第5回(2003年)
「アフガン零年:OSAMA」 (アフガニスタン=NHK)
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「ストーリー・ビギンズ・アット・ジ・エンド」 (インド=NHK)
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「ハンター」 (カザフスタン=NHK)
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「戀之風景」 (香港=NHK)
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「5 five〜小津安二郎に捧げる〜」 (イラン=NHK)
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アフガン零年:OSAMA
OSAMA
2003年/アフガニスタン=NHK/82分/カラー/35ミリ/ダリー語
●2004年 ゴールデングローブ賞最優秀外国語映画賞
●2003年 カンヌ映画祭 カメラドール特別賞、CICAE賞、カンヌ・ジュニア2003受賞
●2003年 ニューデリー シネマヤ・シネファン最優秀女優賞
【物語】
タリバン政権の抑圧の下で生きる12歳の少女とその母。病院で働いていた母親は、タリバンが女性の一人歩きを禁止したことにより、就労への道が閉ざされる。タリバンは、女性が男性に伴われずに外へ出る事を堅く禁じ、反した者には刑罰を与えていた。
生活の糧を失った家族は、少女に男の子のかっこうをさせて働きに出すことを思いつく。生きるため、母と祖母は、恐怖におののく少女の髪を切る。少年となった少女は戦争で殺害された父の友人の下で働き始めるが、その翌日、街のすべての少年たちとともにタリバンの学校へと召集されてしまう。その学校では宗教の勉強や軍事訓練が行われていた。大勢の少年達の中で、真実を隠し続ける少女だが、宗教儀式でのささいなミスから、タリバンに疑いを抱かれる。そしてとうとう少女であることが暴かれる…。
【監督】
セディク・バルマク
1962年9月7日アフガニスタンのパンジシール生まれ。
1987年にモスクワ大学で映画監督の修士号を取得。
これまでに数本の長編脚本を書き、数々の短編映画をアフガニスタンで製作。1992年から1996年の間アフガン映画の政府機関で重要なポストに就いていたが、タリバン時代にはパキスタンへの難民経験もある。彼の作品はすべてタリバン政権下で差し止められていた。新政権樹立後、再びアフガン映画機関に復帰した。
【キャスト】
マリナ・ゴルバハーリ
モハマド・アリーフ・ヘラーティ
ストーリー・ビギンズ・アット・ジ・エンド
A Story That Begins at the End(ARIMPARA)
2003年/インド=NHK/90分/カラー/マラヤーラム語
●2003年 カンヌ映画祭 ある視点部門
●2003年 バンクーバー国際映画祭
●2003年 エジンバラ国際映画祭
【物語】
クリシュナヌニは由緒ある裕福なナイール家の末裔だが、今ではかつての栄華を見るかげもない。だが、まだ妻や幼い息子と3人でのんびりと生活する余裕は残っていた。この地方で起こっている社会的政治的変化にもかかわらず、クリシュナヌニは平穏な家庭生活を送っている。
クリシュナヌニはある朝、唇の下に黒いホクロを見つける。妻はそのホクロを幸運の印だと言い、ホクロを愛撫する。だがある晩、伝染するのではないかと思い始め、夫にホクロの除去手術を勧める。しかしクリシュナヌニは手術を拒否する。先祖代々誰も手術など受けたことがないからだ。
妻から再三再四手術を勧められ、そのプレッシャーに耐えかねたクリシュナヌニは、ホクロを取り除く薬草治療を施すことにする。屋根裏部屋の書物の山から、民間医療の写本を見つけ出し、写本に書いてある通りに、丘から薬草を探し出し、ホクロに塗りはじめるクリシュナヌニ。ところがホクロは消えるどころか、大きく、大きく、なっていく…。
【監督】
ムラリ・ナイール
インド南部のケララ州にある、小さな村に生まれる。1993年インド・ナショナル・アワードを受賞した短編映画『Tragedy of an Indian Farmer』を初監督後、1995年に『Coronations』、1996年にはカンヌ国際映画祭の短編映画部門に招待された『A Long Journey』を監督。
1999年に製作した初長編監督作品『Throne of Death』で、カンヌ国際映画祭にて新人監督賞を受賞。2本目の長編『ドッグズ・デイ』も、2001年同映画祭の「ある視点」部門に招待される。両作品とも、その他数々の映画祭にて賞を獲得。2002年のカンヌ国際映画祭では、新人監督賞の審査員も務める。
【キャスト】
ネドゥムディ・ヴェヌ
ソナ・ナイール
バラタン・ナ―ラッカル
ハンター
The Hunter
2003年/カザフスタン=NHK/93分/カラー/カザフ語
●2004年 ロカルノ国際映画祭 コンペ部門 NETPAC賞、CICAE賞
●2004年 プサン国際映画祭
●2005年 ロッテルダム国際映画祭
【物語】
エルケン少年は山中の小さな村で母親と暮らしている。母親は村にやってくる狼の狩人と関係を持っている。ある夜、狩人が母と過ごしている間に、少年は腹いせに彼の馬と店の品物を盗む。山へ逃れたエルケンは狩人に見つかってしまい、彼のもとで生活することになる。
狩人から学ぶ山での生活、そこからエルケンは、古代からの掟に従い動物も人間も同等である世界を見いだしてゆく。その過程に二人は獰猛なはぐれ狼コカジャルと出会う。狩人はいずれこの狼とは決着をつけねばならぬ運命であった。
冬になりエルケンと狩人は、息子に会いに来て遭難した半死の母親を雪の中で見つける。二人は彼女を村に送り届けるが、そこでエルケンは警察に捕まってしまう。一人になった狩人は、狼の群れに襲われる。壮絶な抵抗をしている最中に急に逃げ出す狼の群れ、振り返ればそこにコカジャルがいた…。
5年の歳月が流れエルケンは刑期を終えて帰って来た。引き止める母親を背に、エルケンは山へ向かう。狩人を死に追いやった戦い以降、コカジャルは山に姿を現してはいなかった。毛皮商人が預かっていた狩人の遺品を全て譲り受け、山にこもる。別のはぐれ狼が川岸の向こう側を荒らし始めて、人々は逃げ出していると聞いたエルケンは、黙々と進んでいく。彼は狩人になったのだ。
【監督】
セリック・アプリモフ
1960年カザフスタン共和国生まれ。ロシア映画界の重鎮S・サラヴィヨフとカザフ映画人同盟議長O・スレイメイフ主催のVGIK(国立映画大学)監督学科出身。前作『3人兄弟』は、2000年の東京国際映画祭でアジア映画賞を受賞、その他イタリア・トリノ映画祭など様々な映画祭にて高い評価を受けた。その『3人兄弟』に次ぐ、アプリモフ監督の新作である。
【キャスト】
アリベク・ジュアスバエフ
ドグドゥルベク・クドゥラ
戀之風景
Floating Landscape
2003年/香港=NHK/105分/カラー/中国語・広東語
●2003年 ベネチア国際映画祭コンペ部門
●2003年 プサン国際映画祭
●2004年 香港アカデミー 最優秀撮影賞
【物語】
その風景を探し求める一方で、亡き恋人サムの日記を一日づつ書き写し始めることで、サムの面影を胸に留め、彼のことを絶えず考えるようにしようと思う。しかし彼女の努力も空しく、徐々に彼女の胸からサムの面影が薄れていくのである。
青島(チンタオ)で、マンは若い郵便配達人シャオリエに出会う。暇な時間を見つけては児童絵画を描いている、暖かい人柄のシャオリエは、マンに密かな恋心を抱くようになる。彼は彼女が例の風景を探し出すのを助けることになる。探していくうちに、彼らはこの地が実在するのかどうか、確信が持てなくなってくる。実際、サムの残した未完成の絵は、単に山の上に枯れ木が立っている図が描かれているだけであり、誰もその風景に見覚えがないからだ。
探しても見つからない景色に、次第にあせりを感じ始めるマン。果たしてマンは、梨の花が咲き誇る山々を見つける事ができるのだろうか…。
【監督】
キャロル・ライ(黎妙雪)
1966年に香港に生まれる。1989年からアシスタント・ディレクターとして映画制作に参加する。彼女の初監督作品『ファーザーズ・トイ』(35ミリ、51分)は、フィリピンの第1回シネマンリア国際映画祭の「最優秀短編映画」賞を受賞。この作品は、1999年度ぴあフィルム・フェスティバルや韓国の第4回プサン国際映画祭など、多くの映画祭にノミネートされる。
彼女の初長編映画『金魚のしずく(Glass Tears)』(35ミリ、92分)はカンヌ国際映画祭の第33回監督週間に招待された。日本では、2002年度ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で「特別審査員賞−ヤング・ファンタスティック・コンペティション部門」を受賞している。
【スタッフ】
製作:スタンリー・クァン(關錦鵬)、アーサー・ウォン(黄岳泰)
【キャスト】
カリ―ナ・ラム(林嘉欣)
リィウ・イエ(劉)
イーキン・チェン(鄭伊健)
5 five〜小津安二郎に捧げる〜
FIVE Dedicated to Ozu
2003年/イラン=NHK/74分/カラー
●2004年 カンヌ映画祭 特別招待
●2004年 トロント国際映画祭
●2004年 テサロニキ国際映画祭
【物語】
2003年は、日本の生んだ世界的映画監督、小津安二郎の生誕100年であり、世界中で「OZU」を顕彰するプロジェクトが始まっている。NHKも小津映画の大々的な放送や関連番組を制作する予定。その中で、アジアの生んだ世界の巨匠アッバス・キアロスタミ監督に小津映画へのオマージュ作品を委嘱し、NHKアジア・フィルム・フェスティバルへの特別参加が決定した。
小津作品は、
ロングショット、静かなリズム、慎ましやかな時間の流れ、自然な人物たち。
そしてカメラは飽くまでじっと固定された謙遜の姿。
小津の世界は私たちに思い出させます。
「私は<自然>であり、自然はまた<私>である」と
まさに「禅」の世界であるこの考えは私に勇気を与えてくれ、
私は小津監督にこの「5 five」を捧げることにしました。
この「5 five」の根底を貫いているのは「生きる」という人間の経験です。
A・キアロスタミ
小津作品を敬愛するキアロスタミ監督が、小津作品への尊敬と愛を独自のスタイルで組み上げる。巨匠キアロスタミがNHKアジア・フィルム・フェスティバルのために演出する映画による映画への愛。
【監督】
アッバス・キアロスタミ
1940年生まれ。テヘランの美術大学を卒業後、多くのCF製作、ポスター・デザインを手掛けながら、絵本作家としても有名になる。1970年、『パンと裏通り』で映画監督デビュー。イスラム革命後、イランでは女性が肌や髪を露出することが禁じられ、映画も厳しい検閲を受けることになったが、子供の世界を描いたキアロスタミは作品を撮り続けることができたという。
1987年『友だちのうちはどこ?』が各国の映画祭で受賞、キアロスタミの名を世界中に知らしめる。『そして人生はつづく』(1992)、『オリーブの林をぬけて』(1994)、そして『桜桃の味』(1997)でカンヌ国際映画祭パルムドール受賞。同年、ユネスコからフェリーニメダルを受賞。『風が吹くまま』(1999)はべネチア国際映画祭で審査員グランプリを受賞した。