〝ノックアウト型脳梗塞〟「心原性脳塞栓症」の原因と予防

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脳梗塞は発症すると脳に重い障害が残り、最悪の場合死に至ることもある病気です。

脳の血管に障害を起こす脳卒中は日本人の死因の第4位(出典:厚生労働省平成27年人口動態統計)で、その中の多くを占めるのが脳の血管が詰まってしまう脳梗塞です。
※平成29年の人口動態統計では、脳卒中(脳血管疾患)が死因の第3位となりました。

一方で、脳梗塞は治療やリハビリが飛躍的に進歩し、早期に病気のサインを見つけて対処をすることができれば、命を守ることができたり後遺症を軽くすることができるようになってきました。

脳梗塞の原因の一つ、心房細動

脳梗塞の約30%は、心房細動が原因で起こっています。心房細動とは、心臓の拍動のリズムが乱れる不整脈の1つです。心臓は、心臓で発生する電気刺激によって収縮し血液を全身に送り出します。

通常1分間に約60~80回の規則正しいリズムで心拍を刻み、血液を送っています。心房細動の場合は、1分間の心拍数が約400回にもなり、心房が震えるように動いて、十分に拍動しなくなります。すると、心臓から血液を効率的に送り出すことができなくなります。心房細動の原因は様々ですが、特に高齢者、高血圧や糖尿病がある人の場合は注意が必要です。

一方で、心房細動は健康な人にも起こることがあり、原因を特定できないケースもあります。日本には、心房細動のある人が100万人以上いると考えられており、その原因の1つに加齢が挙げられます。高齢化が進むにつれて、心房細動のある人はますます増えると予想されています。

ノックアウト型脳梗塞(心原性脳塞栓症)とは

ノックアウト型脳梗塞(心原性脳塞栓症)

心臓が原因で起こる脳梗塞をノックアウト型脳梗塞(心原性脳塞栓症)と呼びます。ノックアウト型脳梗塞(心原性脳塞栓症)は、動脈硬化などが原因で起こるその他の脳梗塞に比べて重症化しやすく、死亡率が高いと言われています。

脳梗塞はなぜ起こるのか

血栓の元となるのは、傷の修復などに関わる血小板です。血小板が集まると、大きな塊となり血栓を形成します。血管中に生まれた血栓が、血流で運ばれて先の血管を詰まらせてしまう場合もあります。脳の血管で血栓が詰まってしまう病気がいわゆる脳梗塞です。

ノックアウト型脳梗塞(心原性脳塞栓症)が起こるメカニズム

ノックアウト型脳梗塞(心原性脳塞栓症)は心房細動によって起こります。心房細動が起こると、心臓の中で血液の流れが滞るようになります。滞った血液がよどんで、血栓ができやすくなります。
なかには血栓の直径が数cmのものもあり、その血栓が血液によって脳の血管に運ばれて詰まることで、脳梗塞が起こるのです。

ノックアウト型脳梗塞(心原性脳塞栓症)は重症化しやすい

心房細動によってできる血栓は、その他の血管にできる血栓に比べると大きいことが多く、流れ出て脳に到達すると根元に位置する比較的大きな血管に閉塞を起こすことがあります。そうなると、脳の広範囲に障害が及ぶことになります。

ノックアウト型脳梗塞(心原性脳塞栓症)は重症化しやすく死亡するケースもあり、また助かっても要介護になる例が多い病気です。
脳梗塞全体では、死亡率は5%程度で昔に比べると治療によって治りやすい病気になってきました。しかし、このノックアウト型(脳梗塞)は死亡率が高く7~8人に1人が亡くなっています。

ノックアウト型脳梗塞(心原性脳塞栓症)の予防 心房細動を見つける

心原性脳塞栓症の8~9割は心房細動が原因となって引き起こされます。心房細動をいち早く見つけることが予防につながります。

心房細動の簡易的なセルフチェック方法

心房細動は不整脈の一種であり、脈を測ることで簡易的にチェックすることが可能です。
具体的な方法は、次のとおりです。

【1】どちらか一方の手首を外側に回して手のひらを上に向ける

不整脈チェック

【2】手首を少しまげると「しわ」ができる

不整脈チェック

【3】親指側の「しわ」の位置に、もう一方の手の薬指の先がくるように人差し指、中指、薬指の三本の指を軽く当てる

不整脈チェック

【4】親指の付け根のあたりで、脈を感じやすい所を探る

【5】30秒程度脈拍にふれて、脈のリズムを確認する
この時、「ドク、ドク、ドク...」と規則正しいリズムであれば問題なし。
「ドッドドッ、ドク、ドク、ドク...」など、不規則なリズムだった場合、心房細動の疑いがあります。

心房細動の検査

心房細動が疑われる場合には、医療機関を受診して、心電図検査や超音波検査を受けます。

◆心電図検査
心臓の中を流れる電気刺激を感知して記録する検査です。心拍の様子を調べることができます。しかし、心房細動がある人でも、心臓の不規則な動きは常に起こっているわけではありません。そのため、携帯型の心電計を装着して、24~48時間連続して心電図を調べる場合もあります。

◆超音波検査
胸に超音波を当てて、心臓の大きさや動き、血液の流れなどを調べます。

心房細動の中には、発作が起きたり治まったりを繰り返すタイプもあります。一度でも異常が見られたら、治ったと思わず医療機関を受診することが勧められます。

特に注意すべきケース

心房細動は動脈硬化がある人や、高齢者・生活習慣に問題のある人などに多く発症します。
また、自覚症状が現れている場合は、早めに医師に相談することをお勧めします。自覚症状には、動悸、息切れ、胸痛などがあります。

ノックアウト型脳梗塞(心原性脳塞栓症)の予防薬

ノックアウト型脳梗塞(心原性脳塞栓症)の予防には、抗凝固薬と呼ばれる血を固まりにくくして血栓を作りにくくする薬を使います。

<抗凝固薬>

  • ダビガトラン
  • リバーロキサバン
  • アピキサバン
  • エドキサバン
  • ワルファリン

これまでは「ワルファリン」という薬一種類のみでしたが、新しく「ダビガトラン」「リバーロキサバン」「アピキサバン」「エドキサバン」という薬が登場しました。

ワルファリンは食べ合わせが難しいという特徴があり、例えば納豆や緑黄色野菜と一緒に摂取してはいけないなど制限がありました。

新しい抗凝固薬のメリットとして、

  • 薬や食べ合わせの制限が少ない
  • 合併症を引き起こす恐れが少ない

といったことが挙げられます。

動脈硬化が原因となる脳梗塞

脳梗塞にはノックアウト型脳梗塞(心原性脳塞栓症)以外にも、動脈硬化を原因とする2つのタイプがあります。ラクナ梗塞とアテローム血栓性脳梗塞です。
ラクナ梗塞は細い血管に、アテローム血栓性脳梗塞は太い血管に血栓が詰まることが特徴です。梗塞がどこに起こるかによりどちらの脳梗塞も、重いものから軽いものまで様々な症状が現れます。

ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞 予防のポイント

ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞は動脈硬化が原因で引き起こされます。したがって、動脈硬化の原因となる病気・生活習慣の改善が予防につながります。

脳梗塞の原因となる病気や生活習慣

脳梗塞の原因として最も言われている病気は

  • 高血圧
  • 糖尿病

動脈硬化の原因として強調されているのが

  • 喫煙
  • 大量飲酒
  • 塩分と脂肪の摂りすぎ
  • 運動不足

動脈硬化によって引き起こされる脳梗塞の予防薬

動脈硬化が原因の脳梗塞では、血小板が固まりやすくなるため血小板の働きを抑える抗血小板薬を用います。

<抗血小板薬>
・アスピリン
・クロピドグレル
・シロスタゾール

脳梗塞は治療、予防策が進歩していますので、サインを見逃すことなく適切な予防をしていきたいところです。定期的に脈のチェックをしたり、動脈硬化などの原因となる病気や生活週間を改善することが重要と言えます。
少しでも心配があるようであれば、医師に相談することをお勧めします。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2018年5月号に詳しく掲載されています。

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