ページの本文へ

NHK岡山WEBリポート

  1. NHK岡山
  2. 岡山WEBリポート
  3. 岡山発 どうする?高齢ドライバーの事故防止

岡山発 どうする?高齢ドライバーの事故防止

NHK岡山「もぎたて!」ゼロへのAction~なくそう交通事故死~
  • 2023年12月01日

免許を持つ高齢者の増加に伴い、県内では人身事故に占める高齢ドライバーの割合も増加傾向です。その背景にあるのは、加齢に伴う身体機能の低下です。交通事故を防ぐには、運転に必要な、認知力・判断力・操作力を正しく知ることが欠かせません。
(NHK岡山放送局 記者 平塚竜河・美濃田和紅)

割合が高まる 高齢ドライバー

65歳以上の高齢ドライバーによる人身事故は、去年1年間に県内で1,034件起きました。10年前の平成25年は2,364件だったので、件数としては半数以下に減っています。しかし、人身事故の全体に占める割合は高まっています。10年前が16.7%だったの対し、去年は23.8%でした。
その背景にあるのが高齢ドライバーの増加です。ことし9月末の時点で県内の免許の保有者のうち、65歳以上が35万9,390人と、前年同時期と比べて約1万人増え、この10年で最も多くなっています。
また、高齢ドライバーの交通事故は、けが人がいないものの、壁にぶつかるなどの物損事故も目立っているということです。
岡山県警察本部交通企画課は「高齢ドライバーは慎重に運転しているつもりでも身体機能の変化が事故につながるケースが多いです。運転に不安がある場合は安全機能を備えたサポートカーや免許返納の相談にも乗るので、ぜひ警察署に来てほしい」と話しています。

免許更新にあわせて“気づき”を

高齢ドライバーに自分の運転を見直すきっかけや交通事故防止につなげてもらおうと、岡山県警は県運転免許センターで「運転技能検査」や「高齢者講習」を受けた人にアドバイスを送っています。

「運転技能検査」とは、去年5月の道路交通法の改正で導入されました。対象のドライバーは、過去3年間に信号無視やスピード違反など一定の違反があった75歳以上の人です。これに合格しなければ運転免許の更新ができません。

この検査は、1,350メートルのコースを運転し、標識に従って走行できるかや、一時停止ができているかなど、減点方式で5つの項目についてチェックを受けるものです。
10月20日、県運転免許センターで検査を受けた6人は、コースの案内や注意事項などの説明を受けたあと、担当者と2人で車に乗り込み、慣れないコースに戸惑いながらも慎重に運転していました。

岡山県警がこだわるのは、受検後の振り返りです。担当者は、この検査を通して気づいたことをドライバーに伝えます。合格した人にも、ウインカーを出す時間が短いことや、曲がるとき反対車線にはみ出ていたなどと伝えて、改善を促していました。
70歳以上の人が免許更新の手続き前に受ける「高齢者講習」でも、運転の癖や身体機能が衰えていることを伝え、自分の運転を見直すきっかけにしてもらっています。講習を受けた人は「よく見えていないところが指摘され、結果はよくなかったけど分かってよかった」とか、「結果が特別悪いわけではないが、年も年だから安全運転でいきたい」などと話していました。

県警察本部 運転免許課 村野耕司 
理事官

年齢とともに身体機能や認知機能はだんだん衰えていきます。高齢者にはこういう制度を通じて体のことを自覚し、事故防止につなげていただきたい

出前講座で“気づき”を

免許更新の以外の場面でも、体の変化の“気づき”を促しています。

そのひとつが、岡山県警察本部の「交通安全体験車」を使った出前教室です。車には瞬時の反応や視野の広さなど身体機能を測定してもらう機器が積まれていて、高齢ドライバーに、若いころとは違う身体機能を自覚してもらうきっかけにしてもらっています。
「交通安全体験車」は、平成16年10月に導入され、平成17年1月からことし9月までに2,700回あまり出動し、高齢者を中心にのべ12万4,000人が利用しています。

10月24日に、この車を活用した教室が高梁市で開かれ、地元の高齢者およそ10人が参加しました。

参加者はもぐらたたきのゲームの要領で不規則に点灯するランプを間違わないようすばやくたたき、とっさの場合の判断力を測定していました。

また、内面に小さなランプがたくさん付いているドーム型の装置を使い、いすに座った参加者は、どのくらいの視野があるか確認していました。
参加した79歳の男性は「私の年になると心配なので、調べてもらいたいと思い参加しました。検査の結果を見て、ちょっと自信も出ましたが過信することなく、安全運転に徹したいという気持ちを新たにしました」と話していました。

高梁警察署 交通課
横道健太郎
 巡査長

運転技能検査などとは違い、リラックスした状態で受けることができます。日頃気づかない認知力や判断力の低下に気づくきっかけになると思います。こうした気づきを、安全運転にいかしてほしい

運転ルールをつくろう

運転を続ける・運転をやめるの2択ではなく、「運転ルールをつくる」ことも事故防止に役立つそうです。県警察本部運転免許課の村野理事官は、「ご自身の状態に合わせて薄暮時や夜間の運転を控えるとか、速度を気をつけるとか、知らない場所は運転しないとか、自分の中で安全運転に向けたルールを作ることがいいのではないでしょうか」とアドバイスします。
例えば、暗くなったら運転を避ける。通勤や通学などで交通量の多い朝夕の時間帯はハンドルを握らない。県外には車で出かけない、など家族で話し合ってみてください。
そのうえで、事故を起こさない、あわないため、身体機能に衰えが見られたら、家族と一緒に免許の返納も検討することが大切だと感じました。

あわせて読みたい

ほかのおすすめ記事

  • 平塚竜河

    NHK岡山放送局 記者

    平塚竜河

    2020年入局 警察担当
    この夏に奈良から岡山へ

  • 美濃田和紅

    NHK岡山放送局 記者

    美濃田和紅

    2022年入局
    岡山出身・交通問題を取材

ページトップに戻る