【患者体験談】これが脳梗塞の前兆だ「TIA(一過性脳虚血発作)」

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脳梗塞麻痺(まひ)がある脳・神経

一過性脳虚血発作 -私のチョイス-

まひが回復!?

Aさん(男性・65歳)を最初の異変がおそったのは、ある日曜日の朝4時頃のことでした。
のどが渇いて目が覚め、腕でベッドを支えながら起き上がろうとしました。ところが、左腕の力が全く入りません。それでも立ち上がろうとすると、今度は左脚の感覚がなく、そのまま床に倒れ込んでしまいました。
突然左半身が麻痺してしまったAさんでしたが、10分ほどすると、立ち上がって普段通り歩けるようになりました。

その様子を見た妻から「治ったなら、このまま寝ていればいい」と言われ、日曜日の早朝ということもあり、そのまま眠ろうとしました。しかし息子がインターネットで調べたところ、Aさんの症状は脳に問題がある可能性があると分かり、念のため救急車を呼ぶことにしたのです。

脳梗塞の前兆「一過性脳虚血発作(TIA)」

病院に着いた直後、Aさんに再び異変が起こります。
医師がAさんの左手に手をのせましたが、触れられている感覚がありません。左の脇腹を触わっても、脇腹がないかのような錯覚に陥りました。このとき、Aさんは脳梗塞を起こしていたのです。
10分間で消えた左半身の麻痺こそが脳梗塞の前兆でした。

血管が血栓によって詰まったり細くなったりすると、脳に酸素がいきわたらなくなり、半身まひなどの症状が現れます。しかし、血栓が自然にとけたり、血流が再開したりすると症状が消えるのです。症状が消えるまでの時間は、多くの場合、5分から1時間ほどです。
この状態を「TIA(一過性脳虚血発作)」と呼びます。TIAを経験した患者のうち、2割弱が90日以内に本格的な脳梗塞を発症しているという報告もあります。
TIAの2時間後に脳梗塞をおこしたAさん。幸いすぐに治療を受けられたため、2か月後には退院、すぐに復職することができました。

繰り返す 左半身の脱力感

Bさん(女性・27歳)は友人と食事中、突然左手に力が入らなくなりました。飲みものをとろうとしても、腕が上がりにくくなっていたのです。しかし5分後、左手は元に戻りました。

Bさんは一時的なことだと思い、気にとめていませんでしたが、1週間後、友人と旅行先でお酒をのんでいると、再び異変が起こります。突然左半身全部が動かなくなってしまったのです。ところがこのときも、5分程立つと、元通りになりました。そのため、救急車を呼ぶことはありませんでした。

旅行から3週間後。自宅で就寝中、もっと重い症状が現れました。今までで一番強い左半身の脱力感でした。舌がだらんとして喉を塞ぎ、呼吸もしにくくなりましたが、動く右手をのばして、隣の部屋で寝ている母親にようやく電話をしました。しかし、またしても数分のうちに症状が回復。
母親がかけつけたときには症状は落ち着いていたため、このときも救急車は呼びませんでした。

発見から予防へ

しかし、症状がだんだん重くなり不安を感じたBさんは、翌朝、近所の内科を受診。
すぐにMRI検査を受けました。すると右の脳の血管の一部が細くなっていました。繰り返し起きた左半身の麻痺は、血流が悪くなって起きた脳梗塞の前兆、TIAだったのです。

Bさんは、血液をさらさらにして血栓をできにくくする「抗血小板薬」を毎朝1回、のみはじめました。それから2か月、左半身の脱力感の症状は一度も出ていません。
主治医からは、「5分くらいで症状が治まったかもしれないが、それが一生続くのが脳梗塞。」と告げられました。それで、Bさんはようやく自分の置かれていた状況を理解したのです。

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