2024年3月29日

【みえDE川柳】 お題:のんびり

天 百歳の手はのんびりと鶴を折る/スイッチ さん

丹川修先生  百歳まで長生きをしたおばちゃんは何事にもしばられることなくのんびりと陽の当たる部屋で折紙を楽しんでいる。こうしておられた鶴には、平和への願いが込められている。今日までの長い人生における数々の苦労や試練を乗り越えてこられたおばあちゃんの顔付きや指先のようすまではっきりと見えてくる。なにか、じんとさせられる。
「百歳の手は」と「手」を主語にしている表現方法が巧みである。

地 ゆっくりと食べて電車は次の便/だんでらいおん さん

丹川修先生 「のんびり」の文言こそ使われていないが、のんびりとした雰囲気が充分に伝わってくる句である。われわれ現代人では電車の時間を気にしながらせかせかと食事をかき込むのが普通であろう。しかし、この作者は、ゆっくりと食事を楽しみ、何時までに移動しなければならないという制約に縛られることなく、「次の便」で良いではないかという余裕を持っている。たまには、われわれも時間に追われることなく、この作者のように、のんびりとした過ごし方をしてみたいものである。句の背景にある「ゆっくりと流れる時間」が見事に表現されている。

人 老い二人時計を止めて日向ぼこ/あそか さん

丹川修先生 良く晴れたお昼下がりに縁側で日向ぼこを楽しんでいるお二人の姿がくっきりと目に浮かんでくる。お子さんたちもそれぞれ独立をされて、今は、ゆったりとお二人で人生を歩んでおられる。「時間を止めて」、こんなことは、現実的には願っても叶うことなどないが、二人のゆったりとした気持ちの中では時間は止まっているのである。何とも羨ましい限りであると同時にいつまでも仲良く長生きしてほしいと願う。

 

<入選>

 温泉にのんびりつかる猿の群れ/川端日出夫 さん

のんびりとよめないカルテのぞき見る/やすさん さん

のんびりと実家の茶の間子に戻る/なつ さん

のんびりとしてはいないとかたつむり/ぷいこると さん

日は昇りまだのんびりとしてる月/ムギ さん

のびているいや溶けている昼寝猫/ぱぱりん さん

面長なだけでのんびりしていない/IQより愛嬌 さん

のんびり屋妻が駆け出す目玉品/横手敏夫 さん

のんびりの時間が増えて背が伸びる/ぱせり さん

せっかちな友は誘わぬ放浪記/夜半亭あぶら一虫 さん

 

丹川修先生 丹川修先生

 のんびり」のお題に対して、多くの方が頭の中に思い浮かべることは、「猫の姿、温泉に浸る、日向ぼこ、鈍行列車、一人旅」などであろうと思います。やはり、予想通り、このあたりに照準を当てた句が、多く見受けられました。
 また、誰しものんびりとした時間を持てるものなら持ちたいという願望があるのでしょう。従い、そのような願望を詠まれた句も多数ありました。作り易いお題であった半面、前述のような思いの中に縛られることなく、その枠から出た意外性のある句は少ないように思いました。その意味合いでは、出題側にも責任の一端が、なくはないと言えます。しかし、その中において一読して心の底から「のんびり」を感じる句を選ばせていただきました。本当に、たくさんのご投句をいただきありがとうございました。

 

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50 | 過去の入選作 |   | 固定リンク


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