第12回(2011年)
「我が大草原の母」 (中国)
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「風の音、愛のうた」 (タイ)
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「秘剣ウルミ」 (インド)
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「花嫁と角砂糖」 (イラン)
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我が大草原の母
My Mongolian Mother
(原題:額吉/E Ji)
2010年/中国/100分
●2010 釜山国際映画祭 アジアの窓部門
●2011 ファジール国際映画祭
●2011 中国電影金鶏百花奨 最優秀女優賞
●2011 中国電影華表賞 最優秀女優賞
【物語】
1960年代の中国。飢饉のために親と離れざるを得なかった子供たちが、養子となるため内モンゴルに送られた。シリンゴル草原でつつましく暮らすチチグマは夫の反対を押し切り、ジェンジェンとユーションの2人を家族に迎えた。母の大きな愛に包まれて子供たちはモンゴル遊牧民として育つが、20年後、生みの親が生きていて自分たちを捜していることを知る。文化大革命の時代を背景に、たくましく懸命に生きる母と家族の物語。母親を演ずる娜仁花(ナーレンホア)の好演が印象的。
2010年10月釜山国際映画祭でワールドプレミア。2011年中国映画華表賞優秀女優賞(ナーレンホア)。監督のニンツァイは内モンゴル自治区出身。俳優として「天上草原」などに出演した後、2005年の「白い馬の季節」で監督デビュー。砂漠化が進み、暮らしのありようが変化することに悩む遊牧民を自ら演じた。映画製作会社の代表でもある。
【監督】
ニンツァイ(寧才)
【出演】
ナーレンホア(娜仁花)
トゥメン・バヤル(圖門巴雅爾)
ハブリ(哈布日)
イリグイ(伊日貴)
風の音、愛のうた
Loving You, Loving Me
(原題:Khob Khun Thee Rak Kan / ขอบคุณที่รักกัน)
2011年/タイ/101分
【物語】
3人の新進監督が共同で作り上げた作品。3つの家族の物語が描かれる。日常的な生活のなかで忘れがちな「愛」や「思いやり」など、大切なことに気づかせてくれる物語。
- ☆
- 才能はあるが傲慢な音楽学校の学生ジョイ。オーケストラから放り出され、風変わりな音楽教授のフィールドワークを手伝うことになる。自然の音を録音する旅に自閉症の妹もついてくる。
- ☆
- 甘やかされて育ったわがまま女子大生ムアイ。中国系タイ人の祖父が営む靴工房を手伝うことになる。しかし、祖父の靴工房を大量生産で大きく発展させた父と祖父は経営の方針を巡って対立している。
- ☆
- 軍医である夫に従い、テロが頻発するタイ深南部にやってきた女性。 故郷のバンコクに帰りたいと思っている。幼い息子は仏教徒として育てられたが、南部に多いイスラム教徒の友達も増え、バンコクに戻りたくないと言い出す。夫は何も言わず、母子によりそうだけ。複雑な思いの彼女だが……。
音楽学校の生徒を演じるのはタイの人気ポップロックグループPotatoのパップ。軍人の妻はメロドラマのスター、ラリター・パンヨーパートが演じている。タイの劇場公開は2011年5月。
【監督】
ピーラサック・サックシリ
プッティポン・サーイシーケーウ
サヨムプー・ムックディープローム
【出演】
パッチャイ・パックディースースック
ソムチャイ・サックディクン
ラリター・パンヨーパート
ほか
【監督について】
ピーラサック・サックシリ監督
タイで大ヒットを記録した「風の前奏曲」や、史劇大作「キング・ナレスワン」の助監督をつとめ、経験を積んだ。
プッティポン・サーイシーケーウ監督
ホラー映画「アート・オブ・デビル」を世界的にヒットさせたチームの1人。「キング・ナレスワン」で助監督も。
サヨムプー・ムックディープローム監督
スチールカメラマンとしてスタートし、2010年のカンヌ映画祭でパルムドールを受賞したアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の「ブンミおじさんの森」でも撮影監督をつとめた。
秘剣ウルミ バスコ・ダ・ガマに挑んだ男
URUMI
(原題: ഉറുമി)
2011年/インド/120分
●2011 インド国際映画祭パノラマ部門オープニング
【物語】
16世紀のインド南部ケララ州を舞台に、インドでの利権を得ようと攻め入ってくるバスコ・ダ・ガマに対峙する戦士を描く。インドを発見した人物として知られるポルトガル人バスコ・ダ・ガマだが、インドにもともと住んでいた人々にとっては侵略者であった。ガマの2回目と3回目のインド行を背景に描く歴史活劇。ウルミとは、インドの伝統武術カラリパヤットで使用する、鞭のようにしなやかな剣。
主演のプリトヴィーラージは新進気鋭の男優。イスラム教徒の親友役プラブ・デーヴァは古典舞踊も修めたダンスの名手。撮影監督でもあるサントーシュ・シヴァンの華麗な映像が炸裂するマラヤーラム語作品。インドでは2011年3月から劇場公開。 テルグ語など吹き替え版もインド各地方で公開された。
撮影・製作も担当したサントーシュ・シヴァン監督は、過去の作品に2009年の第10回NHKアジア・フィルム・フェスティバルで上映された「タハーン 〜ロバと少年〜」などがある。
【監督】
サントーシュ・シヴァン
【出演】
プリトヴィーラージ
プラブ・デーヴァ
ジェネリア・デソウザ
花嫁と角砂糖
A Cube of Sugar
(原題: Yek Habbeh Qand)
2011年/イラン/114分
●2011 釜山国際映画祭 アジアの窓部門
●2012 マイアミ国際映画祭
【物語】
砂漠近くのイランの古都。静かで平和に暮らす家庭がにわかに騒々しくなる。末娘パサンドの結婚準備が始まったのだ。外国に住む新郎は不在のままだが、姉たちと家族は祝いの宴をしつらえるのに大忙し。親戚が大勢集まってくるが、皆さまざまな事情を抱えている。そんな中、予想もしなかったある事態がおこり状況は一変。イランの人々の日常と非日常が展開していく。多くの登場人物の会話と心理を丁寧に描写していくストーリーとカメラワークが見どころ。
2006年の第7回NHKアジア・フィルム・フェスティバルで上映され評判を呼んだ「こんなに近く、こんなに遠く」のレザ・ミルキャリミ監督最新作。イランでは2011年10月12日に劇場公開され、大ヒットした。
【監督】
レザ・ミルキャリミ
【出演】
レザ・キヤニアン
サイド・プールサミミ
ナガール・ジャワヘリアン
ファルハド・アスラニ