第7回(2006年)
「甘い泥」 (イスラエル=NHK)
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「孔雀 〜我が家の風景〜」 (中国)
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「モンゴリアン・ピンポン」 (中国(内モンゴル))
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「ナヴァラサ」 (インド)
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「モン族の少女 パオの物語」 (ベトナム)
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「こんなに近く、こんなに遠く」 (イラン)
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甘い泥
Sweet Mud
国際共同制作作品
2006年/イスラエル=NHK/カラー/97分
●2007年 サンダンス映画祭 ワールドシネマ審査員賞
●2007年 ベルリン国際映画祭ジェネレーション14plus クリスタルベア賞
【物語】
1970年代のイスラエル。平等と共同生活を理想とした共同体「キブツ」の中で13歳の少年ドビルは夫を失い精神的に不安定な母、ミリと暮らしている。共同体であるが故の複雑な人間関係。厳格な規律にしばられたこの閉ざされた世界のなかで、母親がその集団社会から疎外されている現実をドビルは徐々に理解してゆく。「キブツ」という理想郷の中にある現実と矛盾が、美しく厳しいイスラエルの四季を背景に静かに描かれる。母との関係やキブツでの生活を通して、少年ドビルは現実を見据え子供から大人への一歩を踏み出す。
【監督】
ドュロー・シャウル
【キャスト】
トメル・シュタインホフ
ロニート・ユドゲヴィッチ
孔雀 〜我が家の風景〜
PEACOCK -Scenes from my family-
上映作品
2005年/中国/カラー/136分
●2005年 ベルリン国際映画祭 銀熊賞(審査員大賞)
●2005年 サンパウロ国際映画祭
【物語】
1970年代後半から80年代にかけて、中国の小都市に暮らす庶民の家族の物語。主人公のウェイホンは勝気で自由気まま、恋に憧れる少女だ。不器用だが懸命に生きる兄、優しいがどこか影のある弟、そして父と母。それぞれの人生は時に本人の想いとはかけ離れてゆく。3人の兄弟の成長と挫折、家族それぞれが様々な事情や苦悩を抱えながらも逞しく人生を生き抜いてゆく姿が丹念に描かれる。文化大革命後の中国のある街とそこに暮らす人々、そして時代の空気が浮き彫りにされる。クー・チャンウェイ監督は撮影監督として様々な作品に関わってきた実力派。力強く静謐な映像が物語を彩る。
【監督】
クー・チャンウェイ
【キャスト】
チャン・チンチュー
モンゴリアン・ピンポン
Mongolian Ping Pong
上映作品
2005年/中国(内モンゴル)/カラー/105分
●2005年 上海国際映画祭 アジア・ニュータレント 観客賞
【物語】
中国の若手実力派、ニン・ハオ監督作品。モンゴルの草原地帯に暮らす純朴な少年たち3人の物語。ある日、川で偶然見つけたピンポン玉。それが何かを知らない少年たちにとってピンポン玉は宝物となり、様々な思いが込められていく。やがて雑音だらけでかすかに映るテレビの映像を見て、これは卓球というスポーツに使うもので、国にとって非常に大切なものらしいと勘違い。少年たちは旅に出る。ピンポン玉がストーリーを紡いで、現代の遊牧民族の暮らしと少年たちの姿がモンゴルの雄大な自然の中で生き生きとファンタジックに描かれてゆく。
【監督】
ニン・ハオ
【キャスト】
フルツァビリゲ
ダワー
ギルバーン
ナヴァラサ
Navarasa
上映作品
2005年/インド/カラー/99分
●2005年 インドナショナルアワード 最優秀タミル映画賞 ほか
●2005年 モナコ国際映画祭 最優秀助演男優賞
【物語】
南インドに住む思春期の少女、シュエータの目を通して性同一性障害問題が描かれる。彼女は叔父のゴータムが、身体は男性だが心は女性であり女性として生きたいと思っていることを知り衝撃を受ける。クーヴァガム村で行われるサードジェンダーたちの祭典に行くため家を出た叔父を探す旅の中で様々な人々と出会い、徐々に自分の知らなかった世界や人々の想いを経験する。やがて彼女は叔父のことを理解できるようになる。物語のクライマックスとなるのは、クーヴァガムで実際に行われている祭典。迫力あるドキュメントタッチの映像と交錯しながらストーリーが展開する。
【監督】
サントーシュ・シヴァン
【キャスト】
シュエータ
クシュブー
ボビー・ダーリン
モン族の少女 パオの物語
Story of PAO
上映作品
2006年/ベトナム/カラー/99分
●2006年 ゴールデン・カイト賞(ベトナム) 最優秀作品賞
●2006年 アジア・パシフィック映画祭 審査員特別賞
【物語】
ベトナム北部の山岳地帯に住む少数民族、モン族の少女、パオの物語。
小さな村で暮らすパオの父は、昔、子供ができない妻のことで周囲から圧力を受けていた。やむなく他の女性を迎え、娘のパオが生まれる。こうしてパオは産みの母と育ての母、二人の母を持つことになった。しかし産みの母は家を出てゆく。育ての母はパオを愛情深く育ててくれるが、ある日その母の姿が消える。しかし、そこにはパオの知らない意外な真実が隠されていた。美しい山岳の風景、色鮮やかな民族衣装、印象的な音楽とともに少女パオの心の成長ストーリーが描かれる
【監督】
ゴー・クアン・ハーイ
【キャスト】
ドー・ティ・ハーイ・イエン
こんなに近く、こんなに遠く
So close, So far
上映作品
2004年/イラン/カラー/121分
●2005年 ファジル映画祭 イラン映画コンペティション 最優秀作品賞、撮影賞 ほか
●2006年 シアトル国際映画祭
【物語】
現代社会に生きる人間の心の隙間を鋭く描いた作品。テヘランに住む高名な脳外科医アーラムは、仕事中心の生活で妻や子供との関係も希薄になっていた。大晦日の夜、偶然に自分の息子が重い脳の病に侵されていることを知ったアーラム。息子のもとに駆けつけようと、天体観測のため砂漠に向かった息子を追って一人来るまで砂漠へと向かう。
旅のなかでの出来事や出会いが様々なことを彼に問いかけてくる。孤独で不安な旅の中で、彼は失っていたものの大きさを知る。イラン北部の砂漠地帯の圧倒的な風景と、主人公を演じるマスード・ライガンの緻密な演技が光る。
【監督】
レザ・ミルキャリミ
【キャスト】
マスード・ライガン