春の魚を子供たちが発見!静岡市「シロウオ」観察会 NHK静岡
- 2023年03月08日
2023年3月4日、静岡市清水区で「シロウオ」の観察会が開かれました。
春の訪れを告げる味覚として、かつて地元では『由比のサクラエビ、清水のシロウオ』として親しまれていたそうです。
小学生と保護者40人が網を手に川に入り、採取にチャレンジしました。
全国的に絶滅が心配されるほど数を減らしているシロウオ。
勉強会と観察会を通して、子供たちはシロウオが住む環境を守る意識が育まれているようでした。
シロウオってどんな魚?
シロウオは透き通った体が特徴の体長5センチほどのハゼ科の魚で、毎年春になると産卵のために海から川へとのぼってきます。同じような魚で「シラウオ」と間違われることもありますが、シラウオがアユなどに近い魚の一方で、シロウオはハゼの仲間です。
全国的に、生きたまま食べる「踊り食い」や「かきあげ」などで春の風物詩として親しまれている魚ですが、このところずいぶん数が減っているそうです。
かつて清水区の東海道沿いにあった料亭では、この時期「由比のサクラエビ、清水のシロウオ」と言われるほど知られた味覚だったようですが、今は漁をするほど数はいません。
講師は東海大学海洋学部の秋山信彦教授です。
生き物の「飼育」や「繁殖」について詳しく、秋山さんの研究室で学んだ学生はその経験を生かして全国の水族館で活躍しています。
実は秋山さんが博士の学位を取ったテーマがシロウオ。
正真正銘のシロウオ博士なんです。
チリメンモンスターで駿河湾を知ろう!
今回の観察会は静岡市と東海大学海洋学部が共同で開いたもので、清水区内の会場には小学生と保護者40人が参加しました。
講義ではまず駿河湾で取れたチリメンジャコの観察をしました。
チリメンジャコはイワシの稚魚で、海で泳いでいる時はシロウオと同じように透き通った体をしています。
また、チリメンジャコの中には一緒に網に入った様々な生き物がいます。
エビやカニのあかちゃんや、タコなどちょっと変わった生き物も多く「チリメンモンスター」などと呼ばれています。このモンスターを観察することで駿河湾の多様な生き物がわかるようです。
地元の清水区庵原に住む小学6年の西澤奏汰くん。
以前もチリメンモンスターを調べたことがあり、今ではスーパーでチリメンジャコやシラスを買うたびに、家でモンスター探しをしているそうです。
今回はタチウオやイカのあかちゃんに混じって、タツノオトシゴを見つけました!
駿河湾にもいるんですね。
シロウオのことを学びたいと埼玉県から参加したのは浅子琉乃介くん。
自然や生き物のこと全般が好きだそうで、分類の仕方が見事!
講師に熱心に質問しながら、小さな魚の特徴もよく見つけていました。
チリメンモンスター探しも子どもの個性がよく出ていますね。
それにしてもなぜシロウオは数を減らしているのでしょうか?
海と川が良くないとシロウオは減ってしまう
「減少している主な要因は、シロウオが海で過ごす海藻の生えている場所が埋め立てなどで減少していること。そして、卵を産む場所がなくなってきていることです。シロウオは海と川がきれいでないと生きていけない魚なんです。」秋山教授
河口や海岸の自然環境は開発によって破壊されてしまうことが多く、全国的にシロウオの生息できる場所は減ってきています。
特に春のこの時期、シロウオは海から川をさかのぼって、川底の小石の下に巣穴を作って卵をかえしますが、工事などで泥が被ってしまうと繁殖できません。
それでも静岡市は山と川が近く、きれいな砂利の川底が海まで続いているので、今でもシロウオが生息できる環境が保たれているそうです。
川に入ってシロウオを探そう!
清水区の庵原川に移動しました。
川に入った子どもたちが「いた!いた!」と興奮気味で取っています。
もう見つかったの?とバケツを覗くと…残念ながらシロウオではなく、ボラの稚魚でした。
しかもたくさん。
捕まえた子どもは満足気ですが…肝心のシロウオはどこ?(笑)
ついにシロウオを捕まえた子供がいました。
「もっとわかりやすいかと思ったんだけど、めっちゃ見つけにくかった!でもおもしろい!」
体が透き通っているので、確かに上から見てもわかりにくいです。よく見つけましたね!
空き缶を集めている子供がいました。
環境を守る意識が育まれたのかな?と思って聞くと……。
「いや、空き缶の中にシロウオが入っていないかな、と思って…」(笑)
子どもひとりひとりが自分の想像力を発揮してシロウオを捕まえています。
見ているこちらが楽しい気持ちになります。
生物多様性はわかったかな?
地元の清水区庵原から参加した西澤くんです。
Q、実際にシロウオを見てどう思いましたか?
「庵原川にシロウオがいるのは知りませんでした。静岡は豊かな自然があるんだなと思って誇らしい感じです。川の自然を大事にしないといけないなと思いました」
シロウオという生き物を通して、地元の環境の大切さを学んでいたようです。
埼玉から来た浅子くんは?
「初めてシロウオを見て、口が大きくて、ちゃんと“うきぶくろ”が観察できて、貴重な体験ができました。生物多様性を知って、人が自然に守られていることを知る事が大事だと思います」
自然が好きで、色々な生き物を観察してきたからそういった気持ちを強く持っているのかもしれませんね。
この日みんなで捕まえた生き物は「ヌマチチブ」「ボウズハゼ」「ゴクラクハゼ」「テナガエビ」「モクズガニ」「ボラ」「アユ」など。
短時間でシロウオ以外にも多彩な生き物に触れることができました。
まだ水が冷たい川でも元気に体を動かした子供たち。
感想を聞くと、みんないい顔です。
「生物多様性」は子供たちにとって難しい言葉かもしれませんが、いろんな生き物の住む環境を身をもって体感することが、なによりの理解につながるのかもしれませんね。
未来に向け、シロウオの住む豊かな「しず海」を守っていきましょう!
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