脳梗塞の後遺症を軽くするリハビリ方法と期間(急性期、回復期、生活期)

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脳梗塞吐き気言葉が出ない麻痺(まひ)がある脳・神経

発症後すぐのリハビリで後遺症も軽くなる

発症後すぐのリハビリで後遺症も軽くなる

かつては、脳梗塞発症後すぐに体を動かすと、さらに症状が悪化するといわれてきました。しかし、現在の治療ガイドラインでは、発症直後からのリハビリが推奨されています。これにより、症状を軽くすることができ、誤えん性肺炎などの合併症も予防することができます。また脳梗塞による死亡の危険性を下げることがデータから明らかになっています。

脳梗塞のリハビリは3つの時期に分けて進めます。脳梗塞の発症から約2週間までが急性期。急性期のリハビリは、発症時に入院した病院で行います。続いて発症から約3~6か月までが回復期。この時期にリハビリを行う場所は、リハビリテーション専門の病院や病床です。その後は、自宅や施設に戻りリハビリを行う維持期になりますが、最近では生活期と呼ばれています。

急性期のリハビリ

急性期のリハビリ

急性期のリハビリは、基本的には発症から48時間以内に開始することが望ましいとされ、身体機能の低下防止を目的としています。寝たきりの期間が長くなると、筋肉が萎縮したり関節が固まって、動きが悪くなる拘縮が起きたり、骨が弱くなってきたりします。体力の低下や認知機能の低下も起こります。このような状態を廃用症候群と呼びます。

廃用症候群の予防には、定期的に行うストレッチや座る、立つ、車いすに乗り移るなどの離床訓練が行われます。さらに食事、着替え、入浴、トイレなど日常生活に必要な動作をできるようにするADL訓練も進めます。また、ものを飲み込むことができない場合には、自分で食事をとれるようにする摂食・嚥下訓練が行われます。

機能回復訓練は、手が動かせないなどの「運動麻痺(まひ)」がある人、うまく話せなかったり言葉を思い浮かべられないなどの「言語障害」がある人、物事に集中できなかったり記憶力が低下したりする「高次脳機能障害」がある人などに対し、それぞれの症状に合わせた訓練を行います。

急性期には、脳の血流が改善して脳のむくみがとれてくるので、ある程度の麻痺は回復します。さらに適切なリハビリを行うことで、脳は新たな学習を始めます。たとえば、脳の左側が障害されて右半身の麻痺が起きた場合でも、右手を動かす訓練を続けることで、脳の別の領域の神経細胞が機能するようになります。

回復期のリハビリ

回復期のリハビリでは、症状の改善に加え、ベッドから一人で車椅子に乗り移る、復職の訓練を行うなど、さらに生活機能を高めるための訓練が行われます。また、次のような新しい治療法もあります。

ボツリヌス療法

ボツリヌス菌の毒素を筋肉に注射して筋肉の緊張を緩める治療方法。後遺症のうち、過度な緊張で手足がつっぱっているような場合に使用されています。

磁気・電気刺激療法

電気を使って手足を動かす神経を刺激して筋肉を動かし、運動を学習させる方法。最近では脳に磁気や電気を流して刺激を与え、まひした腕の筋肉などを動かす方法が実験的に行われはじめています。

磁気・電気刺激療法

ロボットリハビリ

ロボットリハビリは、ロボットが脚などの筋肉の動きをサポートして、歩行を可能にしたり、体を支えることでバランスを修正する訓練などに使われています。

ロボットリハビリ

生活期のリハビリ

生活期のリハビリ

生活期のリハビリは、患者さんの自宅や施設で行われるため、回復期の段階から生活環境を整えておく必要があります。自宅でのリハビリのポイントは、手すりやスロープ、踏み台などで段差をなくすことです。転倒を予防し、自立した生活ができるようにします。

回復期までは病院内ですが、自宅や施設に移る生活期は、生活の範囲を広げることができます。つえや車いすを使って積極的に外出することを心がけましょう。

回復期、生活期のリハビリで意識したほうがよいこと

運動機能の麻痺を持つ患者が、回復期・生活期のリハビリで意識したほうがよいことは、麻痺のある側の運動機能だけでなく、麻痺の無い側の運動機能を同時に鍛えることです。脳梗塞により運動機能が麻痺すると、人の脳はその能力を学習によって取り戻そうとします。

この働きが最も高いのが、発症から間もない急性期(約2週間)です。そのため、急性期リハビリでは主に麻痺のある側の運動機能の訓練を重点的に行います。
しかし、この働きは発症から時間が経つにつれて、少しずつ弱まっていくと考えられています。その代わりに高まると考えられているのが、麻痺のない側の運動機能(例えば右手が麻痺している人の場合、左手を使って右手の能力を補おうとする力)です。

そのため、主に回復期以降のリハビリでは、麻痺した能力を回復するための訓練に加えて、麻痺していない能力を用いて、さらに生活能力を高める訓練を行います。具体的には、利き手と逆の手で箸や鉛筆を持つ「利き手交換」のリハビリなどを行うことがあります。

バランスよく鍛えることが大切

ただし、ここで注意が必要なのが、麻痺のない側ばかりを使用して、麻痺のある側を動かしていないと、麻痺が悪化してしまう場合があるということです。

人間の脳には、普段使わない能力は忘れてしまう特性があり、例えば麻痺していない能力ばかり使うと、麻痺した能力が再び衰えると言われています。
そのため、「回復期」「生活期」のリハビリで運動機能を改善するには、麻痺のある側・ない側の双方をバランスよく鍛えていくことが大切です。

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この記事は以下の番組から作成しています

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