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静岡ラグビー特集⑤ ブルーレヴズを世界一に!山谷社長の挑戦

静岡 NHK ラグビー 静岡ブルーレヴズ 山谷 拓志 アナウンサー
  • 2023年03月06日
山谷 拓志社長 静岡ブルーレヴズ本社にて

静岡に本拠地を置くラグビーリーグワン「静岡ブルーレヴズ」。
シーズンは後半戦に入り、大切な戦いが続いています。

その静岡ブルーレヴズを束ねる代表取締役社長の山谷 拓志さんに話を聞きました。
「静岡から世界一のクラブを創る!」を目標にクラブは日々取り組んでいます。
“静岡だから世界一になれる”と語る山谷さんに
ラグビー界への期待、静岡ブルーレヴズの未来について聞きました。

(文・取材 片平和宏アナウンサー)

高校時代、ラグビーを選ばなかったから
いまの自分がある!?

「実はラグビーはやったことがないんです」
まず山谷社長はラグビーとの繋がりについて話してくれました。
山谷社長は高校、大学、社会人とアメリカンフットボールの選手として活動。
日本選手権のライスボールにも出場し、2度の優勝を経験している名選手でした。

現役時代の山谷社長 提供 静岡ブルーレヴズ

ただ、高校入学時に入部したかったのはラグビー部でした。

山谷社長
実は高校入学時はラグビーやりたかったんです。中学3年生の受験前に見たラグビーの試合に感動して… ただ入学して練習を見ると、付属中学の選手が多くて、気持ちが乗らなかったです。そしたら、横の部室のアメフト部に勧誘されました。高校から始める人も多いし、“なんかかっこいいな”という軽い気持ちで始めたら夢中になっていましたね。

実はこのラグビーを選ばなかったことが、“全力でラグビー界を盛り上げたい”と考える今の自分に繋がっているといいます。
アメフトでは、ボールを持つと反則になってしまうポジションで活躍。
ボールをパスして得点を取るという華やかなポジションではありませんでした。

山谷社長
10年近くプレーして、実は記録がなにも残っていません。
人気がないポジションなんです(笑)。 
ただ“縁の下の力持ち”として貢献して、味方がパスをして、得点をあげるのがうれしかったです。ここで「何かのために、身を粉にして働く精神」ができました。もしラグビーをやっていたらその精神はできなかったと思いますね。だってラグビーはボールには触れるでしょう?(笑) 
いま本気で静岡ブルーレヴズのため、ラグビー界のために働いていますが、逆にラグビーを選んでいたら、それはなかったかもしれません。

アメフト現役当時の山谷社長 提供 静岡ブルーレヴズ

スポーツで盛り上げたい!Bリーグからラグビー界へ!

山谷社長が初めてスポーツ業界に関わったのはバスケットボールリーグ。
バスケットクラブの創設や再建に携わってきました。

山谷社長
知り合いに、バスケリーグやらないか!?と言われて、縁もゆかりもなく、栃木でバスケチームを作る仕事を任されました。資金集めから、選手集め、チケット販売などなんでもやりました。これが本当に楽しくて… 自分もスポーツ選手として活動しましたが、改めて、スポーツの持つ力を感じました。

2つのBリーグチームの社長を務め、ラグビー界へ。
ちょうど、「トップリーグ」から「ジャパンラグビーリーグワン」と名称を変え、転換期を迎えていました。これまでの企業スポーツの脱却を訴え、地域密着を掲げ、チーム名には都市名を入れることに。

またこれまで日本ラグビー協会にあったチケット販売や会場選びなどの興行権がホームゲームを主催するチームに移りました。静岡ブルーレヴズも、「ヤマハ発動機ジュビロ」から名称を変え、新たなスタートを切ったところでした。

山谷拓志社長

山谷社長
正直、ラグビー界のプロリーグ化は厳しいと思っていました。ただ、日本開催の2019年W杯の盛り上がりを見て、ラグビーに大きな価値を感じて、考え方が変わりました。ラグビーというコンテンツの価値は確実にある。正当な評価を受けていないと思ったんです。
例えば、料理がおいしいお店が繁盛しない。それには料理以外に理由がありますよね?部屋が汚い、接客が良くないなどどこかに理由があるはずです。少し変えるだけで、そのお店は大きく変わると思います。日本のラグビー界も少し変化を加えるだけで、大きく変わると思います。間違いなく、自信を持って売っていいスポーツだと確信しています。

“静岡”だから成功するラグビーとは!?
「サッカー王国」だからこそ可能性がある!

山谷社長は、静岡だからラグビーは成功すると断言します。その理由の1つが、「サッカー王国」であるからです。静岡にはJリーグのチームが4つあり、日本代表選手も多く輩出しているサッカーが盛んな地域です。

山谷社長
スポーツを応援してくれる文化がすでにできています。なぜかというと、サッカー王国として、すでにスポーツチームを応援することで、企業価値が上がって、地域が盛り上がることを知っているからです。
また、2019年のW杯では袋井市のエコパスタジアムで強豪・アイルランドに勝ちましたよね。静岡の人はあの盛り上がりを知っています。経営者のみなさんもラグビー好きが多い気がします。もしプロラグビーチームを作るなら全国でどの場所を選ぶ?と聞かれたら、かなり高い確率で「静岡」と答えますね。

片平アナウンサー
サッカーが盛んだと、ラグビーを普及させるなかで弊害になりませんか?

山谷社長
それは考え方次第です。Bリーグ時代、栃木ではプロスポーツがないから無理と言われました。茨城ではJリーグの鹿島アントラーズと水戸ホーリーホックがあるから厳しいでしょうと言われました。“どっちも無理じゃないか!”と思いましたね(笑)
Jリーグというと先輩プロスポーツがあるので、スタジアムがある。そして休みの日に試合観戦をする文化もある。サッカーとは違うやり方で売り込んで、地域に普及させようと思っています。サッカー王国だからこそ、その土壌があります。

片平和宏アナウンサー

「ALL for Shizuoka」
静岡が一体になって応援してほしい!

「トップリーグ」から「リーグワン」に変わり、ディビジョンワンで「静岡ブルーレヴズ」が唯一企業名を抜いてチーム名を変えました。そこにはラグビー界を引っ張っていきたい。本気で変えたいという思いがありました。

山谷社長
「ヤマハ」、「ジュビロ」という誰もが知っている名前を抜くのは相当な覚悟が必要です。認知度がゼロになりますから。
私たちは「オール静岡で行こう」というコンセプトを持ちました。企業名を残すと西部のチームだよねと言われるんです。市町村をはみ出ると、磐田のチームでしょ?となってしまいます。静岡のみんなで応援したくなるチームにしたかったんです。静岡は東西に長いので、「オール静岡」を掲げたスポーツがないと感じました。静岡にとっては斬新な気がしますが、ここにチャンスがあると思いました。

片平アナウンサー
驚いたのが、静岡市のIAIスタジアム日本平で試合を開催することです。Jリーグの清水エスパルスの本拠地。ブルーのユニフォームのジュビロ磐田とは長いライバル関係なので、青のジャージのラグビーチームがプレーするのが想像つきませんでした。県民もオレンジで観客席が埋まる印象が強いですよね?

山谷社長
まさにオレンジのスタジアムだと思います。ただ、同じ青でも濃い青と薄い青は違いますよね(笑)
Jリーグのジュビロ磐田はサックスブルーの薄いブルー。私たちは濃いブルーです。これもチーム名に「ジュビロ」という名前を抜いたことによって、受け入れてもらえたと考えています。中部、東部の人はラグビーに触れる機会がこれまで少なかったですが、機会を作っていないのは自分たちだと思いました。どんどん、中部・東部でもイベントを開いていきたいですね。

山谷社長と片平アナ

静岡から世界一へ!
目標はクラブ発足から10年で50億円の売り上げ!

将来、静岡ブルーレヴズをどんなクラブにしたいのか。
山谷社長に中長期的な目標を聞きました。

山谷社長
「ブルーレヴズ発足から10年後、つまり今から9年後に世界一のクラブになることです。世界一の基準は、売り上げ50億円の規模にすることです。ラグビーの興行収入が最も高いといわれるフランスリーグのクラブは50億円の規模なので、具体的な目標として設定しました。そのために5年後は30億円規模になると設定しています。
自分たちが言うのはおこがましいですが、企業名を抜いた自分たちが成功すれば、他のチームも変わってくれると思います。プロ化は無理だと言われましたが、自分たちが成功してラグビー界を引っ張っていきたい!その気持ちはどこにも負けないと思っています」

「レヴズが世界一になってほしい」
ホームゲームの取材で感じた瞬間

1月のホームゲーム。磐田市のヤマハスタジアムで行われました。
手や指の感覚がなくなるほど、冷たい風が吹いていました。

私がスタジアムに着いたのが、試合開始の2時間前。
観客もまだ少ない中、
「ゴーゴー!レヴズ!」と大きな声でファンを迎え入れる山谷社長の姿がありました。

「1枚写真を撮らせてください!」とお願いすると、マスクを取って応じてくれました。

試合開始2時間前からファンを受け入れる山谷社長

すると、横からブルーレヴズのファンが…

「社長!きょうは俺たちが勝たせるよ!!」と社長に声をかけました。
山谷社長も「ありがとうございます!頑張りましょう!」と応えました。

社長に声をかけるブルーレヴズファン

風が強く吹く冬の試合。最前列でファンを受け入れる山谷社長。それに応えるファン。
ブルーレヴズが静岡のみなさんに愛されるチームであることを実感したと同時に
「静岡ブルーレヴズが世界一のクラブになってほしい」と強く感じた瞬間でした。

  • 片平和宏

    静岡局アナウンサー

    片平和宏

    愛知県江南市生まれ。
    大相撲中継担当だが、
    五郎丸さんの番組制作からラグビー取材も夢中に。

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