【被災地の声】石川県能登町白丸 坂元信夫さん「死なせてたまるか」
- 2024年01月24日
2024年1月1日に発生した、石川県能登半島地震。
今回の地震では、発生後まもなく津波が押し寄せました。
そんな大変な状況の中で取材にこたえてくださった被災者の方たちがいます。
能登町白丸地区で濁流にのまれた孫娘を救出した、坂元信夫さんの声です。
濁流にのまれた祖父と孫
坂元信夫さん(67)は能登町白丸地区の自宅で、妻や帰省していた娘夫婦と3人の孫と過ごしていたときに地震が起きました。これまで経験がない強い揺れでした。
自宅は海から50メートルほどの場所です。
すぐに自宅の裏にある高台に避難しようと、3人の孫と車が置いてある自宅の横の小屋に向かったところ、目の前に見たことがない光景がありました。
自宅の前を流れる川の水面が、盛り上がっていたのです。
坂元信夫さん
「川の水面がダーっと盛り上がって、津波が来た。これはダメだと思って避難しました」
小2の孫娘の姿が…
とっさに小屋の物置に4人で身を寄せました。
物置の扉も閉めましたが、濁流は扉を破って頭の高さを超えてきたということです。
なんとか地面に足を付けてあたりを見渡すと、小屋の中は水でいっぱいで、中学2年と小学6年の2人は水面に顔を出していました。
坂元信夫さん
「中2と小6の孫はどっかにつかまって顔を出していたんですけど、小2の女の子が姿が見えなかった。これはダメだと思って」
助けたい一心で水面を探し、必死で水の中を手探りで探すと、左手に衣類のような感触を感じました。
「これだ」
あわてて引き上げると、小2の孫娘でした。
ぐったりとして意識がありませんでした。
「死なせてたまるか」
坂元さんは水の中に立ったまま抱きかかえるようにして人工呼吸をしたり、頬をたたいたりしながら名前を呼びました。
すると、まぶたが開いて目を覚ましたということです。
その後、坂元さんは孫娘を抱えて小屋の窓から外に出て、ほかの2人と一緒に自宅の裏の坂道を駆け上がりました。
妻や娘夫婦も高台に避難していて、家族全員助かりました。
一方、小屋は完全に壊れ、自宅も大きな被害を受けたということです。
「もう『死なせるわけにいかない』『死なせてたまるか』という一心でした。津波の怖さを痛感しました。こんなにひどい、強い津波なんだなと思って。今後の見通しは全然立っていません。この屋敷内のがれきを片付けって言われても到底無理ですよ」
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