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【年に1度の公開に密着】 泉崎村 謎の横穴

福島県泉崎村には1400年前から受け継がれてきた“秘宝”があった。
  • 2023年11月13日

「本当に“これ”を取り上げるんですか?」
取材中に村の人が驚いた表情で尋ねてきた。地元の人たちにとっては身近で当たり前の場所だった泉崎村の『横穴』。だがその穴の中には全国各地から多くの人が集まるほどの知る人ぞ知る“宝”があった。(アナウンサー・須藤健吾)

公開は年に1度だけ『泉崎横穴』

泉崎横穴 施錠されていて通常は入ることができない。

およそ1400年前・古墳時代後期に作られた古墳『泉崎横穴』は国の史跡に指定されている。10月14日の公開日、一組あたりの見学時間はわずか5分にも関わらず朝から多くの人が見学に訪れていた。

グループで訪れた人たちに話を聞くと・・・
なんという情熱!

開いた扉の中には・・・

重い3重の扉がついに開かれた

全国の古墳ファンのお目当ては厳重に閉ざされた扉の中にある古墳内部に描かれた「壁画」。筆で描かれたとされる絵が1400年前の当時のまま残されていた。

扉の先にはのぞき穴があり・・・

1400年前の横穴内部の壁画

【徹底解説】泉崎横穴の壁画

壁画をよく見てみると、何かの模様が描かれていた。

の形に見える絵
耳のついた動物のような絵

1933年に見つかった壁画。当時の新聞で「筆で描いた世界最初の発見」と大きく報じられた。

 画像提供:福島民報の記事(昭和8年12月30日)

この壁画の何がすごいのか?
古墳時代が専門で村の壁画の保存に携わった福島大学の菊地芳朗(きくちよしお)教授に話を聞いた。

菊地教授 筆者の質問に分かりやすく答えてくれた
菊地教授

人物が多く描かれていて、しかも何かの場面を描いています。他にはない珍しいもので東北にも数例しかない。長年大きく傷をつけず守り続けてきたというのは村の皆さんの熱意と努力があってこそだと思います。

村のボランティア団体は毎年、公開日に合わせて清掃活動を行い、地元の小学生が見学に訪れるなど村の人たちにとって身近で大切な存在になっている。

「泉崎の宝ですよ」
壁画を愛してやまない喫茶店の店主

久保木さんは村で喫茶店を営んでいる

村で喫茶店を営む久保木寿大(くぼきとしお)さん。久保木さんは村の公民館で歴史の講師を10年間務め、店には歴史好きが多く訪れる。

久保木さん

壁画は宝ですよ。
横穴は泉崎にいくつかあるんですよ。絵を描いた壁画はあそこにしかない。だから特殊な場所なんですよ。大切にしていきたいです。

久保木さんの趣味は遺跡のスケッチ。マチュピチュやナスカの地上絵など、これまで60か国の世界各地の遺跡を旅して描いてきた。

多い時には年に3度も海外へ行くことも

年に1度しか一般公開されない村の壁画もスケッチに。薄れて見えにくくなっている上の渦巻き模様も再現されている。

左:スケッチ 右:壁画

このスケッチを使って喫茶店に来た県外からの客や、村内の住民に壁画の魅力を語ってきた久保木さん。より多くの人に広めたいと考えている。

久保木さん

いろんな方がいろんな見方ができると思うんですよ。壁画に対してね。それがみんな違います。答えがないから。だから面白いですよ。

先人が残した“村の壁画”後世へ

年に1回しかない泉崎横穴の公開日。横穴の側には見学者に解説する久保木さんの姿があった。

壁画について伝える久保木さん
久保木さんの周りには見学者が話を聞きに来ていた

見る人をひきつける泉崎村の壁画。

久保木さんは先人が残したこの壁画を未来に残していきたいと考えている。

久保木さん

やっぱり誇りを持っていますよ泉崎に。歴史がある場所。遺産として後世に残すべきだと思いますね。やっぱり若い世代に引き継いでいってもらいたい。そういう遺産です。

壁画は村の資料館でも

 壁画の公開は年に1度なので残念ながら来年まで待たなければいけないが、泉崎村資料館では壁画のパネルを見学することができる。

泉崎村資料館の開館時間は午前10時から午後6時まで(毎週月曜日は休館)で入館料は無料。

県外のファンも多くいる泉崎横穴の壁画。今回の取材を通して地元の人たちが長年大切に守ってきた結果、見に来た人が古代のロマンを味わうことができていると感じた。来年の公開も楽しみだ。(アナウンサー・須藤健吾)

  • 須藤健吾

    NHK福島放送局アナウンサー

    須藤健吾

    装飾古墳の虎塚古墳がある茨城県出身。化石収集に夢中になった幼少期を経て大人になった今も古代ロマンを追い求め取材中。これまで福島市のしゃがむ土偶や郡山市のじょもにゃんなども取材。

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