第6回(2005年)
「ドント・ルック・バック」 (韓国=NHK)
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「4:30(フォーサーティ)」 (シンガポール=NHK)
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「癒やされた地」 (ベトナム=NHK)
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ドント・ルック・バック
Don't Look Back
2006年/韓国=NHK/127分/カラー
●2006年 ロカルノ国際映画祭コンペティション部門 国際批評家連盟賞、Netpac賞
【物語】
ジョンヒはダンスが大好きな21歳の大学生。15年間会ってなかった父親が彼女の前に戻ってきたことをなかなか受け入れられないでいる。
25歳のグヌは電話の修理人で、仕事中の盗聴を楽しんでいる。その盗聴を通してある女性を好きになるが、その想いをどう表現したらいいかは分からないままだ。
イノは、2年前に軍隊に入った時には、すでに結婚もしていた30歳の男性。兵役最後の休暇で家に帰ってきた彼は、妻の変化を感じるが、それが何なのかはわからない。
この映画は、不確実性に投げ出された3人の若者の映画である。彼らの旅の終わりには、何が待ち受けているのだろうか?
【監督】
キム・ヨンナム(Kim Young-nam)
1972年に生まれる。Ahju大学で、コンピューター技術を専攻したあと、韓国国立芸術大学の映画・マルチメディアコースを卒業。
ホン・サンス監督の「女は男の未来である」で、助監督を務める。彼の短篇「Down Memory lane」(2000)は台湾学生映画祭に招待され、「I can fly to you but you」(2001)で、カンヌ映画祭のシネフォンダシオン部門、東京国際映画祭、等に選ばれる。彼の最近の短篇、「A Bowl of Tea」は、釜山国際映画祭の最優秀短篇に与えられる潜在賞を獲得する。
【キャスト】
ジョンヒ:キム・ヘナ
グヌ:イ・サンウ
キム兵長(キム・イノ):キム・テウ
4:30(フォーサーティ)
4:30
2005年/シンガポール=NHK/93分/カラー
●2006年 ベルリン国際映画祭パノラマ部門
【物語】
「4:30」は、11歳の中国人少年シアオウーと同居人で30代の韓国人男性ジョンとの関係を追う。シアオウーの視点で語られるのは、友情などではなく、2人が共有する体験と孤独の持つ意味である。
「4:30」は、朝の早い時間にシアオウーがジョンの部屋に忍び込み、物を盗む所から物語は始まる。酔っ払うと、部屋にヨロヨロと戻るしかないジョンにとって、酒が悪い習慣であるように、シアオウーにとっても盗むことが同じように癖になる。
観客は、ジョンがシンガポールに滞在する本当の理由は、自殺の為である事を知るようになる。シアオウーは、自殺することに失敗するジョンとの出会いを通じてのみ、自分がなぜ、ジョンに惹かれるかを理解するようになるのだ。
究極的に、「4:30」とはタイトルが示唆するように、ある瞬間に関する映画であり、ある少年の、自分の平板な現実から逃れてその瞬間にしがみつこうとする試みに関する映画である。また、この高層ビルの立ち並ぶ都市の時代に、都市居住者の感じる孤独というものは、文化的、地理的な壁を超える可能性があるだけでなく、必然ではないことに我々、観客を向き合わせる。
【監督】
ロイストン・タン(Royston Tan)
1976年生まれのタンは、シンガポールの最も期待される若手の映画作家、最新のイコンと目されている。映画の語りへの独特の感性、オリジナルな演出スタイル、観客と結び付く本能で知られるタンは、短篇、ドキュメンタリー、最近では、劇映画で40以上の国際映画祭、地域の映画祭の賞を獲得した。2001年に、ASEAN ディレクター・オブ・ザ・イヤーに選ばれ、2002年には、シンガポール芸術評議会にヤング・アーティスト・オブ・ザ・イヤーに選ばれる。
賞を獲得した短篇を発展させた最初の長篇劇映画「15」(2003)は、シンガポール社会の周縁で生きるティーンエイジャー達の災難を描いたものである。実際にストリートで生きる少年達によって演じられ、誰も存在すら知らなかった現代のシンガポールのザラザラした側面を暴露する。映像的なその視線と洗練されたテクニックを持つこの若い監督は、残酷なあまり、痛みすら感じさせるイメージで観客の安心を揺さぶる。
「15」は第16回シンガポール国際映画祭で、Netpac Fipresci World critic賞を受賞し、映画祭の歴史上、最も早く売れた国内映画の記録を塗り替えた。「15」はまた、ヴェネチア映画祭の「未来の獅子」賞のコンペに招待された初めてのシンガポール映画である。
2004年にはタイム誌から、映画において、大胆かつ勇気があり才能のある人物として「20人のアジアヒーロー」に選ばれた。創造の限界を推し進めたタンの意志を見て、市のインディペンデントなアーティスト達は彼をヒーローにした。
世界中に彼を追ってる熱狂的なファンがいる、この作家の過去の受賞短篇作品を取りあげたレトロスペクティブ「0104」が、2005年にロンドン、シカゴ、日本、シンガポールを回り、大きな反応があった。タンの二番目の劇映画「4:30」は、NHKによって共同制作される最初のシンガポールの映画になる。
【キャスト】
シアオウー:シャオ・リユアン
ジョン:キム・ヨンジュン
癒やされた地
Upwards
2005年/ベトナム=NHK/110分/カラー
●2006年 アジア・パシフィック映画祭 審査員賞
●2006年 上海国際映画祭 アジア・ニュータレント 最優秀作品賞
【物語】
南政府の兵士だったタイは、二つの異なる場所に二人の妻がいた。ベトナム戦争が1975年に終わった時、彼は二番目の妻と子供を連れて、戦争からの地雷や爆弾の残った新しい土地に移住する。敗北者として、彼に選択の余地はなかった。
彼は自分で小さな家を作った。お金を得るために、たくさん働いた。彼は、旧解放戦線(北側)のナムに会い、生活費を稼ぐひとつの方法を発見する。ナムは、地雷除去が上手く、アルコールに代えるために地雷原で有刺鉄線を集めていた。タイは、ナムからそのようにお金を稼ぐ方法を学ぶ。
タイは、自分の命をリスクに地雷原に行き、地雷を撤去した。
彼は、地雷原からくず鉄を集めた。それによって、二人の妻と子供を養うことができた。しかし、くず鉄がいつかなくなる事も彼は分かっていた。彼は新しい収入源を発見する。それは、土地だった。彼は、毎日、開墾用の土地のために、地雷を撤去した。
彼は地雷を掘り、取り出した。そして、彼には単純な結論があった。地雷は踏まれた時だけ、危険であると。取り出されたら、それらは石でしかないのだ。
【監督】
ブイ・タク・チュエン(Bui Thac Chuyen)
1968年10月11日生まれ。
ベトナムドラマシアターの役者だったチュエン監督は、29分の短篇映画「Eternal Sadness」を1991年に作り、ベトナム短篇映画祭で金賞を獲得する。この最初の成功によって、チュエンは長い情熱の対象としての映画に活動をシフトすることが出来た。
その後、チュエンは多くの短篇、劇映画、ドキュメンタリーを制作し、その独特さで観客に良い印象を与えてきた。それらの映画はベトナム映画協会とベトナム映画祭から、多くの賞を今までもらってきた。
2000年に、チュエンは、35mmで短篇「Night Pedicab Journey」を制作する。この映画は、カンヌのシネフォンダシオン部門で三位に入賞し、他にもいくつかの国際的な短篇映画祭で賞を獲得した。
映画の活動に関わりながら、彼はずっと長篇劇映画を作りたいと思ってきた。今年、彼のこの夢は実現されることになった。この110分の劇映画「癒された地」をきっかけに、彼はさらに別のプロジェクトに向かうだろう。
【キャスト】
タイ:チャン・ヒュー・フク
タイの妻トゥアン:ゴー・ファム・ハイン・トゥイ
タイの妻ウット:マイ・ゴク・フーン
トゥアンの兄ザン:ブイ・ナム・イェン
ナム・デュク:マイ・ヴァン・ティン