緒に血栓を抜き取ります。

吸引型

脳梗塞に治療 血管内治療・吸引型

吸引機能を持つデバイスです。カテーテルの先端に装着して、血栓が詰まった部分まで送り込み、手元のスイッチを入れて血栓を吸い取ります。その後、慎重にデバイスを引き抜いて回収します。

t-PAと血管内治療の併用

これまで、「t-PA」と「血管内治療」は個別に行われてきましたが、最近、t-PAと血管内治療を併用することで治療効果が飛躍的に高まることが分かってきました。

これを受け、『脳卒中治療ガイドライン2015(追補2017対応)』では、脳梗塞を発症した患者に対しては、t-PAと血管内治療を併用して治療することを強く推奨しています。この治療法はt-PAを用いるため、原則として発症後4時間半以内の患者にのみ適用されます。

t-PAと血管内治療の併用したときの治療効果をあらわすグラフ

このように、t-PAと血管内治療の併用は高い治療効果を発揮しますが、血管内治療には専門的な技術が必要で、治療を施せる医師が不足していることが課題となっています。

脳梗塞を再発させない!動脈硬化と心房細動を予防しよう『Q&A脳梗塞』はこちら

この記事は以下の番組から作成しています

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