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「2次避難」に課題?石川県や専門家に取材 断念する人や元の避難所に戻る人も

  • 2024年01月27日

石川県は災害関連死を防ぐとともに、当面の落ち着いた生活環境を確保するため、住民に被災地以外の避難所に移ってもらう「2次避難」を進めています。

ところが、2次避難所への移動を希望しても断念せざるをえなかったり、いったん移動したもののもとの避難所に戻ったりする被災者がいます。

2次避難をめぐる現状について、石川県や専門家に取材しました。

石川県“食事提供を施設側にお願い 別の方法も検討”

石川県によりますと、「2次避難所」として、25日までに県内外の1,078のホテルや旅館を確保していて、3万657人の受け入れが可能になっているということです。

これまでに2次避難所で受け入れた人は3,890人、26日の時点で滞在している人は3,364人となっています。

石川県は、あらかじめ避難する人からの条件を聞き取り、できるだけ希望に沿う施設に入ってもらえるよう調整しています。

この2次避難をめぐり、施設での食事の提供がないことを理由に被災地の避難所にとどまる人もいることについて石川県は。

「そうした声があることは十分に認識しているが、ふだんのサービスが異なる旅館とビジネスホテルでは一律の対応が難しいのが現状だ。実際に、食事の提供がない施設に入ることに消極的な人のマッチングには苦慮している。なんとか食事を提供してもらえないか施設側にお願いしているし、別の方法でできることがないかも検討している」

また、2次避難している人たちへの現地でのサポートについては。

「基本的には施設がある自治体に対応をお願いしている。これについてもすべての避難所で一律に対応するのは難しい」

2次避難先での食事提供 法律では…

内閣府によりますと、災害対策基本法には「災害応急対策責任者は避難所における食糧の配布など、被災者の生活環境の整備に必要な措置をとる」ことが努力義務とされ、都道府県や自治体が食料の確保をするほか、指針では一定期間が経過したあとは栄養バランスなど食事の質を確保することも求めています。

「2次避難所」は法律で明確な位置づけはありませんが、国は避難所として機能しているため、法律の対象になるとしています。

また、自治体がホテルなどを借り上げて避難所とする場合、災害救助法が適用されるとその費用は国が負担する仕組みで、これまでは施設側に支払う利用額の基準は1泊1人あたり上限が7,000円でしたが、25日、政府の対策本部がまとめた支援パッケージでは、特例的に上限を1万円に引き上げるとしています。

内閣府
「能登半島地震では一般の避難所で生活することが難しい高齢者が多く、これまでの災害と比べても2次避難のニーズが高いと感じている。2次避難先となったホテルが食事を用意できなければ自治体が炊き出しでカバーするなど、食事を必要とする被災者がいるかぎり、自治体がバランスをとれた食事を提供しなくてはならないと考えている」

なぜこのような事態に?専門家は

被災者支援に詳しく、被災した人の避難について石川県にアドバイスなどを行っている大阪公立大学の菅野拓准教授は、次のように話しています。

大阪公立大学 菅野拓准教授

「2次避難先となっている旅館やホテルは、食事の提供体制が整っているところから先に埋まってしまい、現在、受け入れ先の候補として多く上がっているビジネスホテルなどでは、3食作って提供する設備や体制がそもそも手薄な施設が多い。代わりの弁当の手配にも業者の調整や事務処理に時間がかかり、供給体制が整っていないことが要因で起きている」

「問題は県や国も把握していて対応を進めているが、食事の提供がなければ避難できないなどのそれぞれの事情に合わせて避難先をマッチングできずに混乱が起きている。3食提供できる施設を増やすなどして、解決していかなければならない」

また、2次避難が進んでいないことについては。

「食事の問題のほかに、被災者が今後の生活再建を見通すことができる分かりやすくまとまった情報発信が極めて重要だが、情報が届いておらず、避難をためらっている人が多いとみられる。高齢者や障害者など支援が必要な人が、断水状態など命の危険がある状況で壊れた自宅などに残ったまま2次避難を決断できずにいるおそれがある。情報や支援が届かないことで、災害関連死の増大が懸念される」

また、今回、被災した地域では支援が必要な高齢者などに対して、支援者の数が圧倒的に不足しているということで、被災者の広域避難をサポートする体制をどう進めていくかが課題だとしています。

「住民票を移さなくても避難先の自治体で住民サービスが利用できたり、地元に戻らない選択をしても必要な支援が受けられるなど、どこにいても情報や支援が届き、安心して避難生活を送ることができるよう、法整備を含めて政府が主導して行っていく必要がある」

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