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静岡清水区 “木造ゴシック様式の街の聖堂”地域の人たち保存目指す

NHK静岡シリーズ「だもんで、清水区。」4月24日~
  • 2024年04月25日

ダモンデさんとともに、シリーズでお伝えしている「だもんで、清水区。」
今回はこちらの89年の歴史がある教会の聖堂。老朽化のため、今、解体作業が行われています。地域の人たちは保存を目指す団体を立ち上げ、活動を始めています。
どんな聖堂なのでしょうか。

聖堂の価値は?

清水区の中心部にほど近い高台。教会の聖堂があります。歴史や趣を感じますね。

旧カトリック清水教会聖堂

解体が始まったこの聖堂。なんとか移築して残したいと、地域の人たちが中心となって動いています。保存を目指す団体の副理事長で、自治会役員の小林靖明さん。残したいと思う大きな理由があります。

 

「清水の聖堂を活かす会」小林靖明副理事長

「立派な建物で、地元に住む誰もが親しみを感じていました。いろいろ調べると、その造られ方にも特徴があるので、次の世代に残していかなければと思っています」(小林靖明さん)

「ゴシック様式」をすべて木造で

聖堂はヨーロッパの「ゴシック様式」。本場では石などで造るということですが、この建物は日本の建築技術を生かし、すべて木で造られています。

ステンドグラスの枠は本来は鉛で作られますが、ここでは木を曲げる手法が取り入れられているということです。当時の西洋文化の象徴ともいえる建物は、日本の技術で作り上げられました。

完成は1935年

聖堂が建てられたのは、今から89年前の1935年。フランスから来たドラエ神父が建てた地元のシンボル的な建物でした。

「カトリック清水教会 五十年の歩み」より 左はドラエ神父

 

小林さん
 

「本当に荘厳な感じを受けました。解体は進んでいるけど、どうしても残したいという気持ちがあって、保存のための運動をしています」(小林靖明さん)

今しか見られない「技術」を見学

見学会(4月13日開催)

4月に開かれた見学会。建築の専門家が解体が進む今しか見られない、当時の技術が詳しく紹介されました。

説明する建築家の松永和廣さん

「段がありますよね。ここに。こっちが畳だったんですね。こっちが全部畳。回りが全部板になっています。これも珍しい。日本の職人がすべて作っています。ヨーロッパから持ってきた建築材料はほとんどないといってもいいくらい、日本の物でできています。静岡県で木造のゴシック建築はこれ1つしかありません」(建築家 松永和廣さん)

「昔作られたものとは思えないくらいの技術がたくさん入っていて、とても感激しました」(参加者)

戦時中は救護所に

聖堂は長い歴史の中で、地域を見守り続けてきました。太平洋戦争のとき、空襲を受けた清水。神父は被害に遭わなかった聖堂を救護所にして、けがした人を助けたといいます。

清水空襲時の聖堂(画・鈴木玲之さん 静岡平和資料センター所蔵) 

イベント通じ地域の人に親しまれる

去年まではさまざまな活動にも使われてきました。音の響きを生かして、コンサートや朗読会などが開かれ、地域の人たちに親しまれていました。

オペラコンサート(2023年11月 提供・清水の聖堂を活かす会)

移築には課題が

でも、移築するには、大きな課題があります。移築する場所を見つけ、建て直すには1億円あまりが必要になるということです。

話し合い重ねる保存団体

保存を目指す団体は、どう資金を集めるのか、話し合いを重ねています。

会合を行う「清水の聖堂を活かす会」

メンバーは自治会や建築の専門家など。地域の力ではままならず、クラウドファンディングを中心に資金を募ろうとしています。

「まだものがあるうちに、資金開発をどんどんしていかないと大変なことになっちゃう」(会合の出席者)

小林さん

「なかなか難しい問題が多いですけどね。いい形で教会が残していければと思います」(小林靖明さん)

関心高めるため資材展示会も

もっと多くの人に保存活動を知ってもらいたい。静岡市のデパートでは聖堂にあった貴重な品々の展示会が開かれています。展示されている祭壇には港町清水の象徴ともいえる、いかりのデザインが施されています。

祭壇 中央部分にはいかりが

保存団体は、地域の貴重な遺産として、時間がかかっても移築を実現させようとしています。

「作業された方の思いや苦労をしのぶことができて感動しました。保存活動もされて皆さんに愛されていることは非常に幸せだと。ちょっと泣きそうになりますね」(訪れた建築ファン)

小林さん

「まだまだ知らない方も大勢いらっしゃるので、これを機会にぜひ知っていただきたい。移築されて新たに生き返るわけですが、そういう意味では歴史的なものでもあるし、ぜひ皆さんには見ていただきたい」(小林靖明さん)

「シンボル」として生き続ける

清水の歴史を見つめてきた教会の聖堂。ことし7月までに解体作業が終わります。聖堂の資材は有志たちが保管し、移築先の検討を進めることにしています。解体が終わっても、聖堂は地域の人たちの心にシンボルとして生き続けます。展示会は、静岡市の松坂屋静岡店で5月10日まで開かれています

ニュース番組「たっぷり静岡」(午後6時10分~)                       シリーズ「だもんで、静岡市清水区。」24日~26日                    ▽清水区自慢! おすすめは?街を知り尽くす人々にインタビュー!
▽解体が始まった木造建築の貴重な教会。地域の人たちが移設・保存に動き出しています。その思いとは?
▽聴覚をなくした漆職人。独特な作風が評価されています。地域とのつながりを求め夢に向かっています。
▽「みーつけた」のコーナー、清水区の豊かな色彩を映像でたっぷりとお届けします。

番組「たっぷり静岡プラス だもんで、静岡市清水区。」4月26日(金)午後7時半~
清水港に豪華客船がやってきた!地元商店街では、清水のコスプレ文化や名産の静岡茶を楽しんでもらおうと盛り上がります。おもてなしに奮闘する店主たちの一日を、合計12台のカメラで密着しました。
11年前に静岡市に合併された今も、清水独自のアイデンティティを守り続ける人たちがいます。J1復帰を目指すエスパルス、おととしの台風15号で被災した両河内茶を残していこうと励む農家、不漁からの再起をかけるサクラエビ漁…、独自色豊かな清水カラーを「色」にこだわった映像とともにご紹介します。
東海道の宿場町として栄えた清水区は、美しい街並みが特色ですが、最近は空き家も目立つように…。朽ちゆく空き家を、自力でリメイクし、お店や宿泊施設によみがえらせようと奮闘する男性の取り組みをお伝えします。

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  • 吉田渉

    静岡放送局 記者

    吉田渉

    1998年NHK入局
    静岡県富士市出身
    報道とアーカイブに携わる
    取材の基本は地元愛です

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